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マレーシアの大学でのゲームアプリ開発は若者の失業率低下につながるか?

2014.10.03

Updated by Hitoshi Sato on 10月 3, 2014, 11:03 am JST

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8月31日はマレーシアの独立記念日である。その記念日を祝ってクアラルンプールの中央駅でイベントが開催されていた。そこにマレーシアの大学「Universiti Teknologi Malaysia(UTM:マレーシア工科大学)」も出展していた。同大学のMedia and Game Innovation Centre of Excellence(MaGIC-X)が開発したスマートフォン向けのアプリを展示しており、開発した学生らが説明員として参加していた。

Universiti Teknologi Malaysia(UTM)はマレーシア南部のジョホール州にキャンパスがあり、クアラルンプールにも分校がある。開発を行っている学生らはジョホールの学校に所属しており、コンピュータサイエンスを学んでいる。1904年に設立された同校はマレーシアで一番古い公立の工科大学で、大学院生の方が多い。1990年代から近隣アジア諸国や中東、アフリカからの留学生も増加している。

先日、日本の幕張メッセで東京ゲームショウ2014が開催されており、そこには日本でも多くの大学で学生らが開発したゲームやアプリを展示していた。マレーシアでもコンピュータサイエンスを専攻している学生らを中心にゲームやアプリの開発を行っている。そこで開発されているゲームはAndroidやiOS向けに実用化されており、その多くが無料でダウンロードできる。決して高度なゲームではないが、それなりに楽しむことはできる。

【Universiti Teknologi Malaysia(UTM)が開発したゲームアプリ】
KodiangBoy
GasingX
Super Slipper
Kokondi
MaGIC-Xの提供するゲーム

世界ランキングで下落するマレーシアの大学と高い若者の失業

現在、マレーシアの国公立大学の世界ランキングが下落している。イギリスの教育専門誌「タイムズ・ハイアー・エデュケーション」の2014年度アジア大学ランキングで、マレーシアの大学は100位以内に入らなかった。昨年のランキングで87位に入ったマレーシア国民大学(UKM)も今年は入らなかったと報じられた。

イドリス・ジュソー第2教育相は、これらのランキングに関して、ランキングが全てではないと前置きしたうえで、ランク入りを目指すために現実的な取り組みをするべきとの考えを示したうえで、教育省は2013年には387億リンギット(約1兆2770億円)、2014年には540億リンギット(約1兆7,820億円)の予算割り当てを受けている。

また世界銀行によると、2007年~2012年の間に、新卒者を中心とした、高等教育を受けた労働者の数は46%増加している。しかしマレーシアの15~24歳の若者の失業率は失業者全体に占める割合は60%を占めており、その比率は非常に高い。大学レベルの教育を受けた人材でも企業が求めるスキルが不足していることがその要因であると報じられている。高等教育省によると、2012年の大学卒業者の4分の1は卒業時に就職先が決まらず、世界銀行によると25歳以下の学位保有者の5人に1人が無職だった。新卒者の多くが就職すると「非現実的な」賃金を受け取ることを期待していることも就職できない要因となっている。

マレーシアの大学におけるゲームやアプリ開発が、世界ランキングでの同国の大学が上昇したり、ランクインすることにすぐに貢献するとは考えにくい。しかし、ゲームやアプリの開発というスキルを身につけることによって就職先が見つかりやすくなり、マレーシアの若者の失業率低下につながる可能性は高い。マレーシアの大学で現在求められているのは、このような「小手先のテクニック」のようなアプリ開発スキルなのかもしれない。

一方で、ゲームアプリ開発のような「すぐに役立つスキル」はすぐに役立たなくなってしまう。本来、大学での学ぶことは、すぐには役立たないかもしれないが、長期的に見たら役立つ学問や教養なのではないだろうか。

(参考)マレーシアの平均基本給月額
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(JETRO発表資料を元に作成)

▼マレーシア独立記念日を祝ってのクアラルンプール中央駅のイベント会場とUTMのブース
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▼Universiti Teknologi Malaysia(UTM)が開発したゲームの展示
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【参照情報】
Universiti Teknologi Malaysia(UTM)
マレーシアの国立大、アジア100位から陥落 UKMは87から圏外に
マレーシア大卒者、スキル不足原因で就職難 若者が失業者全体の60%占める=世銀

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。