オプティム

ドローン映像とセンサーデータが可能にする病虫害防除と生育管理、新たな就農者を増やすIoTの取り組み

2016.12.20

Updated by WirelessWire News編集部 on 12月 20, 2016, 10:00 am JST Sponsored by 株式会社オプティム

農業は「国民に対する食料の安定的供給」という重要な役割を持つ産業です。しかし今の日本では、農業をめぐりさまざまな課題が存在します。農業従事者の高齢化に伴う就農人口の減少、重労働で稼げないことから後継者となる若い就農者が増えない、技術伝承が難しい、そしてTPPをはじめとする先行き不透明な輸入農産物の影響など、問題は山積みです。

問題の根本には、日本の従来の農業は小規模で労働集約的であり、省力化や効率化が難しかったことがあります。これらの課題を解決するための手段として、IoTが期待されています。

水田、畑、圃場などに接地したセンサーやカメラによる気候情報や農地・作物などの情報収集、収集した情報の蓄積と分析、そしてその成果を活かしたドローンやロボットによる作業の省力化が可能になります。また、データに基づく判断をAIがサポートすることで、新規就農者への技術移転を支援することができます。

産学官連携で「楽しく、かっこよく、稼げる農業」を目指してきたオプティム

2015年8月、佐賀県生産振興部、佐賀大学農学部とオプティムは、IoT・ドローン・ネットワークカメラ・ウェアラブルデバイスなどを利用した農業IT分野での三者連携協定を行いました。農業従事者の高齢化と担い手の減少、農業所得の伸び悩み、鳥獣被害などの農業における課題に対し、佐賀大学農学部の学術知見、佐賀県の実用的な知見・ノウハウ、オプティムのテクノロジーを融合させたさまざまなアプローチにより、農業の効率化・高度化・実用化を図り、「楽しく、かっこよく、稼げる農業」を実現することで、若い新規就農者を増やし、また彼らが自立した農業を営めることを狙っています。

自律飛行するドローンが撮影した映像をもとに、ディープラーニングによる画像認識で害虫被害箇所を特定するAI技術を開発し、2015年10月にはマルチスペクトル撮影映像より大豆における害虫「ハスモンヨトウ」をAIによる画像解析で検出することに成功しています。高さ5mから撮影して数㎜程度の葉の変色を検出し、正解率は85%まで向上しています。

現在は、対象とする圃場を10か所・作物を米やお茶など28品目にまで増やし実証を重ねています。映像撮影と夜間の害虫駆除ができる農業専用ドローン「アグリドローン」の開発、ハウス園芸にも使用できる陸走型ドローン「アグリクローラー」、スマートグラスを用いた作業記録と作業支援、さらには野菜の生産から消費まで、すべての工程を可視化、共有し、安全・安心を消費者に伝えることで、やさいのブランド化とマーケティングに活用する「スマートやさい」のコンセプト発表を進めてきました。

▼アグリドローン
アグリドローン

▼アグリクローラーとスマート野菜
アグリクローラーとスマート野菜

▼センサーと圃場に設置するゲートウェイ「AGLink」
センサーと圃場に設置するゲートウェイ「AGLink」

そして2016年11月、オプティムはドローンやウェアラブルデバイスから取得する映像や、センサーなどの大量のデータを分析し、病害虫検知や生育管理などに活かす管理システム「AgriManger」を公開しました。

膨大なデータを一元管理・活用する「AgriManeger」

AgriManagerは、ドローンによる撮影映像をAIで解析した結果として病害虫発生エリアを色分けして表示します。AgriManagerの画面をチェックすることで、対策が必要な場所をピンポイントで特定できます。検知箇所の拡大写真も表示されるので、目で見て状況が確認でき、適切な駆除や対策が可能になります。

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生育管理は赤外線と近赤外線によるマルチスペクトル撮影映像により葉緑素濃度を表す指標(SPAD値)と植物の生長密度や活性度の指標(NDVI値)を座標ごとに求めます。従来は衛星画像を使用して分析していたため、1区画だけを撮影して全体の状況を推測していましたが、ドローン撮像を使用することで圃場全体をきめ細かく分析できるようになりました。

また、気温や日照、水田の水位などのデータもセンサーを配置して場所ごとに測定し、地図上に表示できます。生育管理マップと害虫発生状況やセンサーデータを重ねることで、生育が悪い場所は「なぜ悪いのか」を明らかにすることが可能になります。ベテランの農業従事者であれば、自分の管理する田畑の中で日当たりの悪い場所はどこか、といったことは経験的にわかっていますが、AgriManagerにより、経験の浅い作業者にも原因の特定が可能になるのです。将来的には、気温、日照、水位などと生育状況の関係性もAIによりモデル化し、よりスマートにアラートを出せるよう取り組んでいます。

害虫発生や生育状況の確認には、従来であれば、田畑を実際に歩いて見て回る必要がありましたが、ドローンによる撮影によって生育状況を現場に行かずに確認し、問題があるポイントも正確に特定できるため、作業量の軽減につながります。

OPTiM Cloud IoT OS上でシステムを構築

AgriManagerは、オプティムのIoTプラットフォーム「OPTiM Cloud IoT OS」上で構築されています。ドローンやセンサーなどで取得したデータをクラウド上に蓄積。AIやビッグデータ分析の結果を「OPTiM Cloud IoT OS」上で動作するアプリ上でわかりやすく表示しています。

現在は、品目別に異なる害虫検知や生育モデルを組み込んだAIを開発するためのデータ収集を行っています。また、ウェアラブルグラスから作業ログを取得し、作業日誌を自動作成するアプリも開発中です。生育状況と作業ログを組み合わせたモデルが構築できれば、状況に応じて必要な作業をより的確に指示することが可能になります。作業ログデータは「スマートやさい」で開示する作業記録にも転用できます。

三者連携で、先を見た「攻め」の取り組みが始まった

佐賀県 農林水産部 農政企画課 技術監 鍵山 勝一氏

佐賀県
農林水産部 農政企画課 技術監
鍵山 勝一氏

佐賀県は福岡と長崎に挟まれた小さな県ですが、米、佐賀牛、大豆、たまねぎなどに代表される、全国一の農業県であるという自信を持っています。国産農産物に対して「安心安全なものを提供して欲しい」という消費者のニーズがあるにもかかわらず、農業の後継者がどんどん減少しているという現状では、生産性と品質を向上すると同時に、次世代に技術をしっかりとつないでかなくてはなりません。

その背景にある「農業は重労働でかっこよくない、儲からない」という現状を変え、「楽しくかっこよく、稼げる農業」を佐賀からITを使って実現する、そのために当面はまず世界No.1の農業ビッグデータ地域を目指すこと、2番目にウェアラブルで作業記録を残すことにより農家の技術を伝承していくこと、そしてその記録を栽培履歴として消費者に届けることで付加価値を高めること、この3つを佐賀県・佐賀大学・オプティムの三者協定に結び付けました。

最初の成果として、大豆のハスモンヨトウの検出に成功しました。佐賀県は大豆の一大産地で、国産大豆といえばほぼ佐賀県産です。ハスモンヨトウは大発生すると1週間で圃場全体の葉が真っ白になるほどですから、迅速な防除はとても大切です。普通の農場では、2か所で発生したとき畑全体で防除しますが、今回の成果を受けて「1か所でも発生したらピンポイントで直接防除ができるような仕組みが欲しい」ということで、オプティムにはドローンを開発してもらいました。

現在はドローン、ウェアラブル、データ解析の3チームで連携を進めていますが、今後は獣害防止に取り組むチームも作っていきたいです。また、私達の活動を見て、水産部でも養殖のり生産にITを活用できないかという声が上がっています。連携のおかげで、先を見越した取り組みができるようになったことが、我々にとってはとてもプラスになっています。

我々の研究機関の若い研究者も、農家の若い人たちも、この取り組みにはとても興味を持っています。これからも楽しく、果敢に挑戦していくのが、我々の使命です。

(2016年10月26日 IoT/M2M展秋 講演より)

技術伝承と管理業務の軽減に期待

佐賀県 農業試験研究センター 副所長 横尾浩明

佐賀県
農業試験研究センター 副所長
横尾浩明氏

5年に1回農林水産省が実施する「農業センサス」では、調査のたびに農業従事者の平均年齢は上昇しており、2015年の調査では65歳以上の占める割合が65%を超えました。世代交代が進んでいない現状を表しています。高齢化で担い手が不足してきているのに技術伝承が難しいこと、また就業者が減ってより大きな農地を見なくてはいけなくなることを踏まえ、ITで何とか解決したいというのが、我々が連携協定に参加した理由です。

技術伝承にはウェアラブルのスマートグラスに期待しています。昔であれば息子の後ろをオヤジがついて歩きながら一子相伝で勘と経験を伝えていきましたが、今はそれでは間に合いません。指示する人とされる人が視界を共有しながら双方向で会話ができれば作業の多くは伝えることができます。

農業試験場の中でも私が専門にする米、麦、大豆などの土地利用型作物では、担い手が減ることで農地の集積が進行しています。そのため、作業の効率化とコスト削減、そのための標準化が必要です。ウェアラブルで撮影した動画を利用してマニュアルを整備することで、新規参入者や農業法人への技術指導に使えないかと考えています。

また、作業日誌は、減農薬をはじめとする安心安全の担保に重要な役割を果たしますが、その場で汚れた手で書くのは大変だし、後から思い出して書くと記憶があいまいになってしまうこともありました。スマートグラスを通じて作業ログを記録できれば、たとえば農薬のビンのラベルを読み取って日付と一緒に記録できれば、楽に正確に記録できます。

現在はフィールドサーバーで生育環境と生育状況を把握し、センサーを設置して環境や水位を測定し、そこにドローンを加えてデータを収集しています。たとえば米などでは、稲刈りや田植えなど主要作業は自動化が進み、作業負担が減っています。相対的に圃場管理や水管理などの比率が高まっており、作業全体に占める割合が3分の1から4分の1にまでなっています。そこを、モニタリング技術を使うことで軽便化できないかという思いがあります。

一番重要なのはこうした技術をプラットフォームで管理、分析、解析することです。我々のノウハウにもとづいて、欲しいものをITで実現してくれるオプティムには期待しています。

(2016年10月27日 IoT/M2M展秋 講演より)

IT農業で5割の収益増と農業の四次産業化を目指す

国立大学法人 佐賀大学 農学部 学部長 渡邉啓一

国立大学法人 佐賀大学
農学部 学部長
渡邉啓一氏

佐賀県庁、佐賀大学、オプティムの三社連携の中で、佐賀大学は2つの役割を担っています。1つは基礎研究と、そこからのアカデミックな知見を提示すること、もう一つは人材を育成することです。また、実証実験のための農場も提供しています。これまで、紫外線をつかって夜間に害虫を検出する技術を開発し、オプティムと共同特許を申請しました。

現在は引き続きデータを集めている段階ですが、同時に効果仮説立案のための指標づくりに取り組んでいます。「減らす指標」を「経費」「資材」「労働時間」「肥料」「虫の害」「病害」「獣害」、「増やす指標」を「品質」「収量」「安心安全」「信頼」「売上」「利益」「後継者」として、それぞれについて作物別に数値目標を立て、どれだけ減らすのか/増やすのかを考えます。指標は作物別に決める必要があり、目標を立てて研究開発に取り組みます。

ドローン活用については、マルチスペクトル撮影とピンポイント農薬散布ができて、センサーの中継局としても機能する、マルチファンクションの「アグリドローン」を開発しました。農家の方に実際に使っていただき、課題やアイデアを出していただきながら、バージョンアップを進めていきたいと考えています。

ハウス栽培については、陸送型のアグリクローラーに全天球カメラを搭載することで、すべてのデータを撮影することができます。

ウェアラブルデバイスには、作業の指示を遠隔で行うだけでなく、全ての作業を記録することによってベテランのノウハウを明らかにして、「勘に頼らない農業」にしていくために役立てることを期待しています。

2015年から2016年までは基礎研究として、IT農業と通常の農業を行っている圃場を比較して、労力がどの程度減り、収量と味はどうなったかを実験で確かめています。2017年からはIT農業ソリューションとしてオプティムからサービスを提供していくと聞いています。こうした取り組みを通して、5割の収益増加を目指しています。

オプティムの強みは、ドローンやウェアラブルデバイス、センサーなどを通して集まるデータを統合処理できる「OPTiM Cloud IoT OS」があることだと思います。農業でビッグデータを利用する場合、地図との対応が不可欠になりますが、「OPTiM Cloud IoT OS」を利用してビッグデータを農業に活かせるのは我々の強みです。

人材育成についても、佐賀大学の中で「がばいベンチャーの作り方」という講座を開設して、今のIT農業についてだけでなく、アントレプレナーシップ、知財戦略、プログラミング、ビジネスプランなどについて、オプティムの菅谷社長を中心に、我々も教えています。

「スマートやさい」は、農家と消費者をつなぐ新しいコンセプトです。ITでスマートに育てられた佐賀の野菜の生産過程を、映像で世界中の消費者に見せることができるのは、安全・安心を考えるうえで非常に良いことです。パッケージにつけたバーコードで、農家の顔も見えるようになることで、野菜を食べ物として届けるだけでなく、農家と消費者、消費者同士が野菜を介してつながる、新しい楽しさとサービスを届けることができます。これによって一次産業の農業が、プラス三次産業のサービス業と一体となって、四次産業化できるのではないかと考えています。

(2016年10月28日 IoT/M2M展秋 講演より)

オプティムの「農業×IoT」の取り組みが、佐賀から日本の農業を変えようとしています。

オプティム

お問い合せ先:https://www.optim.co.jp/it-industry/agriculture/form/
関連URL
株式会社オプティム:http://www.optim.co.jp
佐賀県:http://www.pref.saga.lg.jp
国立大学法人 佐賀大学:http://www.saga-u.ac.jp
IT農業三者連携協定Webサイト:https://www.optim.co.jp/it-industry/agriculture/case-study/tpa/

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