カンボジアと聞いて何を思い浮かべるだろうか。アンコールワットを中心とした遺跡群、ポルポト、地雷など様々であろう。今回は携帯電話を中心したカンボジアの通信状況を見ていきたい。
まず簡単にカンボジアの概要を見ておこう。
(出典:外務省、CIAファクトブック)
▼カンボジアの労働者の平均月額賃金(単位ドル、従業員一人あたり、都市プノンペン)
(出典:JETRO)
▼カンボジアの人口ピラミッド
明らかに若い人が多いことが見て取れる。またポルポト時代の大量殺人の影響で高齢者は少ない。
(出典:CIAファクトブック)
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■カンボジアの携帯電話事情
カンボジアでは固定電話、ブロードバンドはまだ普及されていなくとも、携帯電話は急速に普及しており2012年には人口普及率100%を突破した。現在、カンボジアでの携帯電話加入者数は約1,600万で人口普及率は105%である。この数字はSIMカードの販売された枚数であるため、利用の95%以上がプリペイド(事前に利用する分の料金を支払って利用)の利用であるため、1人で複数枚のプロペイドSIMカードを保有していることから、全員が保有しているわけではない。
特にカンボジアでは携帯電話事業者が6社もあるため、競争は非常に厳しい。現在の6社に至るまでにも、既に多くの通信事業者の撤退、参入を繰り返してきた。さらに今後1社が参入してくることから、ますます競争は激化が予測される。人口約1,400万人(そして80%以上が40歳以下)の国で6社も存在していることからその競争の激しさは想像がつくであろう。
一方で、携帯電話加入者数のうち3Gが占める割合は現在でも14.4%(約230万)程度であることから、携帯電話の加入の大半が2Gで、その利用も電話(音声通話)とSMS(テキスト)である。最近では中古端末や新品でスマーフォンも流通してきているが、3G網で利用している人はまだ少ない。
また固定電話の58万(世帯普及率20%)、ブロードバンド7万(世帯普及率2.3%)と比すると、その普及のスピードが伺える。つい最近まで地雷の危険があったことや地方では高床式の住宅が主流であること、電力が不足していることから、都会やオフィス以外で固定電話が今後急速に普及することは考えにくい。今後も携帯電話がカンボジアのコミュニケーションの中心になるであろう。
▼カンボジアでの携帯電話、ブロードバンド、固定電話
(公開情報を元に筆者作成)
カンボジアの世帯数は284万世帯(カンボジア国勢調査2008)
▼カンボジアの携帯電話加入者の推移
(公開情報を元に筆者作成)
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▼カンボジアの主要携帯電話事業者(各種公開情報を元に作成)
・Metfone
加入者数:740万
ベトナムの通信事業者Vittelが運営。携帯、固定、ブロードバンドのサービスを提供。
・Smart Mobile
加入者数:470万
マレーシアの通信事業者Axiataが運営。
・Cellcard
加入者数:310万
ルクセンブルグのMCIとカンボジアのロイヤルグループのジョイントベンチャーとして1996年4月に設立。
・Beeline
加入者数:50万
ロシアの通信事業者Vimpelcomが運営。2008年7月にカンボジアのSotelcoを買収してBeelineのブランドで提供。 100%プリペイドで提供。ARPU約2.3ドル。
・qbmore
加入者数:20万
カンボジア企業。2006年から営業開始。Cambodia Advance Communicationsの略称。
・Excell
加入者数:14万
2008年7月からサービス提供している。
・CooTel
加入者数:不明
2013年7月、CooTelを運営するXinwei(北京信威通信集団)にライセンスを発行。
▼カンボジア携帯通信事業者のシェア
(各種公開情報を元に作成)
ほかにもかつては韓国SK、LG電子などが出資していたSLD Telecom、ロシアのAlltechグループ、タイのThaicomとカンボジア政府のジョイントベンチャーとして1993年に設立されたMfoneなどがサービスを提供していたこともあった。
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▼カンボジアのプリペイドSIMカード(2ドル分)。表示されている番号を入力すると、利用できる。
【参考動画】
▼Metfoneのテレビ広告(2013年)
▼CellcarがSmartよりも優れていることを強調するテレビ敵対広告(2013年)
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登録はこちら2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。