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[2016年第25週]5Gの「ネットワークスライシング」実験成功、おままごともPM2.5センサーもスマートデバイス連携
2016.06.21
Updated by Naohisa Iwamoto on June 21, 2016, 11:42 am JST
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2016.06.21
Updated by Naohisa Iwamoto on June 21, 2016, 11:42 am JST
5Gのネットワークを支える中心的な技術の1つと目される「ネットワークスライシング」が、NTTドコモとエリクソンの実証実験の成功で一歩実用化に前進した。面白いニュースとしては、次世代型おままごとの開発という発表もあった。おままごともスマートデバイスと連携して、IoTデバイスへと変化していく可能性がありそうだ。
NTTドコモとエリクソンは、第5世代移動通信システム(5G)の実現に向けた要素技術の1つである「ネットワークスライシング」の実証実験に成功したと発表した。6月9日にスウェーデンのエリクソンの施設で実証実験を行い、複数のサービスを1つのネットワークに収容することに成功したという。ドコモとエリクソンの実証実験では、複数のネットワークスライスを提供するだけでなく、サービスの要求条件に基づいて自律的に最適なネットワークスライスを選択したり、作成したりする機能を追加した。この機能によって、複数の異なるサービスを最適なネットワークスライスを通じて提供することに成功した(関連記事:ドコモとエリクソン、5Gに向けた「ネットワークスライシング」の実証実験に成功)。
エリクソン・ジャパンは、報道機関向けに「様々なユースケースに活用できるNB-IoT」と題した説明会を開催し、モバイル通信サービスを活用した「セルラーIoT」の動向などを説明した。その中で、エリクソンが2016年6月に公開した最新のモビリティレポートでは、IoT関連デバイスの数は、2018年にはスマートフォンの数を抜き、2021年にはコネクテッドデバイスの56%がIoT関連になると予測し、NB-IoTをはじめとするセルラーIoTの重要性が一層高まることを示した。
また3GPPでは、セルラーIoT技術の標準化が進められており、そのうちの1つのCat-M1の標準化作業は終了し、もう1つのNB-IoT(Cat-NB1)は最終の作業が進んでいるとの説明があった(関連記事:NB-IoTやCat-M1、3GPPで標準化進む「セルラーIoT」の現状をエリクソンが解説)。
5Gの標準化は、機器を製造する際の計測・テストの業界にも影響を及ぼすことになりそうだ。日本ナショナルインスツルメンツは、「スマートデバイス向けテストシステム」に関する記者説明会を開催した。
計測・テスト業界には、IoTやスマートデバイスの普及により大きな変化が訪れているという。さらに、5Gでは、高速化、大量デバイスへの対応、低遅延・高信頼化といった要件があり、これらに対応するためにも計測・テストのソリューションは変化が求められていると説明する(関連記事:IoTやスマートデバイス、5Gの進展が、計測・テスト業界にも変化を促す--日本NI)。
スマートデバイスがIoT機器などを介して生活に関わることが多くなってきた。この週は、身近な生活にICTが連携するようなトピックがいくつかあった。KDDIは、コミュニケーションの未来を創造することを目的とした「au未来研究所」のコンセプトモデルとして、次世代型おままごとキット「ままデジ」を開発した。キリンをコラボレーションパートナーとして迎えて開発したもの。センサーやタブレットと連携することで、包丁で切ると「ザクッ」という音が、フライパンで炒めるときは「ジュージュー」という音がするほか、匂いなどの再現もすることで、本当に料理をしているような擬似体験ができる(報道発表資料:「au未来研究所」次世代型おままごとキット「ままデジ」を開発)。
もう少し、リアルな生活に近いIoTデバイスの発表もあった。ラトックシステムは、PM2.5/PM10を計測しスマートフォン・タブレットの画面で確認できるほこりセンサー「REX-BTPM25」を発売する。REX-BTPM25は、大気中を浮遊している花粉・ハウスダスト・タバコの煙などの飛散量を計測するPM2.5対応のほこりセンサー。 PM2.5/PM10を選別し計測するセンサーと、温度・湿度、照度、気圧を計測する各センサーを搭載し、計測データはスマートフォンまたはタブレットで確認できる(報道発表資料:空気中を浮遊する粒子の飛散量を数値化してスマホに表示!PM2.5対応 Bluetooth ほこりセンサー 6月下旬出荷開始)。
健康増進にスマートデバイスを活用する動きが本格化。KDDIは、セルフ健康チェックサービス「スマホdeドック」が2016年度(平成28年度)保健事業として、全国27市区町村・2協会けんぽ・2健康保険組合により提供されることを発表した。2016年度は有償提供とした上で各保険者を対象に募集したところ、前述の31団体が参画することになった。主な自治体は、神奈川県鎌倉市、岐阜県関市、滋賀県大津市、滋賀県東近江市、大阪府門真市、石川県小松市、大分県国東市などだ(関連記事:KDDIの「スマホdeドック」、今年度の有償事業化でも自治体など31団体が参画へ)。
MM総研は、国内MVNO市場の2016年3月末実績の調査結果を発表した。いわゆる格安SIMなどの「独自サービス型SIM」は、回線契約数が前年比65.5%と急成長し、539万4000回線にまで増加した。独自サービス型SIMの事業者シェアは、1位がOCN モバイル ONEなどを提供するNTTコミュニケーションズ。2位がIIJmio、BIC SIMなどを提供するインターネットイニシアティブ(IIJ)、以下楽天(楽天モバイル)、U-NEXT(U-mobileなどを)、ビッグローブ(BIGLOBE SIMなど)、ケイ・オプティコム(mineo)と続く(関連記事:独自サービス型SIMは前年比65.5%の急増--MM総研のMVNO市場調査)。
MMD研究所は、格安SIMの音声通話プランを利用している15歳以上の男女891人を対象に「格安SIM利用者の音声通話利用に関する調査」を実施した。回答者に、よく利用している通話手段を聞いたところ、「通常の電話」が71.0%と最も多く、次いで「チャットアプリの通話利用」が39.7%、「通話割引電話アプリ」が23.9%、「050IP電話アプリ」が22.6%だった。利用している通話手段での1回当たりの通話時間を聞いたところ、どの手段でも「3分以内」という回答が最も多かった。また、主な通話先について聞いたところ、通常の電話、チャットアプリでの通話、通話割引電話アプリでは、「家族」との通話が最も多く、050IP電話アプリでは「友人」との通話が最も多いという違いが表れた(報道発表資料:格安SIM利用者の音声通話利用に関する調査)。
MVNO関連のトピックをもう1つ見ていこう。日本通信は、外国人旅行者向け日本旅行情報サイト「JapanTravel.com」を運営するジャパン・トラベルと、訪日旅行者向けのサービスづくりに関して協業することで合意した。12言語で展開し、外国人によって外国人目線で書かれた地域密着型の記事とユニークなコミュニティを持つJapanTravel.comと、訪日旅行者向けSIMカードを提供するなど通信環境の整備に注力してきた日本通信が協業することで、外国人旅行者がインターネットを利活用して日本滞在を楽しめる新たなサービスを企画・検討するという(報道発表資料:日本通信、新戦略プロジェクト:訪日旅行客向けサイトの革新者、ジャパン・トラベルと協業)。
その他のトピックを2つ紹介する。1つは、6月9日に記者発表されたICTビジネス研究会(事務局:テレコムサービス協会)の「ICT女子プロジェクト」について。プロジェクト中で募集されていた「ICT48」の募集要項などが多くの批判を受け、現在サイトは一時的に閉鎖されている。
なぜこのような企画が行われるに至ったのか、なぜ炎上したのか、今後はどうすべきかについて、考察した記事を公開した(関連記事:「ICT女子」のための「ICT女子プロジェクト」へ -炎上の原因と目指すべき方向性を考える)。
もう1つは、iPhoneを買いやすくするキャンペーン。KDDIは6月17日に、初めて「iPhone」を購入するユーザーを対象にして月額1980円からと利用しやすい料金を提案する「iPhone SE イチキュッパキャンペーン」の提供を開始する。具体的には、「スーパーカケホ」と「データ定額1」を契約したユーザーを対象として、月額1986円を最大2年間割引します。「auスマートバリュー」を適用すればさらに毎月934円が割り引かれ、最大2年間は月額1980円からの低料金で利用できる。キャンペーンは、8月31日まで(報道発表資料:iPhone SEとデータ定額1で月額1,980円から!「iPhone SE イチキュッパキャンペーン」開始)。
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