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海上保安庁と通信事業者による「災害時相互協力協定」

2015.03.11

Updated by Hitoshi Sato on March 11, 2015, 08:45 am JST

▼海上保安庁
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2015年3月11日で東日本大震災から4年が経つ。東日本大震災直後の津波で多くの方々が海に流されたり、流された船舶や陸上で孤立した時、海上保安庁では総力をあげて捜索・救助にあたり、360人を救助した。また、行方不明者の捜索でも5,900人以上の潜水士を投入して1,000回以上の潜水捜索を行い395体のご遺体を収容した。さらに臨海部で発生した火災に対して消防船等で海上からの消火活動を行った。海上保安庁はテレビや映画「海猿」でもお馴染みの人も多いだろう。その海上保安庁と日本の通信事業者3社が「災害時相互協力協定」を締結した。

(1)ソフトバンクモバイル
まず2014年12月25日にソフトバンクモバイルが、大規模災害発生時の早期通信復旧を目的に、通信事業者として初めて海上保安庁と「災害時における通信の確保のための相互協力に関する協定」(「災害協定」)を締結した。災害協定を通じて、ソフトバンクモバイルは、海上保安庁の人命救助活動などに必要な通信手段として、衛星携帯電話やソフトバンク携帯電話などの通信機器を提供する。また、海上保安庁は、被災地で通信の復旧作業を行うソフトバンクモバイルに対し、離島などへ衛星携帯電話や充電器などの被災者支援物資を緊急搬送するなどの協力を行う。両者はスムーズな連絡体制を確立するとともに、大規模災害発生時に備えた合同訓練を実施し災害対策へ取り組んでいく。

2015年3月6日にはKDDIとNTTドコモも海上保安庁と「災害時における通信の確保のための相互協力に関する協定」を締結した。

(2)KDDI
KDDIは海上保安庁との「災害協定」において、今後発生が予想されている首都直下地震や南海トラフ地震などの大規模災害時に、通信確保に向けた広範な相互協力を行い、迅速な復旧活動を図ることを目的としている。具体的には、両者間のスムーズな連絡体制を確立するとともに、海上保安庁は、被災地における通信手段を確保するために活動するKDDIに対して、物資や人員の輸送等の協力を行う。またKDDIは、海上保安庁の災害時における人命救助活動等に必要な通信手段として、衛星携帯電話や携帯電話等の通信機器を優先的に提供する。さらに、災害時のスムーズな連携を図るための情報共有や協同訓練を年1回以上実施することを明らかにした。

(3)NTTドコモ
NTTドコモはこれまでも災害対策基本法に定める指定公共機関として、中央防災会議の定める防災基本計画に基づいた防災業務計画を策定・実行してきたが、昨今の台風や大雨等といった多くの自然災害においても、迅速な復旧および支援活動を行うことができるよう関係機関との更なる幅広い連携強化が必要であり、今回の海上保安庁との「災害時相互協力協定」の締結に至った。NTTドコモは今後、災害時の迅速なサービスの復旧及びお客様への支援活動において、衛星携帯電話や携帯電話などを迅速に提供し、海上保安庁は物資および人員の輸送等の協力を行っていく。NTTドコモと海上保安庁は今後も定期的な訓練を通じて、災害対策の強化に取り組んでいく。

▼NTTドコモのこれまでの主な協定締結機関
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(出典:NTTドコモ)

▼NTTドコモの災害時における直近の主な相互協力状況
NTTドコモでは、「災害時相互協力協定」締結機関以外にも、自治体や行政機関等にも携帯電話および衛星携帯電話等の貸出を行っている。
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(出典:NTTドコモ)

震災時においては人命救助活動等に必要な通信手段として衛星携帯電話や携帯電話等の通信機器を優先的に提供されることは非常に重要である。また平時からの通信事業者との情報共有や合同訓練によって、震災時にスムーズに活動できるようになる。東日本大震災から4年が経った。震災の記憶を風化させてはならない。

【参照情報】
海上保安レポート2012
ソフトバンクモバイルのリリース
KDDIのリリース
NTTドコモのリリース

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。