画像はイメージです original image: © Uli-B - Fotolia.com
インテル、自動運転関連の新部門を設立 - デルファイとモビルアイの取り組みにSoC提供
2016.12.01
Updated by Hayashi Sakawa on December 1, 2016, 08:55 am JST
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2016.12.01
Updated by Hayashi Sakawa on December 1, 2016, 08:55 am JST
米国時間29日にインテルの自動運転関連のニュースが2つ出ていた。ひとつは「Automated Driving Group(ADG)」という新しい事業部門を設立したという話、もうひとつはデルファイ(Delphi)とモビルアイ(Mobileye)が共同で進める取り組みにインテルのプロセッサ(SoC)を採用することになったという話である。
インテルが今年7月にBMW、モビルアイと協力して自動運転車に必要な技術の開発を進め、2021年をメドにこれを実現させると発表していたことは既報の通り。また同社が同分野への本格参入の準備を進めているという話も以前に少し触れていた通り。なので今回の発表もさほど意外なものとは感じられないが、インテルがこれまでIoTという括りというなかで進めていた自動運転関連の取り組みを新部門として独立させたというのは、同社のこの分野に対する力の入れようが伝わってくるようで興味深い。
今回のニュースでまず目を引いたのは、キャシー・ウィンター(Kathy Winter)という女性幹部の起用(同氏の肩書きはAutomated Solutions Division (ASD) という部門のVP兼ゼネラルマネージャー)。この人は、デルファイが昨年行った自動運転車の北米大陸横断走行のプロジェクトを成功させたことで業界内で名前を知られるようになった人物らしい。LinkedInのプロフィールをみると今年8月にインテルに加入とある。
このウィンターも登場しているEETimesのインタビュー記事(クアルコムによるNXP買収合意の発表があった11月上旬に公開されていたもの)からは、インテルがこの分野に総力戦で臨もうとしている様子が伝わってくる。総力戦というのは、車載のシステムだけでなく、クラウド(データセンター)や、5G通信を活用する車車間・路車間通信(V2V、V2X)まで含めた全体で考えているといった意味だ。技術にある程度明るい人向けに書かれたと思われるこの記事からは、たとえばインテルが車載のシステムについてモビルアイ製のSoCと自社で今後開発・投入する新しいSoCとを組み合わせて使う考えであるらしいとか、モビルアイのSoCが主にカメラセンサーから集まるデータの処理に使われるのに対し、インテル製SoCが「自動車の頭脳」として機能する(LIDARやレイダーなどから集まるデータの融合を受け持つ)といったことが読み取れる。
いずれにしても、自動運転の機能が高度化するのに伴って発生する膨大な量のデータを処理するにはモビルアイ製SoCの能力だけでは不十分ということかもしれない。なお、インテルが11月半ばに(「Automobility LA」開催に合わせて)公開していたプレスリリースのなかには、自動運転車の処理するデータ量が1台につき1日4テラバイトに達するというスライドがある。インタビュー記事のなかにもこれとほぼ同等の指摘をしたウィンターの発言もある(レベル5の自動運転技術が実用化される2025年までには保存するデータ量がテラバイト単位になる、など)。
いっぽう、クラウド関連については、人工知能(AI)分野の話でよく目にする名詞がいくつか登場している。ナーバナ・システムズのディープラーニング技術(Nervana Systems、インテルが8月に買収)、アルテラ(Altera)のFPGA技術といったものである。さらに無線通信については「V2V、V2Xには5Gをつかう」「V2Xには802.11p/DSRCは適していないと思う」などとある。このあたりの技術的な詳細は今後明らかになっていくのだろうが、いずれにしてもエヌビディアとは車載システムとデータセンターの両方で、またクアルコムとは車載システムならびに無線通信の部分で競合しそうだ。
具体的にどんな部分をローカルで処理し、どの部分をクラウド上で処理するのかといった部分はもうすこし情報を整理する必要があるだろう。
デルファイはBMW、インテルとの取り組みと別に、アウディと協力してやはり自動車の頭脳に相当する小型コンピューター「zFAS」というのを開発しており、こちらにはエヌビディアとモビルアイのチップが使われているというから少々話がややこしい。要はデルファイとモビルアイはインテルとエヌビディアにふたまたをかける格好ということかもしれない。
【参照情報】
・Intel's New Business Is Dedicated to 'Oiling' Self-Driving Cars - Fortune
・Intel, Qualcomm Head for Car Clash - EE Times
・Data is the New Oil in the Future of Automated Driving - Intel
・Delphi and Mobileye Have Chosen This Chipmaker for Their Self-Driving System - Reuters (Fortune)
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登録はこちらオンラインニュース編集者。慶應義塾大学文学部卒。大手流通企業で社会人生活をスタート、その後複数のネット系ベンチャーの創業などに関わった後、現在はオンラインニュース編集者。関心の対象は、日本の社会と産業、テクノロジーと経済・社会の変化、メディア(コンテンツ)ビジネス全般。