[2014年第9週]急成長するLINEが次の一手、Huluは日本テレビに事業売却、ビッグデータをめぐる動き
2014.03.04
Updated by Asako Itagaki on March 4, 2014, 11:00 am JST
2014.03.04
Updated by Asako Itagaki on March 4, 2014, 11:00 am JST
MWC開催週で国内のモバイル関連ニュースは一休みかと思いきや、週の半ばに大きな発表が飛び込んできた。2月26日、LINEは新サービス発表会「LINE Showcase 2014 Feb.」を表参道ヒルズ スペースオーにて開催し、グローバル市場での更なる成長に向け、「BEYOND LINE」をテーマに3つの新サービスを発表した(報道発表資料:【LINE】LINE、グローバル市場での更なる成長に向け、「BEYOND LINE」をテーマに3つの新サービスを発表)。
発表されたのは「LINE電話/LINE CALL」「LINE ビジネスコネクト」「LINE Creators Market (ライン クリエイターズマーケット)」の3つ。
LINE電話(LINECALL)はLINEアプリiPhone版・Android版の新機能で、国内外の固定・携帯電話への通話サービス。2014年3月から提供する。日本、アメリカ、メキシコ、スペイン、タイ、フィリピンの6ヵ国からとなる。サービス対象国の端末からであれば、対象国以外も含めた世界中の固定・携帯回線に電話をかけることが可能だ。料金についてはプリペイドプランのみで、国内携帯電話への通話は6.5円/分から、固定電話限定のプランであれば2円/分からの通話が可能となる(関連記事:LINE、国内外の固定・携帯電話への通話サービス「LINE電話」を日本・アメリカを含む世界6カ国で開始 国内固定電話への通話は1分2円から)。
LINE ビジネスコネクトは、企業や店舗が利用する各種機能をAPIで提供し、各企業が自社システムで活用できる新サービス。従来のLINE公式アカウントでは、全ての「友だち」ユーザーに対して同内容のトークを一斉送信することしかできなかったが、位置情報などをAPIで取り込み特定の場所にいるユーザーをターゲットにクーポンを配信したり、CRMシステムと連動してメッセージを出しわけたりといったことができるようになる。(関連?時:LINEが企業アカウント向けに、自社システム連携が可能になるAPI公開を発表 。
楽天によるViber子会社化(楽天、9億米ドルの出資を行いViberを子会社化)と楽天でんわの国際電話対応(関連記事:「楽天でんわ」が国際電話サービスを開始、国内同様10円/30秒))、FacebookによるWhatsApp買収(関連記事:フェイスブック、メッセンジャーアプリの「WhatsApp」を160億ドルで買収)など、メッセージングサービスを巡って大きな動きが続いており、LINEについても「ソフトバンクが買収を検討している」という噂が流れるなど動向が注目されていた中の発表だったが、なぜMWCで主要モバイル関連メディアが手薄な時期に国内での発表となったのかが不思議なところだ。なお、ソフトバンクによる買収の噂については、同社COO 出澤 剛氏によれば、ソフトバンクからそういった話はなく、可能性を意識していることもないとのことだ。
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動画配信サービスでも大きな動きがあった。2月28日、日本テレビとHuluは、日本テレビがHuluの日本市場向け事業を承継することで合意したと発表した。Huluが会社分割により設立した新会社を日本テレビが子会社化することで事業承継する。Huluの日本テレビはこれまでも「日テレオンデマンド」で、都度課金制によるインターネット有料動画配信サービスを提供していた。今回の事業譲渡を受け、今春から、新たに定額制動画配信事業(SVOD)に参入する。今後は、ハリウッドや日本の映画・ドラマ・アニメなど、既存の各ジャンルをさらに強化すると共に、日本テレビの話題作や人気番組の「Hulu」向け限定コンテンツの配信なども行うとしている。(関連記事:日本テレビがHuluの日本事業を承継し、定額制動画配信事業に参入 )
2月26日、かねてからドコモはサービスのキャリアフリー化を宣言していたドコモのdマーケットが、ドコモ以外のキャリアからも利用できるようになった。従来から「dゲーム」「dトラベル」「dクリエイターズ」をキャリアフリーで提供していたが、新たに「dショッピング」「dブック」「dミュージック」「d fashion」の4メニューも追加する。さらに、4月からは「dビデオ」「dヒッツ」「dアニメストア」「dキッズ」もキャリアフリーで利用できるようになる(関連情報:dマーケット(spモード))。
ビッグデータ関連で政府関連の動きが2つあった。
2月24日、文部科学省の産学連携予算「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」(以下COI)のキックオフシンポジウムが東京・お台場の科学未来館で開催された。COI は今年度からはじまった新しい取組み。10年後のあるべき社会、暮らしの在り方(ビジョン)を設定し、このビジョンを基に研究開発課題を特定する。プログラムの特徴は9年間という長期の予算であること。また論文の本数や学術的な価値にはプライオリティを置かず、社会実装(すなわちベンチャー企業の創出)をゴールに設定している。(関連記事:センサー技術やビッグデータ利活用などの大型産学連携研究「革新的イノベーション創出プログラム(COI)」がスタート)。
同じく2月24日、国土交通省は、国内に5,000万台を数える自動車の車体情報や走行情報のビッグデータ利活用と、マイナンバー法による自動車税納付の簡素化等を検討するために「自動車関連情報の利活用に関する将来ビジョン検討会」を設置し、2月24日に第一回検討会を開催した(関連記事:国土交通省が自動車関連情報の利活用の検討会立ち上げ、自動車税のマイナンバー法適用も議論へ)。
また、M2M領域では、IIJとブリスコラによるM2M分野の協業のニュースがあった。ブリスコラのセンサーを活用したクラウドプラットフォーム設計・開発の経験とノウハウを活かし、IIJ GIO(ジオ)のクラウド基盤上でM2Mプラットフォームを構築して提供する。IIJは、IIJ GIOからM2M用途に特化したモバイルデータ通信サービスまで、インフラ環境を一括して提供する(関連記事:ブリスコラとIIJ、M2M分野で協業)
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先週発表されたサービス関連のニュースを紹介する。
NTTドコモとイマジニアは、経営者やビジネスパーソンなどにとって有益な知識・教養等の講義をノーカットで配信する映像サービス「10 M TV オピニオン」(テンミニッツテレビ オピニオン)を、スゴ得コンテンツおよびdメニューで、ドコモのスマートフォン・タブレット向けに2月25日から順次配信する(関連記事:ドコモとイマジニア、経営者・ビジネスパーソン向けの講義配信サービスを開始)。
ウィルコムは、ウィルコムのケータイおよびパソコンや周辺機器などの操作設定をサポートするオプションサービス「ウィルコムワイドサポート」を3月6日から開始することを発表した。月額525円で、ウィルコムのケータイやその周辺機器などの操作・設定方法に関する質問に、専門オペレーターが利用回数制限なしで回答する(関連記事:ウィルコム、月額525円でパソコンや周辺機器の操作設定をサポートするオプションサービスを開始)
ソフトバンクモバイルは、携帯キャリア決済「ソフトバンクまとめて支払い」の継続課金サービスを2014年2月28日から提供開始する。ECサイトでの頒布会や商品の定期購入、コンテンツ配信サービスの会員費、購読料、視聴料などの月額利用料金向けの定期課金サービスで、従来の携帯キャリア決済が提供する月額課金と異なり、課金のタイミングや金額をサイト運営者側で設定できるのが禿頭。数カ月に1回の支払いや注文内容の変更による金額変更など、サイト運営者の商品・サービスの特性に合わせて柔軟に課金方法を設定していただくことが可能となっている(報道発表資料:通信販売の定期購入サービスにも対応!「ソフトバンクまとめて支払い」継続課金サービスを提供開始(ソフトバンク・ペイメント・サービス))。
2月26日より、大阪市営地下鉄の谷町線「駒川中野駅〜八尾南駅」区間でドコモ、au、ソフトバンクの携帯電話が利用できるようになった。また、今里筋線の利用区間も拡大し、同日から全線で利用できるようになっている(報道発表資料:大阪市営地下鉄谷町線における携帯電話サービス提供開始について(NTTドコモ))
スターバックスは、My Starbucks会員向けにおサイフケータイ対応のスマートフォンや携帯電話でプリペイドカード「スターバックス カード」を利用できる、「モバイル スターバックス カード」を開始する(報道発表資料:携帯端末でプリペイド機能が使える新サービス「モバイル スターバックス カード」がスタートお客様のニーズに合わせた新しいスターバックス体験を提供(スターバックス コーヒー ジャパン))
DVDレンタルのゲオは、公式アプリ「ゲオアプリ」のカードレス会員証機能を全国のゲオショップ1,136店舗に導入する。プラスチックカードの会員証と同様、Pontaポイントも蓄積・使用できる。今後はアプリを通したO2Oサービスの提供を本格的にスタートする(報道発表資料:DVDレンタルのゲオ、会員向けにカードレススマホ会員証サービスを業界初導入)。
ANAは3月1日より国際線で有料の機内インターネット接続サービス「ANA Wi-Fiサービス」を開始する。国際線仕様の777-300ER型機および767-300ER型機のうち、ANA WiFiサービス対応の機材において、全クラスで利用可能。サービス開始当初は777-300ER型機 2機、767-300ER型機 1機が対応しており、2014年度末までに777-300ER型機19機、および767-300ER型機9機の合計28機の改修を行う予定。サービスにはオンエア社の機内Wi-Fiサービス「インターネットオンエア」を利用している
(報道発表資料:国際線機内インターネット「ANA Wi-Fiサービス」開始)
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その他のニュースをまとめた。
NTTドコモは新規契約時にパケット定額サービス等の日割り適用を開始する。これに伴い、定額料が割引となる割引サービスやキャンペーンについての割引額も日割りとなる。また、月々サポートの適用と割賦購入の場合の商品の分割支払金請求は購入月の翌月からとなる。(報道発表資料:ドコモからのお知らせ : 新規契約時におけるパケット定額サービス等の日割り適用開始について)
ソフトバンクが屋内カバレッジと容量の改善を目的として、エリクソンの超小型スモールセル「Radio Dotシステム」のトライアルを開始する。エリクソンが発表した(関連情報:ソフトバンクが屋内エリア強化に「エリクソンRadio Dot」システムのトライアルを開始)
日本通信は、NTTドコモに対し、FOMA網及びXi網への日本通信ののHLR (Home Location Register)及びHSS(Home Subscriber Server)の接続を申し入れた。具体的なサービス展開予定などは不明だが、同社は「日本で生まれたMVNO事業モデルを次のステージに載せ、日本のMVNO業界が世界をリードしていくために本日の決定を行いました」(報道発表資料より)としている(報道発表資料:日本通信、自社の「HLR 及び「HSS」の接続を申し入れ)
NECは、ICTを活用した高度な社会インフラを提供する「社会ソリューション事業」を軸とした成長戦略を加速すべく、国内のハードウェア開発・生産拠点を再編する。ブロードバンドルータや車載機器などを開発・生産するNECアクセステクニカ、キーテレフォン/IP-PBXやPOS端末などを開発・生産・販売するNECインフロンティアおよびNECインフロンティア東北、サーバやストレージなどを開発・生産するNECコンピュータテクノの4社を合併し7月1日付で新会社を発足する。あわせて、NECエンベデッドプロダクツのテープストレージ開発・生産部門を新会社に移管する。(報道発表資料:NEC、社会ソリューション事業を支えるハードウェア開発・生産体制を強化)
不正アクセスによる被害のニュース。ソフトバンクモバイルは、ユーザー専用サイト「My SoftBank」において、2014年2月24日・25日に、特定のIPアドレスからの第三者によるリスト型攻撃(外部で盗まれたと考えられるIDやパスワードをもとにした不正なアクセス)を受けたことを発表した。344件の顧客の個人情報(氏名、携帯電話番号、固定電話番号、契約内容、利用状況)の閲覧や不正なコンテンツ購入などが第三者によってされていた可能性がある(関連記事:「My Softbank」リスト型攻撃による不正アクセス、344件のアカウントが被害に)。
最後に、バルセロナで発表されたニュースを一つ。KDDI・台湾・中華電信 、香港Hong Kong Telecommunication、韓国SK Planetは、近接型無線通信方式「NFC」に対応したスマートフォンによるモバイルNFCサービスの普及・拡大を目指して「ASIA NFC アライアンス」を設立した(関連記事:KDDIとアジアのキャリア、「ASIA NFCアライアンス」を設立しNFC国際サービス普及へ )。その他のバルセロナ関連ニュースは特集サイト「WirelessWire News in Barcelona 2014」へ。3月10日頃までは新たなニュースを追加する可能性がある。
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登録はこちらWirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。