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ラオスの携帯電話事情 – 4キャリアがサービスを提供中

Mobile Industry of Laos Vol. 1 - 4 operators providing cellphone service

2015.09.17

Updated by Kazuteru Tamura on 9月 17, 2015, 11:02 am JST

東南アジア唯一の内陸国であるラオス人民民主共和国(以下、ラオス)、すぐにラオスのイメージが思い浮かぶ人はそう多くはないだろう。それもそのはず、一般的によく知られるようなシンボルなどはなく、ラオス最大都市で首都のビエンチャンでさえものどかな街並みであることから、「何もない国」と表現されることもある。そんなラオスでも携帯電話は普及しており、2015年9月初めの時点で4社の移動体通信事業者が携帯電話サービスを提供する。移動体通信事業者はEnterprise of Telecommunications Lao(以下、ETL)、Lao Telecommunications(以下、LTC)、Star Telecom、VimpelCom Laoの4社であり、外資企業もラオスに参入している。これまで各移動体通信事業者とも統合・分離独立・外資企業との合弁など複雑な道のりを歩んでいる。そこで、今回はラオスの携帯電話事情を紹介する。

国営企業のETL

ETLは現存するラオスの移動体通信事業者では唯一の国営企業で、日本語ではラオス電気通信公社と訳されることもある。ラオス政府が100%出資の移動体通信事業者である。その前身はEnterprise of Posts and Telecommunications Lao(以下、EPTL)で、1986年にラオス政府が100%出資で設立した。以後、EPTLがラオスにおける電気通信事業などを独占的に手掛けていたが、1994年にラオス政府とタイのShinの子会社であるShinawatra Satelliteが合弁でLao Shinawatra Telecom(以下、LST)を設立したことで独占が崩れた。

1995年にはEPTLの解体が決定し、郵便事業はEnterprise of Posts Lao(EPL)として、そして電気通信事業はETLとして独立した。しかし、1996年にETLはLSTと統合してLTCが設立された。なお、LSTは1994年12月に2GとしてGSM方式で移動体通信サービスを開始しており、LTCはその事業を引き継いだ。それからしばらくは大きな動きはなかったが、2000年8月にLTCからETLが分離して再びETLが単独で電気通信事業を手掛けるようになった。ETLとしては2002年に2GとしてGSM方式で移動体通信サービスを開始し、2011年8月末に3GとしてW-CDMA方式を導入した。

▼ETLの本社。販売店も併設している。
ETLの本社。販売店も併設している。

▼ETLの基地局。
ETLの基地局。

▼ETLのSIMカード。
ETLのSIMカード。

ラオスで最初にLTEを開始したLTC

LTCはラオス政府とシンガポールのShenington Investments(以下、SHEN)が出資しており、出資比率はラオス政府が51%、SHENが49%となる。正式社名を略してLao Telecomと呼ばれることも少なくない。サービスブランドは音声通話をM Phone、データ通信をM Broadbandとしている。

LTCの前身は1994年にラオス政府とShinawatra Satelliteの合弁で設立されたLSTで、1994年12月にGSM方式で移動体通信サービスを開始した。1996年にLSTはETLと統合してLTCが設立された。この1996年にLTCに対して移動体通信や固定通信など各種事業のライセンスが交付されており、LTCとしての各種事業を開始した。なお、ライセンスは25年間で満期は2021年と定められた。2000年8月にLTCからETLが分離するものの、LTCはそのまま各種事業を継続した。2009年には3GとしてW-CDMA方式を導入している。2015年には早くも25年間のライセンスの延長が認可されたため、2046年までのライセンスを保有する。

LTCは2012年10月26日にはラオスで初となるFDD-LTE方式による移動体通信サービスを4Gとして開始した。ビエンチャンでは2012年11月上旬にアジア欧州会合(ASEM)第9回首脳会合が開催されており、それに合わせて中国の華為技術(Huawei Technologies)と協力して導入したものである。東南アジアでLTEサービスを商用化した国はシンガポールとフィリピンに続いてラオスが東南アジアで3番目となった。

FDD-LTE方式の導入当初は提供エリアがビエンチャンのみで、しばらくは基地局数が約30局と少なかったが、2014年11月には80局まで増やした。また、2015年3月にはパクセーを含むチャンパサック、2015年8月にはサバナケットに提供エリアを拡大している。なお、LTCは固定通信用にCDMA2000方式も運用する。

LSTの設立時はShinawatra Satelliteが出資していたが、後にShinawatra Satelliteが買収したSHENを通じて出資している。また、Shinawatra Satelliteは1999年に社名を変更してShin Satelliteに、2008年には再び変更してThaicomに、一方でThaicomの親会社であるShinは2011年に社名をIntouchに変更した。このような構造から、一般的にLTCはラオス政府とThaicom系列またはIntouch系列の合弁と扱われることが多い。

▼LTCの本社。販売店も併設している。
LTCの本社。販売店も併設している。

▼LTCの基地局。LTCのロゴが目立ち、判別しやすい。
LTCの基地局。LTCのロゴが目立ち、判別しやすい。

▼LTCのSIMカード。
LTCのSIMカード。

ラオス軍系とベトナム軍系による合弁のUnitel

サービスブランドをUnitelとして展開するStar TelecomはラオスのLao Asia Telecom(以下、LAT)とベトナムのViettelグループで国際事業を手掛けるViettel Globalによる合弁で設立された。出資比率はLATが51%、Viettel Globalが49%である。LATはラオス国防省の管理下でラオス人民軍が所有し、またベトナム軍隊通信グループとも呼ばれるViettelグループはベトナム国防省傘下でベトナム人民軍が運営しており、Star Telecomはラオスとベトナムの両軍系の合弁となる。

Star Telecomの前身でもあるLATは2001年にラオス国防省の管理下で設立されており、2002年に2GとしてGSM方式で移動体通信サービスを開始した。同時に固定通信サービスも開始したが、固定通信サービスは先に終了して移動体通信サービスのみ継続した。2007年にLATとViettel Globalが合弁でStar Telecomを設立し、2008年にStar Telecomとしてライセンスを取得した。Star TelecomはLATの事業を継承し、2009年にサービスブランドをUnitelと改めた。2009年10月に3GとしてW-CDMA方式を導入、2015年5月下旬には4GとしてFDD-LTE方式を導入し、ラオスで2番目にLTEサービスを開始した。

▼Star Telecomの本社。同じ敷地内に販売店を設置している。
Star Telecomの本社。同じ敷地内に販売店を設置している。

▼Star Telecomの基地局。
Star Telecomの基地局。

▼Star TelecomのSIMカード。
Star TelecomのSIMカード。

外資が筆頭株主のBeeline

VimpelCom LaoはオランダのVimpelComとラオス政府による合弁で、出資比率はVimpelCom Laoが78%、ラオス政府が22%となる。VimpelComが保有するBeelineブランドで展開している。なお、VimpelComはロシアのイメージが強いかもしれないが、本社機能はロシアからオランダに移転した。VimpelCom Laoはラオスにおいて外資企業が筆頭株主となる唯一の移動体通信事業者である。

VimpelCom Laoの前身はMillicom Lao(以下、MLL)である。MLLはルクセンブルクのMillicom International Cellular(MIC)とラオス政府が合弁で設立しており、設立時の出資比率はMICが78%、ラオス政府が22%である。MLLは2002年に2022年までの20年間にわたるライセンスを取得し、2003年4月より2GとしてGSM方式の移動体通信サービスを開始した。移動体通信サービスの開始当初はサービスブランドをTangoとしていたが、2007年にはTigoにサービスブランドを変更した。TigoブランドはMICが保有しており、MIC傘下企業は複数の国でTigoブランドを展開している。

MLLは本社をビエンチャンに置き、支社をルアンパバーン・パクセー・サバナケットに設置して事業を展開した。しかし、2009年9月にMICとVimpelComの両社はMICが保有するMLLの全株式をVimpelComが取得することで合意した。2011年3月にこの取引が完了し、MICはラオスにおける事業から撤退すると同時に、VimpelComがラオスへ正式に参入した。VimpelComが筆頭株主となったことで社名やブランド名を改めたが、基本的にはMLLの事業を継承しており、ラオス政府による出資比率も変更はない。2012年1月に3GとしてW-CDMA方式による移動体通信サービスを導入した。なお、2012年にはFDD-LTE方式のデモンストレーションを披露しているが、商用化には至っていない。

▼VimpelCom Laoの本社前。販売店は併設していない。
VimpelCom Laoの本社前。販売店は併設していない。

▼VimpelCom Laoの販売店。
VimpelCom Laoの販売店。

▼VimpelCom LaoのSIMカード。
VimpelCom LaoのSIMカード。

▼ラオスでは最後発のBeelineブランドをアピールするためか、Beelineデザインのベンチをよく見かけた。
ラオスでは最後発のBeelineブランドをアピールするためか、Beelineデザインのベンチをよく見かけた。

▼VimpelCom Laoはラオスの出入国カードにも広告を掲載している。
VimpelCom Laoはラオスの出入国カードにも広告を掲載している。

ラオス参入済みの外資は隣国でも展開

ラオスはベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマー、中国に囲まれている内陸国である。LTCに出資するSHEN、Unitelに出資するViettel Global、VimpelCom Laoに出資するVimpelComはいずれもラオスの隣国においても移動体通信事業を展開中もしくは展開した実績がある。

SHENの親会社はタイのIntouchであり、タイではIntouch傘下の Advanced Info Service(以下、AIS)が移動体通信事業を手掛ける。AISはタイの移動体通信事業者における利用者数でトップを維持している。また、1993年にはSHENとカンボジア政府が合弁でCambodia Shinawatra(以下、Camshin)を設立した。Camshinは社名をMfoneに変更し、サービスブランドをMfoneとして移動体通信事業を展開していたが、2013年1月に経営難の末に破産してカンボジアから撤退した。MfoneのロゴはLTCのM PhoneやM Broadbandのロゴとよく似ており、そこからも同じ系列会社であったことが窺える。

ラオスで展開する外資企業ではVimpelComもカンボジアから撤退している。2008年7月にカンボジアのSotelcoを買収してカンボジアに参入し、Beelineブランドで移動体通信事業を展開したが、2013年4月にSotelcoを売却してカンボジアから撤退した。SotelcoはBeelineブランドで移動体通信事業を継続したが、2015年3月に移動体通信事業を終了してカンボジアからBeelineブランドが姿を消した。

カンボジアで外資企業各社が苦戦する中、Viettel Globalはカンボジアで好調な結果を出している。Viettel GlobalはカンボジアにViettel(Cambodia)を設立し、サービスブランドをMetfoneとして展開している。Sotelcoが移動体通信事業を終了した際は、Sotelcoの利用者を救済するなど、カンボジアにおける移動体通信事業を強化している。また、ベトナムを拠点とするViettelグループはベトナムにおいても移動体通信事業を展開している。

ラオスで移動体通信事業を手掛ける外資企業は、明暗は分かれているものの、3社ともカンボジアと関連があることが分かる。ラオスとカンボジアはメコン圏の後発新興国として注目されており、比較されることも少なくないが、移動体通信業界の事情はまったく異なる。

カンボジアはラオスより人口が多いものの、移動体通信事業者は最大で8社が存在しており、移動体通信事業者の新規参入や撤退を繰り返すなど移動体通信事業者の増減が激しい(関連記事:再編が続くカンボジアの携帯電話業界)。一方でラオスではしばらく4社体制を維持しており、あまり活発な動きは見られない。筆者はカンボジアのプノンペンとラオスのビエンチャンを訪問したが、外資企業の相次ぐ参入や建設ラッシュなどで活気に溢れるプノンペンとのどかなビエンチャン、両国の移動体通信業界の動きはそれぞれ首都の雰囲気を表しているような印象も受けた。

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田村 和輝(たむら・かずてる)

滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。

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