イタリア ミラノ国際博覧会

EXPOに見る未来

EXPO is future!

2015.09.25

Updated by Masakazu Takasu on 9月 25, 2015, 11:44 am JST

今年2015年は、イタリアのミラノで国際博覧会、EXPOが行われています。僕の世代だと万国博覧会、バンパクと発音する印象が強いです。

僕にとってはじめての万博は、1985年につくばで行われた科学万博でした。コスモ星丸のマスコットも、ファミコンゲームのロードランナーが全面に映された巨大ディスプレイ、ジャンボトロンを鮮明におぼえていますが、ひたすら人混みと行列だった気もしています。

それから30年がたち、万博はすっかりレガシーなイベントになった気がしていました。なにしろ万博の第1回は1851年、外国人の友達なんかいなくてアタリマエだった、164年前のことです。

それでも万博は引き続き行われ、今年のミラノ万博は2000万人の入場者を見込んでいます。ミラノ万博の様子を見てきました。

ミラノ万博は、「地球に食料を、生命にエネルギーを」をテーマに、各パビリオンがその国の代表的な食べ物を展示しています。

▼ミラノらしい彫像が出迎える ミラノ万博入り口
ミラノらしい彫像が出迎える ミラノ万博入り口

21世紀の万博は、非常に興味深いものでした。1985年に見たものと違い、世界は小さくなり、どこの国もグローバル化されました。EUやASEANが生まれ、国境を超えた難民のニュースが世間を騒がせているように、海外のニュースはますます他人事ではなくなりつつあります。

ミラノ万博では各パビリオンが、そういう世界の中で、自分の国が誇れるものを自分たちがカッコいいと思える方法で展示していました。

▼ネパール館。5色のタルチョが輝く。
ネパール館。5色のタルチョが輝く。

たとえばネパール館はネパール様式の仏教寺院をまるごとミラノに建立。プロジェクタや動画に頼るパビリオンが多い中、仏像をそのまま展示してバター茶、ツアンパなどのネパール食事を提供し、大きな注目を集めていました。ネパール地震への寄付も協力した人が多かったように思います。

▼ベトナム館
ベトナム館

ベトナム館は竹と豊富な植物をアピール。ベトナムの食べ物は世界的に有名で、どこの国でもベトナム料理レストランは見かけ、アメリカ人やヨーロッパ人も「フォーというヌードルがおいしい」ということぐらいは知っています。

国の花である蓮をあしらったステージで、伝統的な音楽の演奏を長時間続け、こちらも多くの観客を集めていました。料理や食材に加えて、カルチャーの展示が目立ちました。

▼ベトナム音楽の演奏
ベトナム音楽の演奏

国ごとのアピールポイントが見える

万博はそれぞれの国にとって、何をたいせつに思っているのかが透けてみえる場でもあります。中東付近の砂漠の国は、どこも緑や青、水や草木など、オアシスを感じさせるイメージを多く使い、水へのあこがれを感じます。

▼イラン館のレストラン。水にあこがれる国であることがうかがえる。
イラン館のレストラン。水にあこがれる国であることがうかがえる。

そのなかでモロッコ館は、沿岸部の緑にあふれた美しい都市や、ヨーロッパの影響下にある食べ物を紹介するほか、電球と熱風をファンで吹き付け、砂漠の気候を再現していました。

▼モロッコ館。熱風と強烈な光源で砂漠を体感させる
モロッコ館。熱風と強烈な光源で砂漠を体感させる

名前を言えば世界中が知っているヨーロッパの先進国は、パビリオンのデザインなどでより自分たちの文化をアピールしています。

上海万博ではハリネズミのような斬新なデザインで注目を集めたイギリスは、今回も変わったデザインの建築を披露しました。今年は蜂の巣がイメージのパビリオンを作成し、出展者はパビリオンの下で口に木片を加えて情報端末に差し込むと、骨伝導で説明の情報が聞こえてくる。来場者の一人一人が蜂というしつらえです。

蜂の巣をイメージした空中に浮かぶ構造体は、夜になると光の球体が浮かび上がります。

▼夜のイギリス館
夜のイギリス館

各所から音楽が聞こえてくる夜

夜の万博はもう一つの見所で、どこも工夫を凝らしたパビリオンに、さらにライトアップが加わります。各パビリオンは夜9時頃から閉まりはじめますが、万博会場は夜11時過ぎまでオープンしていて、ライブパフォーマンスやライトアップが夜に花を添えます。

▼ドイツパビリオンのステージ。外向けに解放されている
ドイツパビリオンのステージ。外向けに解放されている

開催国であるイタリアは、イタリア館の横にシンボルタワーを建設、この数十メートルの巨大なタワーが毎晩光り輝き、タワーに劣らない大きさの噴水と組み合わさったショーが毎晩行われていました。

▼イタリアの光のショー
イタリアの光のショー

大人気のイタリア館・日本館

開催国のイタリアは、開催国中唯一の常設パビリオンとして、光触媒でスモッグを吸収する新素材を、コンピュータ制御設計で蜘蛛の巣のように建物を包む設計でパビリオンを設計しました。

▼スモッグを吸収するイタリア館
スモッグを吸収するイタリア館

他のパビリオンは万博終了後すべて壊してしまいますが、イタリア館だけずっと残ります。イタリアは開催地として力をかけていて、他にもこの万博内にチョコレート館など複数のパビリオンを運営しています。本館では、アルプスから地中海までの変化に富んだイタリアの風景がミラーをうまく活用したプロジェクタで視界全面に描いていました。

▼ミラーを用いた全周展示
ミラーを用いた全周展示

他にも、ミラノ・スカラ座のコンサートチケットを会場内で手配するなど、イタリアの風土、人々、テクノロジーや文化をまんべんなく紹介するボリューム満点の展示で、会期中ずっと長蛇の列を作っていました。

注目度で言うと、最も話題に上ったのは日本館でした。開場直後から日本館パビリオンには2時間近い行列ができ、僕が取材した4日間のうち、それが短くなることはなかったように思います。万博期間中にいろいろな国の広報担当者と話しましたが、僕の出身国が日本だとわかると、「日本館は面白かった!」と声をかけられて一気に打ち解けることも多く、特にイタリア館を案内してくれた広報担当者は日本館の大ファンでした。

▼日本館の行列
日本館の行列

日本館では、「Harmonious Diversity -共存する多様性-」をテーマに、日本の食べ物、食器、品種改良、食べる作法など、食文化をトータルにアピールしています。チームラボもHARMONYDIVERSITYという二つのインタラクティブ展示を行っており、特にHARMONYが現地で新聞に大きく取り上げられるなど、評判になっていました。

▼水田を模した空間の中に人々が入り込む「HARMONY」
水田を模した空間の中に人々が入り込む「HARMONY」

国の大きさの違い、視点なども見える

万博は国のサイズ、スケールなどが透けて見える場でもあります。アフリカ諸国のうち、ジンバブエ・ザンビア・モザンビークなどの諸国や、ラオス・ミャンマーなどのアジア書屋は、まったく同じデザインの建売住宅のようなパビリオンを並べていました。

▼アフリカ諸国パビリオン
アフリカ諸国パビリオン

▼ラオス館の展示内容
ラオス館の展示内容

僕が訪れた日はジンバブエの記念日だそうで、ステージでジンバブエのダンサブルな民族音楽が演奏され、VIPらしいスーツの人たちもたいへんうれしそうに踊っていました。

▼ジンバブエの記念日
ジンバブエの記念日

一方でアメリカ館では、オバマ大統領ほかVIPや研究者が、「地球人口がますます増える中を、どうやって食糧問題を解決していくか」という地球全体を視野に入れたメッセージやインフォグラフィックを展示。これはこれでいかにもアメリカらしい展示で強い印象を受けました。

▼アメリカ館。
アメリカ館。

より体験が中心に

開場は会期中ずっと世界各国からの人で賑わっていて、見るのにストレスなほど人が集まっているパビリオンはわずかでしたが、逆に閑古鳥が鳴いているパビリオンもなかったように思います。

各館とも、よりライブ演奏・食事・インタラクティブテクノロジー・建築やディスプレイなど、その場に行かないと体験できないようなパビリオンが増えていた印象があります。
単なる情報はインターネットでかなり手に入る今、しかも行こうと思えば万博での成果がそのまま観光客増などにつながりやすい今、むしろ万博のようなイベントの価値は増しているように思います。

まだ1ヶ月あまり会期は残っているので、ミラノまで出かける価値は充分にあると感じました。次回の万博も楽しみです。

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高須 正和(たかす・まさかず)

無駄に元気な、チームラボMake部の発起人。チームラボニコニコ学会βニコニコ技術部DMM.Makeなどで活動をしています。日本のDIYカルチャーを海外に伝える『ニコ技輸出プロジェクト』を行っています。日本と世界のMakerムーブメントをつなげることに関心があり、メイカーズのエコシステムという書籍に活動がまとまっています。ほか連載など:http://ch.nicovideo.jp/tks/blomaga/ar701264