画像はイメージです original image: © Brian Jackson - Fotolia.com
ロンドン警視庁トップの発言「警察官が走行中の車を遠隔操作できる世界」は実現するか?
2016.10.21
Updated by Kenji Nobukuni on October 21, 2016, 17:04 pm JST
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2016.10.21
Updated by Kenji Nobukuni on October 21, 2016, 17:04 pm JST
「止まれ!」と言われて止まる泥棒はいない。映画やドラマの中であれば、警官はしばらく走って追いかけ、止まらない悪い奴の背中に拳銃で狙いをつける。逃亡者が自動車に乗ってしまったら、タイヤや窓を狙って拳銃をぶっ放す。さらに民間人の乗用車を刑事が強奪して、繁華街でカーチェイスが始まることになる。
だが現実世界では、市民を巻き添えにしたり、いろいろなものを破壊するわけにはいかない。どこの国であっても、警察官たちは被疑者の身柄を確保するに当たって、ずっと苦労しているに違いない。「待て!」か「止まれ!」と叫ぶしかないのだ。
さて、ロンドン警視庁のサー・バーナード・ホーガン・ハウ警視総監は、9月22日にロンドン議会の警察・犯罪対策委員会で、以下のような発言をしている。
「目の前の自動車のスピードを落とすことができる装置を我々警察官が持つようになるというのが理想的だ。自動車の電気制御に介入する方法があればいいのだ。そうしたものを開発するなんて、突拍子もなく聞こえるかもしれないが、現在の自動車には電子的な頭脳がたくさん搭載されているのだから、目の前の車のスピードを安全に落とすことができるはずだ。今、そうした装置が存在するとは言えないが」
つまり、警察官が遠隔操作で、走っている自動車を停止させることができるようになればいいという発言だ。
警視総監の発言よりも2年半前には、EUでも警察が遠隔で自動車を止めてしまえるようにする計画があると報道されたことがあった。
自動運転車が具体化しつつある現在、「007」の映画さながらに、自動車を遠隔で操作することは容易なことになっている。一般の消費者もキーレスエントリーや、カーナビの音声制御で、自動車が「止まれ!」とコマンドを送れば遠隔で停まってくれそうなマシーンであることは今や実感している。
今年の2月に、大阪の繁華街で、運転者が走行中に心臓疾患を発症して意識を失った車が暴走し、死傷者合わせて11人という痛ましい事故となったのは記憶に新しいが、日本国内だけでも運転手の急病や発作が原因の事故は年間200件以上発生している。居合わせた警察官が動きの怪しくなった車を遠隔操縦で停止させられれば、もしかしたら事故は防げたかもしれない。そう考えた人は少なくないのではないだろうか。
こんなソリューションが、技術的には可能になりつつある。だが実現には、法整備と規制と自動車メーカーの協力が必要となるはずである。もちろん、車を利用するドライバーとなる一般市民が感情と利便性のバランスをどう判断するかも重要なファクターになる。ほとんどの市民は、「危険な車を停めたり、悪いやつを安全に捕まえてくれるのはありがたいが、自分の運転する車が遠隔停車させられるのは愉快なことではなさそうだ」と思うだろう。
しかし、他車や交通システムと情報交換しつつ走行する安全第一で走行する自動運転車はもはや「運転者(乗車している人の中で、行先を指示する人間をそう呼ぶのであれば)」の意思のみでその動きを決められないことが前提になる。そうなった時、秩序を守る警察官もまたシステムの一部として組み込まれ、狙った車を遠隔停車させることは「当然の仕組み」となる可能性が高そうだ。
もっとも、そんな「安全な自動運転車」を泥棒が逃走手段として選ぶかどうかは、はなはだ疑問だが。
【参照情報】
・I want to remotely disable Londoners' cars, says Met's top cop
・London police chief wants to be able to stop your car remotely
・How police could soon be able to turn cars off remotely 'at the flick of a switch' under secret new EU plans
・運転中の急病・発作原因の事故、26年209件も…専門家「誰にでも起こる」
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