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中国で始まっていた、FDD-LTEネットワークの運用

2014.03.03

Updated by Kazuteru Tamura on March 3, 2014, 02:00 am JST

▼北京市内で見られたChina Mobileの看板。4G LTEをアピールしている。
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世界で拡大しているLTEは2013年末に提供する国と地域が100を超えた。世界最大の市場規模を誇る中華人民共和国(以下、中国)もLTEを提供する国の一つである。LTEはFDD方式のFDD-LTEとTDD方式のTDD-LTEが規定されており、中国ではTDD方式のLTEを国策で推進しているのである。

中国の移動体通信事業者であるChina Mobile(中国移動通信)、China Telecom(中国電信)、China Unicom(中国聯通)の3社はTDD-LTEで4Gサービスを提供中もしくは提供予定としている。中国工業信息部は3社に対して2013年12月4日付けでTDD-LTEの免許を交付した。3社のうちChina MobileとChina Telecomが既にTDD-LTEでサービスを開始しており、残りのChina Unicomも近く開始する予定である。

China Mobileは2013年12月18日に4Gサービスを開始しており、中国におけるTDD-LTEのサービスとしては一番乗りとなった。世界最大の移動体通信事業者でもあるChina Mobileは、世界で唯一3GとしてTD-SCDMAを採用している。TD-SCDMAもTDD-LTEと同様にTDD方式で、中国の国策で推進されてきた。TD-SCDMAを採用したChina Mobileは当初から4GサービスはTDD-LTEで提供する予定で、早期にフィールドテストも実施してサービス開始に向けて準備を整えていた。サービス開始前からTDD-LTEに対応したスマートフォンやデータ通信専用端末を販売しており、免許交付後に正式なサービスを開始する際にはスマートフォンを中心とした充実の端末ラインナップを用意できたのである。

しかし、China TelecomやChina Unicomは事情が異なる。この2社はTDD-LTEとFDD-LTEの両方を提供する予定をしている。元々、両社はFDD-LTEを提供する方針を示していたが、中国当局は先にTDD-LTEの免許を交付し、未だにFDD-LTEの免許は交付していない。半ば強制に近い形で乗り気ではないTDD-LTEを先に提供することになったのである。

China Telecomは2014年2月14日よりTDD-LTEのサービスを開始している。サービス開始当初の端末ラインナップは複数のデータ通信専用端末が用意されている程度に留まる。3Gでは採用している移動体通信事業者が少ないCDMA2000を採用していることも悪く作用し、サービス開始時点で十分な端末ラインナップを用意することができなかった。尚、販売の開始はまだであるが、サービス開始後にはTDD-LTEに対応したスマートフォンを発表している。

China Unicomは3GにW-CDMAを採用しており、そのために端末の調達は幾分容易だったようである。サービスの開始がまだであるが、一部のメーカーはChina UnicomのTDD-LTEに対応したスマートフォンを発売している。

サービスの開始前より複数のTDD-LTE対応スマートフォンを用意したChina Mobileに比べて、物足りない端末ラインナップとなってしまっているChina TelecomとChina Unicomであるが、実はFDD-LTEに対応したスマートフォンを先に開発していたのである。中国で開催された展示会ではメーカーが先にChina TelecomやChina UnicomのFDD-LTEに対応したスマートフォンを展示していた。ところがこれらを出さずに、TDD-LTEに対応したスマートフォンを先に出さなければならなくなり、端末に関する計画にも大きな狂いが生じたに違いない。

両社は、FDD-LTEの端末だけではなく、ネットワークも実は準備しており、既に中国の各地でFDD-LTEのネットワークの運用を開始している。2013年末に北京市を訪問した際に、至る所でFDD-LTEのネットワークを検出し、北京市の広範囲でFDD-LTEネットワークを運用していることが確認できた。ネットワーク名は460-11とPLMN番号で表示されているが、これはChina TelecomのFDD-LTEである。TDD-LTE契約のSIMをFDD-LTE対応の端末に挿入したところ、下り80Mbps超の速度で通信できたという報告もあるようだ。

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China Telecomは早期よりFDD-LTEネットワークを運用しており、試験運用の開始は2013年第2四半期頃と推定されている。初期の試験運用ではPLMN番号を460-03としていたが、2013年の下半期からはPLMN番号を460-11に切り替えて商用で使用するためのネットワークとして運用している。460-11は北京市のみならず中国の各地で検出したとの報告があり、一部の都市では商用サービスを提供できるレベルまで構築しているという。China Telecomは2013年12月上旬に何らかの発表会を予定していたが、その発表会はキャンセルとなっており、FDD-LTEに関する発表を予定していたとの見方が強い。

また、China Telecomほどではないが、China UnicomもFDD-LTEの準備を進めている。2013年末時点で一部の都市においてChina UnicomのFDD-LTEネットワークも検出されており、China UnicomもFDD-LTEの運用を開始していることが確認されている。

China TelecomとChina UnicomにFDD-LTEの免許は交付されていないが、いつでもサービスを開始できるよう着実に準備を進めている。FDD-LTEは早い段階から準備を整えているので、サービス開始時点でも高い品質のサービスを提供できると思われる。China UnicomとChina Telecomには早期にFDD-LTEの免許が交付され、本命となるFDD-LTEの商用サービスが開始されることに期待したい。

▼北京市内でネットワークを検索。46011がChina TelecomのFDD-LTEネットワークである。
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▼北京市内で見られた基地局。建物の屋上に設置されている。
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田村 和輝(たむら・かずてる)

滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。