戦車やブルドーザーのキャタピラーのことを日本語では無限軌道と訳されている。車両が道を運びながら前進するような構造だから、道なき道をどこまでも進むことができるというわけだ。
反対にハムスター用のホイールは回し車などと訳されるが、こちらはどんなに回しても前進することはない。狭いカゴの中などで飼育するハムスターなどの小動物に運動させるための器具だから、ハムスターは本能の命ずるままに走り続け、ハムスターホイールは回転を続ける。
オフィスワーカーは運動不足に陥りがちだ。歩くと健康にいいことは誰もが知っている。電話で連絡するくらいならできるだとうが、屋外を歩きながら仕事するのはちょっと難しい。しかし、デスクに向かってPCを操作しながら歩くことだったらできる。ただし、歩くことで前進してしまっては具合が悪い。サンフランシスコ・ベイエリアのデザイナー、Robb Godshaw氏が作ったのは、幅2フィート(約61センチ)、高さ6.5フィート(約198センチ)の人間用ハムスターホイール。完成品を売るのではなく、DIYプロジェクトで、作り方を公開しているだけだ。欲しい人は、合板やローラースケート用の車輪、接着剤などを自分で買って制作することになる。
同じサンフランシスコのStandDesk社は今年5月にKickstarterで資金調達に成功しているが、これはオフィス用の机がスイッチ1つで上下するというもの。長時間のデスクワークが健康によくないという視点で開発されており、年末までに発売開始予定(399ドル)となっている。
オフィスの中で歩く運動をながら仕事するデスクの歴史は実は古い。1996年にカリフォルニア大学バークレー校のSeth Roberts教授(心理学)がデザインして自ら使ったのが最初で、その後市販もされたのは、ベルトコンベアーがついた、市販のいわゆるルームランナーに、PCデスクを装着することで、歩きながら仕事ができる(あるいは仕事しながら歩くことができる装置で、トレッドミルデスクとかウォーキングデスクと呼ばれている。また、エクササイズ用──車輪のない自転車のような──バイクがついたデスクもアメリカでは市販されている。
ルームランナーに比べてハムスターホイールは大仕掛けで場所を取るという欠点があるが、操作盤で設定することなく、常に自分のペースで歩き続けることができるという利点がある。何より、電力を使わないエコ製品だ。回転運動を電力に変換することはできるので、逆にハムスターホイールで発電することは可能だろう。仕事して、カロリーを消費して、発電をする超グリーン製品ということなら、もしかすると流行したりするかもしれないが、日本のオフィスには不向きであることは言うまでもない。
【参照情報】
・ハムスターホイール・スタンディング・デスクの作り方
・同、図面
・This Hamster Wheel Treadmill Desk Is the Ideal Way to Make Your Coworkers Hate You
・StandDesk
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