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ローカル5G/プライベートLTEはどう使われている? グローバルの今を知る

2021.12.15

Updated by Naohisa Iwamoto on December 15, 2021, 10:00 am JST

「ローカル5G」や「プライベートLTE」は、世界の現場でビジネスに貢献している。ノキアが主催するウェブイベント「Nokia Local 5G Advanced Use Cases」(2021年11月18日にオンライン開催)では、ノキアのグローバルエキスパートがライブでローカル5Gとその前段に位置するプライベートLTEの今についてディスカッションした。

Wi-Fiとローカル5Gの違いは「信頼性」「レイテンシ」

ディスカッションのセッションには、ベル研究所コンサルティング シニアパートナー&戦略アドバイザーのケニス・C・ブッカ博士、ノキアUSから製造・物流マーケティング・ディレクターのデーブ・ナウシアット氏、ノキアドイツから流通(物流、海運)ソリューション・ディレクターのベンキー・ラマクリシュナン氏が登壇した。モデレーターはノキアソリューションズ&ネットワークス 最高技術責任者CTOの柳橋達也氏が務めた。

まず各登壇者からプレゼンテーションがあった。ベル研究所のブッカ博士は、「ローカル5Gの技術は、高いレベルの産業用のオートメーションに対して価値をもたらすか? それを理解するため、Wi-Fiとローカル5Gの比較をしてみたい。Wi-Fiは素晴らしい技術だが、重要なことは用途が“産業”であることだ。QoSについてアプリケーションやサービスからネットワークへの要求のレベルが高い」と切り出した。

▼5Gのネットワークが提供する価値は幅広い(ベル研究所のケニス・C・ブッカ博士のプレゼンテーションから)

産業用のネットワークでは、同じネットワークでコントロールアプリケーション、ビデオのアプリケーションなど、複数のタイプのアプリケーションをサポートできることが求められる。さらに、信頼性も重要であり「産業用の環境では、信号が来ないということは製造プロセスに直接影響を与える。カバレッジもWi-Fiとローカル5Gで、かなり違う。ローカル5Gはライセンスを取った帯域を用いることがメリットになる」(ブッカ博士)と違いを説明する。

ノキアUSのナウシアット氏は、製造・物流マーケティング・ディレクターという立場から、産業用オートメーションにおけるプライベートLTE/ローカル5Gと、Wi-Fiとの比較をした。「インダストリー4.0を実現するにはいくつかの要件がある。キャパシティーとスケーラビリティでは、同時に接続できる台数と、アクセスポイントごとの接続数が求められる。QoSの観点では、Wi-Fiはベストエフォートだが、プライベートLTEとローカル5GはQoSを担保できる。これは決定論的な違いだ。さらにモビリティの要件では、Wi-Fiは歩行者程度の移動速度にしか追従できないが、プライベートLTEやローカル5Gは高いモビリティ性能を持っている」(ナウシアット氏)。工場の中で多くのモバイル端末を導入し、移動しながら通信するといった用途での信頼性を考えると、プライベートLTE/ローカル5Gの位置付けがわかるとの指摘だ。

さらに、レイテンシの観点でも、制御などに用いるマシンツーマシンの接続ではラウンドトリップタイムを少なくすることが求められる。ローカル5Gはミリ秒単位の遅延で安定した接続を担保できるが、Wi-Fiではレイテンシの担保ができないことを説明した。実際にネットワークに負荷を与えた実験では、「プライベートLTEでは負荷がかかっても100ミリ秒以下のレイテンシだが、Wi-Fiは負荷が大きくなると秒単位のレイテンシが発生する」(ナウシアット氏)と、プライベートLTEとWi-Fiの比較をし、プライベートLTEよりもレイテンシを抑えられるローカル5Gの優位性をアピールした。

▼ワイヤレス通信技術のパフォーマンス比較(ノキアUSのデーブ・ナウシアット氏のプレゼンテーションから)

ノキアドイツで流通ソリューションのディレクターを務めるラマクリシュナン氏は、過酷な環境下の屋外での事例として港湾のユースケースを紹介した。港湾でワイヤレス通信にプライベートLTE/ローカル5Gを導入する要因は3つあるとの指摘だ。

「1つは古い技術からの移行で、音声通信からデータ通信まで様々な技術を利用していたものを、プライベートLTE/ローカル5Gならば1つの技術ですべてまとめて提供できることだ。2つ目は信頼性の面で、QoSが求められる。自動搬送ロボットなどが重要な資産を運んでいるため、ネットワークが切れることは許されない。3つ目はTCO(総保有コスト)の側面。過酷な屋外環境で安定した通信を実現するには、Wi-Fiだと多くのアクセスポイントを設置して運用しなければならない。プライベートLTEやローカル5Gならば、少ない基地局で広い屋外エリアをカバーでき、TCOを引き下げられる」(ラマクリシュナン氏)。

DXの実現にローカル5Gが果たす役割

セッションの後半は、日本のノキアからCTOの柳橋達也氏が加わり、ディスカッションを進めた。柳橋氏は「最初の質問は、新しいユースケースを作るときにプライベートLTE/ローカル5GはWi-Fiの必要性をなくしてしまうのか?ということ」と問いかけた。

ブッカ博士はこれに「ユースケースとテクノロジーの話がある。多くのユースケースの中には、Wi-Fiが適用しているものがある。非常に高い信頼性やモビリティ、レイテンシが必要なければ、Wi-Fiはたくさんのアプリケーションで利用し続けられる。両方使っているところもある。鉱山の顧客ではプライベートLTEで制御や自動化をする一方で、Wi-Fiで統計情報をダウンロードしたりしている。遅延や信頼性に高い性能が不要ならWi-Fiも機能する」と答えた。

ナウシアット氏も、「Wi-Fは今後も製造業のオペレーションで使われていく。Wi-Fiは、リアルタイムのパフォーマンスや低遅延を要求しないような、ふさわしいアプリケーションで使っていくことが大事だ。一方で、Wi-FiからプライベートLTE、ローカル5Gに取って代わるところもある。よりよいパフォーマンス、制御が求められるアプリケーション、時間にこだわるアプリ、正確にコントロールする信頼性の高さを求めるアプリなどであり、それを強化したい場合にはローカル5Gが必要になる」と応じた。

次いで柳橋氏は、「プライベートLTE/ローカル5Gでは、インドア、アウトドアなどユースケースが掲げられている。すでに可能なのか、今ある技術でできるのか」と質問した。

これにはまずラマクリシュナン氏が、「DXを加速するのは、今だと思う。多くの業界にもこの傾向が出てきている。そこではプライベートLTEやローカル5Gが価値を提供する。北米、南米、中東、ヨーロッパ、アジアなどでは企業向けのプライベートな周波数帯域が提供されている」と答えた。

ナウシアット氏は、プライベートLTEの事例として、「アリババなどの物流センターにノキアのソリューションを納入している。AGV(無人搬送車)が倉庫の中を動き回るようなユースケースで、低遅延、接続性の要件を満足させた。製造業では、屋外のアプリケーションでの導入が進んでいる。プロセス業では、金属による干渉があるとWi-Fiは適切でない。屋外用アプリケーションの干渉が発生してしまうため、プライベートLTEの導入が進んでいる」と語る。

ラマクリシュナン氏は、「将来のユースケースへの討議も始まっている。現在プライベートLTEで構築したネットワークをローカル5Gにアップグレードする投資が必用かといった議論だ。超低遅延や大量のIoTデバイスを接続してデジタルツインを作るといったマーケットでは、ローカル5Gへの志向が高まっている」と補足した。

▼港湾のプライベートLTE/ローカル5Gソリューションで得られる価値(ノキアドイツのベンキー・ラマクリシュナン氏のプレゼンテーションから)

さらに柳橋氏は、ブッカ博士に向けて、「DXは、すべての業界で同時に起きるのか? それとも一部が先行するのか?」と問いかけた。ブッカ博士は、「さまざまなドライバーがあると思う。大きな点は、法人や企業がどの程度デジタル化しているか、ビジネスプロセスをIT化しているのかにある。もちろん地域別の特性もある。そうした中で、安全性、効率性、生産性によるゲインが高いところではDXが先行する傾向がある。製造業はデジタル化を推進していて、安全性や効率性、生産性のゲインが高い。ノキアのオウル工場でローカル5Gの導入が進められているのもこうした理由だ」と語る。さらに、教育、小売、医療、物流などの業界でもDXが進み、ローカル5G導入への考えが進んできていると説明する。

ナウシアット氏は、「プライベートLTEはすでにエコシステムが成熟していて、技術について理解して採用しやすい。一方で、ローカル5Gはまだテクノロジーについて理解してもらう時間が必用なことも確かだ。ノキアがオートメーションのプランを手伝いながら、テストをしていくうちに技術についてもユーザー企業に精通していってもらい、最終的にローカル5Gで実装していくことになるだろう。それだけに、パートナー、システムインテグレーターと協力して、コミュニティーを作っていくことが大事ではないかと思う」と語った。

柳橋氏は、「DXはまさに起きている。それは日本だけでなく、グローバルのマーケットでも起きていることだ。プライベートLTE/ローカル5Gのプライベートワイヤレスを導入することで、オペレーションやマネジメントの課題についてコネクティビティの観点から統合していけるソリューションを提供していく。これからもデジタルオートメーションクラウドで、ユーザーが主要なビジネスに注力できる環境を支援していきたい」とまとめて、ディスカッションを終えた。

デジタル化によるビジネス価値とは

イベントの最後に、ノキアソリューションズ&ネットワークス 執行役員 エンタープライズ統轄のドニー・ヤンセンス氏が、インダストリー4.0とノキアの取り組みの関係について説明した。

「私たちは、インダストリー4.0の道のりのどの辺りに位置しているか。生産性、機敏性、効率性の向上といった目標は今も有効だ。しかしコロナ禍によって必須項目が変化している。デジタル化は優先事項だが、デジタル化だけ推進していれば良いということではなくなった。インダストリー4.0の新しい目標として、レジリエンスが掲げられるようになった。生産性や効率向上だけでなく、ビジネスを強固で機敏にして、次にどんな危機が来ても対応できるようにする必要がある。持続可能性と、限りある資源を守り保護することに、ビジネスモデルをシフトするとともに害を及ぼさないことも求められる」。

レジリエントな活動への取り組みとして、ノキアはモバイルネットワークで世界の数十億人をつなぎ、業界に合わせたソリューションを提供し、インダストリー4.0の実現に貢献しているとヤンセンス氏は語る。そこにはローカル5Gを含めた5Gの通信ネットワークを提供する先駆的な役割を果たしていることの意味も含まれる。

▼ノキアはプライベートワイヤレスネットワークでリーダーの位置に立つ(キアソリューションズ&ネットワークスのドニー・ヤンセンス氏のプレゼンテーションから)

一方で、ヤンセンス氏は、「インダストリー4.0の実現はノキア1社ではなし得ない。産業界のエコシステムパートナーと手を組み、現場の知見からソリューションを導入することが必用だ」と、ノキアとパートナーとの協業がインダストリー4.0を支えると語る。「ノキアはプライベートLTEやローカル5Gのプライベートワイヤレスソリューションで世界のリーダーを自認している。2021年10月末で380社以上がノキアのプライベートワイヤレスソリューションを利用している。安全性、自動化、効率性、生産性など、目的に特化したソリューションを提供することで、未来のビジョンを加速してくれる」(ヤンセンス氏)とイベントを締めくくった。

【資料請求】
このイベントの講演資料はダウンロード提供が可能です。
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担当:シニア事業開発マネジャー 岡崎 ご連絡はこちらから
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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。