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デジタルネイティブは紙の本が好き

Digital natives love paper books

2015.04.25

Updated by Mayumi Tanimoto on April 25, 2015, 08:00 am UTC

スマホで人気のあるアプリやInstagram、Lineを見ているとデジタルネイティブは紙の本に興味がないような印象を受けますが、それはどうも間違っていたようです。

Nielsen Bookが Children’s Summitで実施した14-17歳対象のフォーカスグループでは、同社社長のJonathan Nowell氏は、10代は紙の本は楽しみのために読み、デジタル本を学校の宿題のために使う傾向があるという印象を受けた と述べています。(Jonathan Nowell “Childern’s print book sales buck the trend”, Publisher’s Weekly, London Show Daily, 14 April 2015 p 15)

イギリスだけではなくカナダやアメリカの学校では、宿題自体が「何々についてのプレゼンを作りなさい」「何々についてワードで小論文を書きなさい」だったり、課題自体が学習用のアプリやサイトに掲載されていて、そこから解くようになっています。

通学途中のバスや電車の中で、スマホやタブレットで宿題をやったり、試験対策をしている姿が珍しくありません。学校によっては黒板はホワイトボードで、そこに先生がパワポで資料を映しながら講義したり、電子ホワイトボードを使っていたりします。ワタクシが見学に行ったイギリスの私立の学校も、5歳からパワポの資料で授業をしていました。宿題はワードやパワポで作って提出するのが当たり前です。公立の小学校でも、ウェブサイトを作ったり、ソーシャルメディアに投稿することが課題だったりします。

学校でも私生活でもデジタルが当たり前であり、デジタルに触れる機会が多いからこそ、「仕事」(勉強)はデジタル、楽しみは紙、という感覚になるのが面白いですね。

この調査でさらに注目するべき点は、10代は紙の本を「自分を表現するために買っている」という点です。

つまり自分が持っている本を友達に見せることで「私はこういうのが好きなの」と自己表現をしている、というわけです。

英語圏では10代向けのフィクション、いわゆる「YA fiction」が大人気で、2002年から2012年の間に市場が900%伸びています。先日開催されたLondon Book Faireでもヤングアダルト向けのホラーフィクションの書き方というセミナーが大人気で、今や書籍業界にとって重要な分野の一つであり、最近人気の映画やドラマもヤングアダルト向け書籍のスピンオフばかりです。

10代が楽しみのために買う紙は「Twilight」「Hunger Games」であり、そういう作品は、耽美系だったりするので、キャラの美しさ、そのキャラが載っている表紙の美しさ、本棚に並べたときのクールさ、さらに「所有している」という「気分」が重要なわけです。

娯楽なので効率、便利さとは無縁で、自分の部屋を飾るデコレーションの一部として買う、という感覚ですね。

日本と異なり英語圏では紙の本、特にコレクターエディションは高価だったりします。古本屋はほとんどなく図書館だって日本の様にたくさんはありません。そもそも、本屋の数が少ないので、本屋に行くのには遠出したり、親に連れて行ってもらわなければなりません。アメリカの田舎の方だと、まともな本屋までは100キロ運転していかなければならない、という街だってあります。(例:ワタクシが住んでいた街。街中には聖書の専門店と、ゴミみたいなペーパーバッグを売っているスーパーしかない)日本の様に郊外にビデオ屋や文具屋とくっついたような大型本屋があるわけではないので、地方に行くと本屋が全然ないということもあります。「紙の本を持っている」「コレクターエディションを持っている」というのは、プチ自慢になるわけです。

デジタルネイティブが生きていくせ世界では、様々なことがますますデジタル化されていくでしょう。デジタルが増えるからこそ、「手触り」「所有欲」や「プレミア感」を刺激するような本を企画してみると良いのかもしれませんね。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。