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KDDI研究所、世界初のAI活用したネットワーク自動運用システム実証に成功

2016.02.22

Updated by Asako Itagaki on February 22, 2016, 13:10 pm JST

KDDI研究所は、ウィンドリバー、日本ヒューレット・パッカード、ブロケード・コミュニケーションズ・システムと協力して、世界で初めて人工知能による故障予測に基づきネットワークを自動運用する実証に成功したことを発表した。成果の一部をMobile World Congress 2016で展示する。

今回の実証では、共通的なネットワーク仮想化基盤上にハードウェアやソフトウェアの深刻な障害の兆候を検知するAIを埋め込んだ。効率的に学習・状況判断すると共に、予兆結果にもとづきSDN/NFVオーケストレータが最適な復旧プランを導出し、自動で仮想化された機能を瞬時に移行させた。実証結果は、ソフトウエアバグなどの異常の兆候を9割以上の精度で事前に検知し、従来の約5倍の速度で仮想化された機能を別拠点などの安全な場所へ移行することに成功している。

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SDNやNFVなどのネットワーク仮想化技術は、重要設備の輻輳時の対応や、5Gに向けIoTや医療サービスなど多様化する要件に対応するための、ネットワーク柔軟性実現に不可欠な技術である。実用化には、特に障害対応が複雑化しないよう、運用の自動化が課題となっていた。

KDDI研究所では2015年5月にSDN/NFVオーケストレータと監視システムとを連携させ、発生した障害を自動的に復旧する運用自動化を実証。この成果を元にTMForumや ETSIといった国際標準化の検討を推進し、必要なインタフェースなどの標準化も進み始めている。

一方で、汎用サーバーやオープンソースプラットフォームの活用により、通常の監視や診断では予測困難なハードウェアの劣化やソフトウェアのバグなど、極めて稀に発生する事象を適切に捉え対応するための技術は十分に確立されていない。

AIを活用することで、こうした「稀ながらも一旦発生すると深刻な事態を引き起こす恐れのある事象」にも対応可能となる。

異常の兆候を精度高くとらえるための学習と分析を実現するために必要となる膨大な統計処理に対応するために、AIを分散させるというアプローチをとった。AIがとらえた兆候などの情報を統合管理制御システムに集約し、SDN/NFVオーケストレーターが代替機能によるサービス継続や当該機能の別拠点への移行など最適な復旧プランを導出し、自動実行する。

今後は、NFV/SDN運用技術はTMForumやETSIなどの標準化団体を通じて、共通仮想化基盤におけるAI活用はOPNFVやOpenStackなどのオープン実装団体を通じて、ネットワーク仮想化におけるインフラ基盤高度化に貢献するとしている。

【報道発表資料】
世界初!人工知能を活用したネットワーク自動運用システムの実証に成功 ~5G時代に向けた自動運用システムの実証成果をMobile World Congress 2016に出展~

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。