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日本通信、IoT/M2M用途向け無線通信サービス用「2SIMルーター」を発売

2015.12.02

Updated by Asako Itagaki on December 2, 2015, 06:02 am JST

日本通信は、IoT/M2M用途向け無線通信サービス展開に向け、2つのキャリア網に接続することでネットワークの信頼性を高める「Dual Network戦略」を発表した。対応した新製品として、ドコモ網とソフトバンク網を利用できる「2SIMルーター」を12月1日から発売する。

「2SIMルーター」は1つのルーターに2枚のSIMカードを刺すもので、メイン回線にドコモ網、バックアップ回線にソフトバンク網を使用する。接続はいずれも3Gで、通信速度は下り最大150kbpsとなる。ただし、ソフトバンク網についてはL2接続がまだ行われていないため、当面は日本通信の米国子会社(VodafoneのMVNO)で提供しているSIMカードでローミング接続する。メイン回線に障害が発生した時に自動的にバックアップ回線に接続を切り替える。

▼Dual Network
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▼2SIMルーター。ハードウェアはDigi社製、切り替えロジックは日本通信が開発して搭載。

市場としては、まずは金融機関ATMやPOSなどでアクセス回線として利用されるISDN(約350万回線)や専用線(約140万回線)など低速な有線接続回線の置き換え需要を想定する。また、爆発的に増加するIoT向け回線も視野に入れる。料金は5年リースで端末と2回線分の通信料金で月額3,900円で提供する。バックアップ用と合わせてISDNを2回線利用する場合のコストは月額約10,000円程度となるため、比較して十分にコストメリットがあるとしている。

「格安スマホの会社として認識されるのは本意ではない」

日本通信株式会社代表取締役社長の福田尚久氏(右)は、日本通信創業からの「MVNOのミッション」として、「MNOがやりたがらないサービスの低廉化と多様化」を挙げる。「日本では格安スマホを作った会社と見られているが、それは本意ではない。米国では多様化に注力して、キャリアとは違う取り組みをやっている」とする。

同社は米国子会社で2006年から無線専用線事業を展開しており、2008年にはPCI DSS認定(Payment Card Industry Data Security Standard)を受けて金融機関のATM向け無線専用線サービスを提供している。日本でも同様のサービスを展開すべく、2014年にPCI DSS認定を受けた。複数の金融機関と商談を進めており、既に1件受注も決まっている。

福田氏は、「IoT/M2M用途の無線サービスのニーズが急速に高まる中、日本でも無線専用線の引き合いが増えているが、業務用ネットワークで重視されるのは安全性(セキュリティ)と信頼性である」とする。「センサーネットワークとして情報を収集するだけであれば多少データが欠落しても全体としては大きな影響はないが、IoTでは機器類のコントロールをネットワークを経由して行うことになり、信頼性がより重視されるようになった」(福田氏)ことが、Dual Network戦略の背景にある。

多数のデバイスを一元管理することを想定して、管理ポータルも提供する。デバイスID、モデル名、MACアドレス、設置場所、現在アクティブなネットワーク、接続状態がデバイスごとに確認できる。メーカーやシステムインテグレータ向けにに、これらの情報をシステムに組み込むためのAPIも提供する。

稼働率99.999%を目指して2Moduleルーターを開発中

同社が今回発表した2SIMルーターは1つの通信モジュールで2枚のSIMを切り替えるが、来春を目標に通信モジュールを2つ搭載したルーター(2Moduleルーター)を開発中。「2つのモジュールが同時に通信できるので、ネットワークが落ちた後時間をかけずに切り替えができるようになる」(同社プロダクトマーケティング バイスプレジデント 後藤堅一氏)とする。

▼開発中の2Moduleルーター

なお、同社はソフトバンクへのL2接続申し入れを2015年8月に行っており、2Moduleルーターの発売時には、バックアップ回線はソフトバンクSIMを使用できる見込みとしている。手続きの進捗については「守秘義務等もあり詳しくは言えないが、ボトルネックがあるようなら今日発表してないので、推察ください」(福田氏)と表現した。ソフトバンクへのL2接続が行われ次第、2SIMルーターのバックアップ回線についてもソフトバンクのSIMカードを選べるようにする。

2Moduleルーターでは、モジュールを交換することで3G以外に、LTE、LTE-Advancedなどにも対応可能。また、2Moduleルーターの次の段階として、同社子会社のアレクセオ(Arexceo)社の技術を用い、切断前のIPレイヤーの不安定な挙動を検知して切り替えを行う「2ModuleルータAdvanced」の開発を計画している。「セキュリティと信頼性と管理するAPIが重要だという認識のもと、IoT向け市場に対する取り組みを進めていく」(福田氏)とした。

▼Dual Network ルーターのロードマップ

 

【報道発表資料】
日本通信、ドコモ網とソフトバンク網での「2SIMルータ」を発表

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。

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