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モトローラ:廉価版スマートフォン「Moto E」とテキサス州Fort Worthの工場閉鎖

2014.06.02

Updated by Hitoshi Sato on June 2, 2014, 08:58 am JST

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米Google傘下のMotorola Mobility(モトローラ)は2014年5月13日、Androidスマートフォン「Moto E」を発表した。世界40カ国以上で発売する。価格は129ドルからと廉価なスマートフォン端末である(デュアルSIMオプションあり)。なお、インドでは6,999ルピー(約117ドル)で販売される。

4.3インチ960×540ピクセルの液晶ディスプレイ(ゴリラガラス付き)やSnapdragon 200 1.2GHzデュアルコアプロセッサを搭載した3Gスマートフォンである。モトローラでは「フィーチャーフォンの時代は終わりを迎える」と世界中のフィーチャーフォンの利用者がスマートフォンへの買い替えに向けて同端末のアピールをしている。
また、モトローラでは同日、同社で最も多く販売されたスマートフォン「Moto G」のLTE版を発表した。こちらは219ドルからである。

Googleは2014年1月にモトローラを中国Lenovoに29億ドルで売却することを発表しており、現在手続き中である。モトローラの「Moto」シリーズとして端末がリリースされるのも残り僅かかもしれない。Lenovoは新興国市場向けの廉価なスマートフォンに注力しており、2013年には世界のスマートフォン販売台数が4,550万台で世界5位(シェア4.5%)である。

「Moto X」の製造・組立拠点であるテキサス州の工場閉鎖

▼テキサス州Fort Worthのモトローラ工場(出典:モトローラ)
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かつてモトローラはアメリカ人にとって「携帯電話の代名詞」だった。現在ではアメリカ人にとってはApple(iPhone)こそが「スマートフォンの代名詞」である。モトローラはGoogleの傘下に入っても、その売上を回復することができなかった。

そのモトローラは「Moto X」の製造・組立拠点として2013年5月に開設したテキサス州Fort Worthの工場を年内で閉鎖し、他社に売却する方針であると報じられた。最盛期には3,800人の従業員がいた工場であるが、現在は700名人の従業員が働いている。今後の従業員への対応についてモトローラはコメントしていない。

「Moto X」の売上が、アメリカでの工場運営を継続できるほどのものではなかったことが大きい。「Moto X」は2014年Q1で90万台が販売されたが、Appleの「iPhone 5S」は同期間で2,600万台と約30倍である。

モトローラ社長のRick Osterloh氏自身も「北米市場は非常に厳しい」と述べている。また上級副社長のMark Randall氏は「部材の輸送コストや労働力にかかる人件費」もあげている。モトローラも、2013年5月に開設したばかりの工場を、「まさかこんなに早く閉鎖する」ことになるとは思ってもいなかっただろう。

工場は年内で閉鎖となる見込みで、他社への売却も検討されている。「Moto X」は人件費が安く、人口が多く市場としての価値も高いブラジルや中国などで生産が継続される予定である。Osterloh氏は今回の工場閉鎖はLenovoへの売却とは無関係と述べているが、それも射程に入っているだろう。

今後、モトローラとしてはテキサス州Fort Worthの工場を他社に売却することを検討しているようだが、アメリカにある限り輸送コスト、人件費の高さは変わらない。自国で安く生産できる中国のメーカーがアメリカにある工場を購入するとも考えにくい。

【参考動画】
「Moto E」

「Moto X」工場ツアー

【参照情報】
Motolora 「Moto E」
Google's Motorola Mobility to Close Factory in Texas

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。