2014年2月24日、富士通は2013年6月にフランスで発売したシニア向けのらくらくスマートフォン「STYLISTIC S01」の後継モデルを2014年秋に欧州で発売すると発表した。富士通のフランスでのらくらくスマートフォン「STYLISTIC S01」は2013年6月にフランスの通信事業者Orangeストア約90店舗で発売を開始し、2013年10月にはフランス全土約250店舗まで取扱いを拡大した。(関連レポート)
富士通では「STYLISTIC S01」の実績を踏まえ、後継モデルには、LTEサービスやNFCへ対応するほか、最新の省電力ディスプレイやクアッドコアCPUなど最先端のデバイスを搭載することを予定している。また、ユーザーの声を反映させ、使い勝手のさらなる向上を図るとともに、家族や友人など親しい人とのつながりを大事にするユーザーが、簡単に安心して連絡をとったり、情報を共有できる新しいコミュニケーション手段の提供を目指していく予定である。
OrangeのExecutive Vice President Connected Objects & PartnershipsのYves Maitre氏は「Orangeは、モバイルインターネットをすべての人々に提供したいと願っています。ニーズもICTとのふれあい方も様々あるなかで、新たなマーケットに向けて富士通と協業できることをたいへん喜ばしく思います。Orangeにとってイノベーションは最大の戦略であり、2014年も富士通との協業を継続していきます。」とコメントしている。
富士通が海外市場において「最初の1機種のみ」だけでなく、後継機種を提供することによって「一発屋で終わらない」ことの意義は大きい。特に富士通の「らくらくホン」は日本と同じように、「しんせつ」「かんたん」「見やすい」「あんしん」のコンセプトが貫かれており、フランスで販売されている機種においても全ての機能やデザインはこれを基準に設計されていて、それが欧州でも受け入れられているのだろう。このようなコンセプトが明確な端末は世界中どこの市場であれ、消費者に対してメッセージが出しやすい。富士通の「らくらくホン」は日本人なら誰もが説明できる端末である。
日本市場では2013年にはNECやパナソニックがスマートフォン開発から撤退を表明した。そのような中で富士通の「らくらくホン」の海外展開は、日本の携帯電話メーカーの海外進出として今後も注目していきたい。
先進国を中心に世界で高齢化が進んでいく中、日本で培った「らくらくホン」のコンセプトに基づく端末は「どこにでもあるようなコモディティ化した端末」ではなく、「高齢者を対象にした使いやすい端末」として世界中で受け入れられていくことを期待している。
【参照情報】
・富士通プレスリリース
・富士通:フランス版 "らくらくスマートフォン"「STYLISTIC S01」、販売網拡大
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登録はこちら2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。