紙の本の覚醒

Traditional books awaken

2015.12.29

Updated by Mayumi Tanimoto on 12月 29, 2015, 09:43 am JST

年末です。読者の皆様がコミケで窒息していないことを祈念いたします。

私は今回のコミケは行けないのですが、尻が痛いので今年のクリスマスは嫁はやりませんと宣言し、積み木とベビースターラーメンが混在する中で、野上武先生のまりんこゆみ最新刊を読むという至福の時を過ごしております。

もちろん紙の本です。

クリスマスプレゼントの定番の一つは本なので、私のようにクリスマス時期にはゴロゴロしながらプレゼントの本を読む人も大勢いるわけですが、今年はちょっと異変がありました。

5年ぐらい前は電子書籍の登場で、紙の本は消える消えると言われており、クリスマス前にも電子書籍リーダーが大プッシュだったのですが、なんとここにきて、アメリカでもイギリスでも紙の本の売上が増えています。

アメリカの場合は、昨年電子書籍の売上は7.5%減る一方で、紙の本は8.9%のアップです。

イギリスの場合、Nielsen Bookscanによれば紙の本の売上は 2013年には8% ダウン、2014年には2%ダウンでしたが、2015年は5%アップです。

イギリスの最大手書籍チェーンのWaterstonesは電子書籍もデバイスも売上が思わしくないので、店頭でのKindle販売と取りやめる予定です。昨年のクリスマスには店頭でKindle大プッシュ状態だったので大方向転換です。

その代わりに、Waterstones以下、最近書店で目立つのが、コレクションとか贈呈用の豪華本であります。イギリスの場合その代表格はFolio Societyで、大手書店だけではなく有名デパートの書籍売り場でも美しい装丁の豪華本が大人気です。

以下はロンドンのSelfridgesの書籍売り場ですが、本棚に並べたくなる美本がドドンと並んでいます。

 

Upmarket_Book_01

 

Upmarket_book_02

クリスマスにプレゼントとして豪華本をもらい喜んでいる方

豪華本以外に今年紙の本で爆発的な人気だったのは「大人の塗り絵」です。

モコミチ真っ青のオリーブオイル使いで腹の出た中年オヤジになってしまったジェイミー・オリバー氏や、白昼堂々高級レストランで元夫と首を絞めあうという修羅場を演じた上に、元家政婦のイタリア人にコカイン吸引をバラされてしまったセレブシェフのナイジェラ・ローソン女史の料理本と一緒にAmazon UKのクリスマスベストセラーを独占しております。

スーパーでも売りはじめたのでソロソロ終わりなんじゃないかという意見もありますが、日本の「大人の塗り絵」よりも遥かに雑な塗り絵が、一冊1000-3000円ぐらいなのにも関わらずバンバン売れるというのは、イギリスも暇でしょうがないが、地域の奉仕活動を使用などとは一ミリも考えていない暴走老人が多い様です。

Screenshot 2015-12-29 00.23.22

ところでケーブルテレビ、スマホアプリなどの娯楽が日本よりも遥かに充実している上に、電子書籍も遥かに普及している英語圏で、紙の本の売上が増えつつあるというのは注目すべきです。紙の本が売れないのは他の娯楽のせいだ、電子書籍が悪いと言っていた方もいたわけですが。

イギリスの場合は、全書籍の売上の30%が電子で、フィクションの場合47%が電子です。つまり電子書籍を買うことが「普通の選択」です。

電子で買うのが当たり前になったからこそ、物理的な所有欲を刺激されるのでしょう。これは、音楽業界で最近レコードの売上が伸びている点も同じです。

電子媒体が普及すればするほど、コミケは大盛況になり、物理的な本、限定本屋グッズの入手、リアルな空間で人と会うこと、フェスやコンサートの価値が高まるのでしょう。書籍業界やデジタルコンテンツ業界はこの辺りをよく考えるべきかもしれません。

つまり、書店で売っている本は、所有欲も刺激されないし、面白くもないから売れないんでしょう。

 

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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