世界中からの移民労働者や観光客へプリペイドSIM販売をする香港の移民たち
2016.07.13
Updated by Hitoshi Sato on July 13, 2016, 15:42 pm JST
2016.07.13
Updated by Hitoshi Sato on July 13, 2016, 15:42 pm JST
香港は以前から人種の坩堝だ。特に最近は中東からの移民労働者も多い。尖沙咀には中国系以外に、アフリカ系、インド系、アラブ系、中東系、北アフリカ系の移民が大量にいる。昼間から歩道にたくさんいるが、もともと香港は人種の坩堝なので、それほど目立つというわけでもない。
彼らはいろいろな仕事をしている。街行く人に声をかけて、お店を紹介したり、荷物を持ってくれたりする。彼らは毎日歩道に出て、歩行者を見て声をかけているので、誰が何人かをほぼ正確にわかるようだ。香港の地元の人、中国人、台湾人、韓国人、日本人の区別もつくようで、日本人にはしっかり日本語で話しかけてくる(もっとも、日本人の多くはそのような移民労働者の声に耳を傾けないから、彼らにとってあまり「いい客」ではないようだ)。
そのような移民の彼らがやっている仕事のひとつにプリペイドSIM販売がある。尖沙咀の一角にあるアーケードの中には、多くのプリペイドSIM販売の店がある。プリペイドSIMと一緒に中古の携帯電話やスマホも売っている。また香港にいる移民労働者向けにバングラディッシュやマレーシア、パキスタンなどそれぞれの母国との安い通話ができる料金プランのプリペイドSIMもたくさん販売しており、香港にいる移民労働者でごった返している。本当に人種の坩堝である。何語で話しているのかも不明だ。
かつては地元の香港人や移民労働者が一番のお客様だったそうだが、スマホの世界規模での普及によって最近では観光客も多くプリペイドSIMを購入しているようだ。そして日本人も多く利用しているそうだ。ガラケーの時代は日本人はSIMの差し替えには慣れていなかったが、スマホの普及によって日本人でも海外でローミングをして多額の請求をされるよりも、現地でプリペイドSIMを購入してスマホを利用している人も多いのだろう。たしかに最近では通信事業者が1日使い放題のローミングプランを1日3,000円くらいから提供したり、日本で借りられるWi-Fiルーターなども充実しているが、それでも現地のプリペイドSIMの方が圧倒的に安い。プランも通信事業者によってたくさんある。
香港ではWi-Fiもカフェやレストランなどに行けば、ほとんどの店舗で無料で利用が可能で、だいぶ普及してきたが、それでもまだ店舗などに限られている。町歩きやショッピングをしている際にちょっとネットにアクセスするためにスマホを利用するにはプリペイドのSIMの方が安くて便利だ。
プリペイド分がなくなったら、チャージしないで次のSIMを購入した方が早くて効率的である。現地通信事業者3(Three)が提供している「2Day-Pass」は2日間利用可能で38香港ドル(約600円)やCSLは「5Day-Pass」5日間利用可能で88香港ドル(約1320円)などデータ通信が使い放題のプランもあるのでリチャージが不要なことも多い(中国では8は縁起がいいから、8で終わる値段が多い)。
プリペイドSIMカードを購入しても決してぼったくられることはないし、スマホに挿入して設定が必要な箇所は対応してくれる。日本人は日本でプリペイドのSIMの抜き差しをすることには慣れていないので、こういう対応は案外助かる。自動販売機のSIM販売機よりもむしろフレンドリーな印象だ。近寄りがたい雰囲気のある店だが、プリペイドSIMの購入だけなら問題なかった。もちろん、このような店でプリペイドSIMを購入するのが不安という人は香港の空港に到着すると、多くの通信事業者の店舗があるのでそこで購入してもいい。
数日だけの滞在なら日本の通信事業者の提供するローミングプランやレンタルWi-Fiでもいいだろうが、香港で通信費を安く済ませたい方はプリペイドSIMを試してみてはいかがだろうか。
▼様々なプリペイドSIMを販売している移民の店
▼中古携帯電話やスマホも販売しているので、SIMと一緒に購入してもよい。
▼アーケードの中はどこの国かわからない。ハラル食品や料理の店も多く、香港にいる移民らのミーティングポイントになっている。決して治安は悪くないが声をかけられるのが嫌な人は行かない方がいいだろう。彼らも商売熱心なだけでぼったくりはしない。
おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)
登録はこちら2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。