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ウェブをAI化する?!セマンティック技術をテーマにした国際会議が秋に神戸で開催

2016.03.16

Updated by Yuko Nonoshita on March 16, 2016, 17:40 pm JST

今年10月17日から神戸国際会議場で、セマンティックウェブとLinked Dataに関する国際会議ISWC 2016(International Semantic Web Conference)が開催される。

WWWの発案者であるティム・バーナーズ=リー氏が提案するセマンティックウェブをテーマに、次世代ウェブ技術に関する世界トップの研究、開発者らが参加する国際会議として2002年にはじまったものだが、最近では取り上げられるテーマが、ビッグデータやAI、IoTなどへと広がっている。参加者は学術系の専門家が中心だが、GoogleやIBMなどこれまで企業スポンサーとしていた企業からの発表も増える傾向にあり、12年ぶりの開催となる日本でどのような発表が行われるか注目が集まっている。

ここでは、3月5日に全世界同時に実施された International Open Data Day(以下IODD)<http://opendataday.org/>にあわせて、神戸で開催されたイベント「ISWC 2016 KOBE 連携イベント International Open Data Day 2016 神戸」の内容からISWCに関する話題をとりあげて紹介する。

▼次世代ウェブ技術に関する世界的な国際会議が12年ぶりに神戸で開催される。
WWN_ISWC01

本イベントの講師役は国立情報学研究所の大向一輝氏が務め、IODD関連のイベントであったことから、オープンデータの視点からセマンティックウェブの解説が行われた。それによるとセマンティックウェブは、オープンデータで推奨されているRDF形式のデータがベースになっており、情報の意味をコンピュータが理解できるように、たとえば場所に関する情報の場合は、名称や緯度・経度といった属性データを文字列や数値で追加できる構造になっている。RDFの形式や記述フォーマットはW3Cが標準化を行っている。大量のRDFデータから条件を指定して必要な情報を取り出すためのSPARQLという言語もW3Cで標準化されており、オープンソースのSPARQL対応データベース(RDFストア)もウェブ上に公開されている。

データの中に読み出しに必要なルールが記述されているので、容易に情報を取り出すことができ、APIも作りやすいなどのメリットがある。WikipediaをRDF化するDBpediaというプロジェクトもあり、それらをIBMやGoogleらが情報基盤として活用していることが知られている。このように、RDFでデータを公開しSPARQLに対応したサイトが世界中で増えており、バーナーズ=リー氏が目指した、ウェブ全体があたかもAIの基盤となり、情報を探す人の意図を理解して適切な情報を提示できるようになることが実現に近づきつつある。

▼セマンティックウェブで使われるデータの構造を解説する国立情報学研究所の大向一輝氏
WWN_ISWC02
▼RDFやSPARQLでつながるウェブの広がりを可視化した図
WWN_ISWC03

ISWCはセマンティックウェブを実現するための最先端の技術が発表され、議論が行われる場であり、昨年アメリカのベツレヘムで開催された国際会議には36カ国から450名以上が参加した。プログラムは通常の国際会議と同じく、学術系の発表やポスターセッションなどで、研究論文の採択率は2割程度と狭き門だが、ポスターやデモの発表が100件近くあり、ビジネスでの実用化や利用事例も発表される。昨年は検索効率化のアルゴリズムやデータ解析に関するテーマが取り上げられ、参加した大向氏は、ナレッジマネジメントの実用化事例やRDFストアの大規模化や高速化に関する研究発表が興味深かったという。

▼昨年アメリカで開催されたISWC2015とその主な発表内容

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他にも、「Semantic Web Challenge」というRDF形式のデータを活用したアプリ開発コンテストも開催されている。昨年最優秀賞に選ばれたミラノ万博参加者向けの情報サイト「ExplorMI 360」は、内部のデータをすべてRDFで管理するとともに、スマホを使うと位置情報と連動して情報を自動で表示するなど、UIも含めて完成度が高い点が評価された。

▼アプリ開発コンテストで最優秀賞を受賞した「ExplorMI 360」
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ISWCは国際会議だけに参加のハードルは高そうだが、ポスターセッションやデモ、アプリコンテストは、学術関係者以外でも参加でき、世界から注目を集めるまたとない機会となる。今回のIODDのイベントでは、神戸からも何らかの形でISWCに参加するための意見交換が行われ、地域によるオープンデータの取り組みの発表や、参加者に配布するアプリ開発、関連イベントなどが開催できないかといった、さまざまなアイデアが出された。

現在は発表の受付中で、プログラムの詳細はまだ発表されていない。だがいずれにしても、ISWCは今後のウェブ開発にとって重要な話題が交わされる場であるのは間違いなく、関係者は会議の動向を注目しておくべきだろう。

なお、ISWC2015の発表内容について興味がある方は、昨年末に東京で「ISWC2016キックオフ」というイベントのサイトに関連資料が公開されているのでそちらを参照してほしい。

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野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。