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[2015年第22週]「エモパー」重視のシャープスマホ新製品、KDDIがNFVやミリ波伝送の取り組み

Weekly Report: Week 22 2015

2015.06.01

Updated by Naohisa Iwamoto on June 1, 2015, 19:21 pm JST

この週、シャープの新製品戦略の説明会や、ケイ・オプティコムがKDDI回線に加えてドコモ回線を利用したマルチキャリアサービスを提供するという発表会が開催された。また、技術関連の発表が多かったのも特徴で、KDDI研究所の複数の取り組みには注目したい。

シャープの夏モデル戦略、mineoがドコモ網にも対応

まず、エンドユーザーに関係する新製品、新サービスの話題から。シャープは、2015年夏モデルの新製品説明会を報道機関向けに開催し、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3キャリアから発表された新製品へのメーカーとしての取り組みを説明した。2015年夏の新製品は3点に重点を置いて取り組んだという。

シャープの夏モデル戦略、mineoがドコモ網にも対応

1つは「機械が人にもっと寄り添う関係づくり」で2014年冬モデルから導入が始まった感情コミュニケーション機能の「エモパー」を進化させながらスマートフォンの新製品5機種すべてに搭載したこと。利用者に合った話題を選んだり、イヤホンを使えば外出先でも話しかけてくれるように進化をしたという。2つ目はAndroid OSを使った「新世代ケータイの拡充」で、夏モデルでは2機種を市場に投入。今後はすべてのケータイを新世代に変えてスマートフォンと並ぶ事業の柱にするという。3つ目は、フラッグシップモデルだけでなく「価格指向の必要十分層への対応」で新ジャンルを開拓すること。ミッドレンジでデザイン指向層に向けた「AQUOS CRYSTAL 2」(ソフトバンクモバイル)を提供するほか、必要十分層への対応を意識した「AQUOS EVER」(NTTドコモ)で市場の変化への積極的な対応を目指す(発表資料:スマートフォン・タブレット・新世代ケータイ 2015年夏モデル新製品説明会を開催)。

KDDI回線を使ったMVNOの代名詞であるケイ・オプティコムの「mineo」が、ドコモ回線を使ったサービスを始めるというニュースもあった。

「mineo」がドコモ回線も提供しマルチキャリア化、法人向けサービスも開始

具体的には、2015年9月に「mineo SIM auプラン」に加えて、「mineo SIM docomoプラン」の提供を開始し、端末の乗り換え時などに安価にスムーズな対応を可能にする。異なるキャリアを使っている家族間のパケットシェアなど、マルチキャリアならではのサービスも投入する。また法人向けのサービスも展開し、個人向けと同様にマルチキャリアで提供する計画だ(関連記事:「mineo」がドコモ回線も提供しマルチキャリア化、法人向けサービスも開始

KDDI研究所がNFVの完全自動化を実証、ミリ波帯の活用技術も

技術関連のトピックも多かった。KDDI研究所は、日本ヒューレット・パッカード、シスコシステムズ、ノキアソリューションズ&ネットワークスなどと協力して、移動体設備と固定系設備を仮想化したテストベッド上での運用ワークフローの完全自動化の実証に世界で初めて成功した。

KDDI研究所など、移動体・固定系を統合した仮想化環境の運用自動化実証に成功

今回の実証実験では、移動体機能として各種EPC(Evolved Packet Core)機能、固定系機能としてCPE(Customer Premises Equipment)、その他機能としてファイアウォールなどの共通系の機能を、仮想化基盤上でソフトウエア化し、統合管理制御システムにより障害時に即座に自動的に復旧できることを確認した(関連記事:KDDI研究所など、移動体・固定系を統合した仮想化環境の運用自動化実証に成功)。

同じくKDDI研究所は、ミリ波帯の60GHz帯と現行のLTEを協調動作させてコンテンツデータをスムーズに転送する通信方式を開発した。高速通信が可能な一方で電波の到達距離が短い60GHz帯を、LTEとの協調動作により有効にコンテンツのダウンロードに活用できることを示した。新方式では、ユーザーがLTEエリアから特定の60GHz帯エリアに接近することを位置情報で捉え、到達しそうな60GHz帯のエリアの基地局にコンテンツを先回りしてダウンロードしておく。ユーザーが60GHz帯エリアで接続すると、即座にダウンロードが始まり、短時間でコンテンツの受信が可能になる(関連記事:コンテンツを先回りしてダウンロード、KDDI研の新技術で5Gの高周波数帯を効率利用)。

アンリツは、LTE-Advancedに対応した携帯端末を開発するためのワンボックステスター「ラジオ コミュニケーション アナライザMT8821C」の販売を開始した。MT8821Cは、3つのコンポーネントキャリアを使ったキャリアアグリゲーション(3CC CA)と、2×2 MIMOに対応したLTE-Advanced端末の評価が可能になる。従来機種では3CC CAを使った端末評価のためには3代のワンボックステスターが必要だったが、新製品では1台で対応が可能。アンリツによれば、3CC CAと2×2 MIMOに対応した製品は業界初だという(報道発表資料:LTE-Advanced端末の3キャリアアグリゲーションと2x2 MIMO試験を1台の測定器で実現)。

サイバーセキュリティ関連の話題もあった。情報通信研究機構(NICT)と内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)は、サイバーセキュリティ基本法などを踏まえた包括的協力協定を新たに締結した。サイバーセキュリティ対策の推進にあたり、NICTとNISCの間で包括的協力関係を構築することで、日本のサイバーセキュリティに関する施策を効率的・効果的に推進するとともに、NICTのネットワークセキュリティ技術に関する研究成果の有効利用と社会還元を目指す(関連記事:NICTと内閣サイバーセキュリティセンターが包括的協力協定を締結)。

インバウンド、アウトバウンドそれぞれに新サービス

海外からの来訪者向けのインバウンドのサービスとして、ソフトバンクモバイルは、訪日外国人を対象にした無料の公衆Wi-Fiサービス「FREE Wi-Fi PASSPORT」の提供を7月1日に開始する。「FREE Wi-Fi PASSPORT」は、専用アプリのダウンロードなどが不要で、訪日外国人が手軽に安全な公衆Wi-Fiサービスを利用できるようになる。利用するときは、携帯電話から通話料無料の専用電話番号へ発信することで、パスワードを音声で確認する。英語、中国語、韓国語の3カ国語に対応し、全国約40万のアクセスポイントで利用できる。2016年3月までをトライアル期間として実施する(報道発表資料:利便性と不正利用抑止を両立した訪日外国人向け無料Wi-Fiサービスの提供を開始)。

海外渡航者向けのアウトバウンドのサービスとしてKDDIは、日系企業の進出が加速するミャンマーで海外パケット定額サービス「海外ダブル定額」の提供を開始した。海外ダブル定額は、24.4MBまでが最大1980円/日、それ以上の場合は最大2980円/日でパケット通信が利用できるサービス。ビジネスだけでなく観光でも渡航者が増えるミャンマーで、安心してデータ通信を利用できるようになる(報道発表資料:国内通信事業者初、ミャンマーにおける海外パケット定額サービス「海外ダブル定額」の提供について)。

ウエアラブル急伸の4月、ドコモが高齢者見守り用タブレット

このほか、この週のトピックを紹介する。ジーエフケー マーケティングサービス ジャパン(GfK Japan)は、ウエアラブル端末の販売動向と購入意向などの消費者調査の結果を発表した。Apple Watchが発売された4月には、ウエアラブル端末の数量の前年同月比が2.1倍になるなど、販売が加速している。ウエアラブル端末の購入者は運動頻度が高い消費者が多いことも特徴で、購入者の3割以上が「ほとんど毎日運動している」と回答し、ジョギングやランニングといったスポーツを好むユーザー層からウエアラブル端末が受け入れられている様子が見て取れる(関連記事:Apple Watch効果で4月のウエアラブル端末販売は前年の2倍以上に--GfK Japan調べ)。

NTTドコモは、タブレットを使った高齢者向けの見守りソリューション「おらがタブレット」の提供を開始した。全国の法人や地方自治体に向けたもの。高齢者の使いやすさを考慮したユーザーインタフェースを用いる「メールアプリ」、日々の血圧と歩数を入力する「健康管理アプリ」、ゲーム感覚の数字の早押しで脳をトレーニングする「脳トレアプリ」を独自に開発した(関連記事:ドコモ、タブレットを使って高齢者を見守る「おらのタブレット」開始)。

モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(以下、MCPC)、NTTドコモ、KDDI、沖縄セルラー電話、ソフトバンクモバイルは、スマートフォンなどのモバイル機器の充電にかかわる事故を防止するためのロゴとキャッチフレーズを新設したと発表した。スマートフォンなどのモバイル機器が水に濡れた状態で充電すると、充電端子が焼損するリスクが高いことを、ロゴとキャッチフレーズで周知する(関連記事:水に濡れたままで充電しないで!モバイル機器の安全な充電をロゴとキャッチフレーズで周知)。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。