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中国電信、通信事業者にとって重要な「コネクテッド・カー」への挑戦

Will connected cars form a major element of the IoT?

2015.08.07

Updated by Hitoshi Sato on 8月 7, 2015, 14:19 pm JST

中国の通信事業者中国電信(チャイナ・テレコム)はコネクテッド・カー向けの実証開発(proof-of-concept:POC)をジェムアルトと行っていくことを発表した。中国電信は同社の顧客である自動車メーカー向けにコネクテッド・カーを提供していく予定。

中国では自動車の保有者数は 1 億 5,400万 人以上で、中国の自動車市場は世界で最も急速な成長を遂げている。そして交通渋滞や運転者の安全性、緊急アシスタンス、車両の耐久性などの懸念から、高度なテレマティクス、ナビゲーション、安全装置などを備えたコネクテッド・カーの需要が中国では高まっている。

中国電信ではeSIM(組み込み用 SIM)が搭載されたコネクテッド・カーを提供し、ドライバーは自分の欲しいサービスを柔軟に選択できる予定。ジェムアルトの LinqUs On-Demand Connectivity(ODC)サブスクリプション管理ソリューションを活用し遠隔からのOTA(Over-the-Air)プロビジョニングにより、モバイル端末上でセキュアな接続を実現する。将来は、ODC ソリューションと車載機器を統合し、いつでもどこでも車内で即時接続が可能な環境を提供することができるようになる。

中国電信・上海の副チーフエンジニアである Liu Yuan 博士は、次のように述べている。
「コネクテッド・カーはモノのインターネット(IoT)の主要な構成要素となるでしょう。国際標準化機構が eUICCを 1 つの統一されたリモートプロビジョニングアーキテクチャとして策定したため、当社顧客は製造段階で独自のサブスクリプションを計画したり、異なる通信事業者向けに多様なデバイスを製造したりする必要がありません。これにより、当社顧客のサプライチェーンや物流は簡素化され、異なるサービスプロバイダ間で迅速な世界規模のサービス展開が可能となり、世界的に IoT の開発を大幅に進展させます。」
中国電信(チャイナ・テレコム)は1 億 9,000万以上の契約者を有している。

ジェムアルトのグレーターチャイナ、韓国担当社長である Suzanne Tong-Li は、次のように述べている。
「2025 年までに、全ての新車には何らかのコネクティビティ技術が搭載されているでしょう。これは、我々も含め、多くの企業にとってビジネスチャンスとなるでしょう。標準規格に準拠した当社のソリューションにより、中国電信は自社の 4Gネットワークを活用して成長市場を獲得し、安全で楽しいドライブ体験を実現する画期的なソリューションを提供できるようになります。」

通信事業者にとってコネクテッド・カーの重要性

中国電信のコネクテッド・カーは現時点ではまた「POC(Proof-of-concept)」、つまり概念の段階であるため、商用化に向けた具体的な時期などは見えてない。

中国ではほとんどの携帯電話がスマートフォンになり、だんだん市場が飽和してきはじめたうえに、通信事業者による差別化を出すのが難しくなってきた。そこで通信事業者も新たな市場における次の収益の柱を探していく必要がある。アメリカでは既にAT&Tやベライゾンといった大手通信事業者がコネクテッド・カー市場に進出しており、具体的なサービスの提供も開始している。

そしてコネクテッド・カーは従来のスマートフォンやタブレットでの通信費の価格競争と異なり、システム構築や運用保守など新たな収益も期待できるし、そちらの方が大きいことが見込める。日本の通信事業者は20年以上前から法人営業部などが法人顧客向けにシステム構築などのサービスを提供してきた。

海外の通信事業者にとっては、法人顧客は新たな収益源を生む重要なパートナーであり、移動体通信とは歴史的にも親和性の高い自動車分野であるコネクテッド・カーはその礎である。そしてシステム構築は法人顧客やエンドユーザーと中長期的な関係を構築することができるため、通信事業者にとっては目先の通信費やARPUよりも重要である。

【関連情報】
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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。