From left to right, T-Mobile CFO Braxton Carter, CEO John Legere and COO Mike Sievert report record customer numbers, higher revenue and a growing network during quarterly earnings from a new signature store in New York's Times Square, Wednesday, February 17, 2016. In Q4 the company reported 2.1 million total net customer additions, marking the 11th quarter in a row with more than 1 million additions.(Stuart Ramson/AP Images for T-Mobile)

絶好調なT-Mobile US、2015年は830万純増で米国3位確立、動画見放題の「Binge On」開始

2016.02.24

Updated by Hitoshi Sato on 2月 24, 2016, 15:34 pm JST

アメリカ3位の通信事業者T-Mobile USの勢いが止まらない。ソフトバンクが買収して傘下にしたSprintを加入者で逆転してからも加入者増が続いている。アメリカ通信事業者の上位2社のVerizon、AT&Tにはまだ届かないものの、3位の地位を確立している。

2015年通年で純増数830万人

そのT-Mobile USは2016年2月17日に2015年第4四半期(2015年10月~12月)の決算を発表した。2015年Q4の売上高は前年同期比1%増の82億4,700万ドル、純利益は前年同期から約3倍の2億9,700万ドルだった。2015年通年では純利益は7億3,300万ドルだった。純増数もポストペイドが約130万で、ソフトバンクが回復に自信を見せた4位のSprintの50万を大きく上回っている。

かつてアメリカ人で携帯電話を購入、契約をするときはAT&TかVerizonの大手2社が選択肢だったが、現在では多くのアメリカ人がT-Mobile USも検討対象になっている。実際にT-Mobile USの店舗には多くの顧客がいて、他社よりも活気があり明るい。

▼T-Mobile US加入純増数(2015年Q4と通年)
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▼2015年中の純増内訳推移
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(いずれもT-Mobile US発表資料を元に作成)

「Un-Carrier」プランという名の下に2013年3月から提供している様々な料金の割引プランやサービスを積極的に展開している。また同社のCEO のJohn Legere氏はトレードマークのピンクのTシャツを着て、発表会やテレビに出演しての派手なパフォーマンスでのプロモーション活動を行っている。

▼左からBraxton Carter氏(T-Mobile CFO)、John Legere氏、Mike Sievert氏(T-Mobile COO) (Stuart Ramson/AP Images for T-Mobile)
From left to right, T-Mobile CFO Braxton Carter, CEO John Legere and COO Mike Sievert report record customer numbers, higher revenue and a growing network during quarterly earnings from a new signature store in New York's Times Square, Wednesday, February 17, 2016. In Q4 the company reported 2.1 million total net customer additions, marking the 11th quarter in a row with more than 1 million additions.(Stuart Ramson/AP Images for T-Mobile)

次のUn-Carrierは動画見放題の「Binge On」

そして2015年11月10日から、T-Mobile USでは次なるUn-Carrierプランとして動画見放題の「Binge On」というサービスを提供開始した。これはユーザーが3GB以上のデータ通信の料金プランに加入している人であれば、Netflix、Hulu、HBO、Sling、ESPN、 Showtime、Starzなどの動画のパケット費用がかからないで視聴できる(Netflixなどの利用料金は別途必要)。

日本でもアメリカでもスマートフォンの急速な拡大に伴って、加入プランのパケット上限を超えてしまい、あっという間に「速度制限」に引っかかってしまう人が多いだろう。その要因は動画視聴だ。動画はデータ通信量が多いのであっという間に上限に達してしまう。

2016年1月末からT-Mobile USは「Binge On」によりAmazonビデオ、Fox News、Univision NOWの動画視聴もパケット費がかからなくなった。現在、「Binge On」では40以上の動画サービスの視聴がパケット費がかからずに視聴できる。そのため「Binge On」導入後3か月で、動画視聴が2倍以上に伸びた。ユーザーにとってはいつでもどこでも、安心して動画が見れるのは嬉しいことだ。今までは無料のWi-Fiエリアや自宅などで見ていた。通信網を利用していたら、あっという間にデータ通信費が嵩んでしまうからだ。

動画視聴を無料にすることによってユーザー数が増加すれば、それだけネットワークは逼迫してしまい、ユーザーの体感速度は下がってしまい、かえってユーザーの満足度は下がってしまいそうなものだが、今のところユーザーからネットワークについての不満の声は聞こえていないようだ。具体的にT-Mobile USが動画視聴サービスをパケット通信費をかけずに提供するネットワーク側の技術的な対策は明らかにしていない。それでもT-Mobile USは今でも自社が「ニューヨークで一番4Gが速い」という宣伝を出していることから、ネットワークには相当の自信があるのだろう。

▼「ニューヨークで最も速い」という宣伝をタイムズスクェアに掲げているT-Mobile
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▼「Binge On」について語るT-Mobile USのCEO のJohn Legere氏

T-Mobile USは上位2社のAT&TやVerizonに追いつこうと多くのプランを導入しており、それに上位2社が対抗しようとしている。「ネットワークが改善した」と今頃になって自信を見せているSprintよりもサービスもネットワークにおいても、2歩も3歩も先を行っている。もはやT-Mobile USにとってSprintは敵でもない。

5Gトライアルも見えているT-Mobile USだが……

そしてT-Mobile USは2016年中にエリクソン、ノキアと提携して5Gのトライアルを開始することを明らかにした。ライバルのVerizonは既に5Gの試験を行っている。だがT-Mobile USだけでなく他の通信事業者も、まだ4Gのネットワークに投資した費用の回収も終わっていない。

にもかかわらず、技術だけが先行して、次の5Gの投資を検討しなくてはならない。自社だけが最先端の技術に乗り遅れるわけにはいかない。機器メーカーは新たな技術が出てくるたびに儲かるだろうが、もはや通信事業者にとっては資金力のある会社だけが生き残っていける「体力勝負」となってしまう。その5Gへの投資資金は、ユーザーからの毎月の利用料金だ。そのためには「いかに現在の顧客を囲い込んで、さらに新たな顧客を獲得する」かが重要になってくる。動画視聴でパケット通信費がかからないことを特徴としたサービスにおいて、体感速度が遅くなり、ユーザーからのクレームが多発して、自社から離れられてしまっては、T-Mobile USとしては重要な「次の資金源」が無くなってしまう。現在の顧客にも満足がいくサービスを提供しながら、次の投資も検討しなくてはならない。

これからもT-Mobile USだけでなく多くの通信事業者は様々なサービスや料金プランを提供してくることだろう。

【参照情報】
T-MOBILE ADDS CUSTOMERS IN RECORD NUMBERS FOR SECOND STRAIGHT YEAR WHILE LEADING THE INDUSTRY IN SERVICE REVENUE AND ADJUSTED EBITDA GROWTH
Quarterly Results
T-Mobile Unleashes Mobile Video with Binge On™
Binge On | Video Streaming without Using Your 4G LTE Data | T-Mobile
After blasting Verizon's 5G statements, T-Mobile announces 5G trials with Nokia, Ericsson later this year

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。

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