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奉納祭 巫女 イメージ

これは中野版アルスエレクトロニカだ!「仮想通貨奉納祭」

2019.11.11

Updated by Ryo Shimizu on November 11, 2019, 05:46 am UTC

メディアアーティストの市原えつこさんが「仮想通貨奉納祭」なるものを企画したと聞いて驚いた。

市原さんといえば、大根を触ると妖しい声が聞こえる「セクハラインターフェイス」や、ロボットにより、故人の人格が憑依したかに見える「デジタルシャーマンプロジェクト」などの作品で有名で、先日オーストリアのリンツで開催されたアルスエレクトロニカでは現代版のサイバーパンクな「ナマハゲ」を披露。

ロボットやメディアアートをどんどん霊的なものに寄せていってるなあ、というところで、ついに「奇祭」をやるという。

まあ普通は、奇祭っていうのはやってる人からすれば奇祭でもなんでもなくて、自分から名乗るようなものではないだろうが、日本三大奇祭のひとつ、裸押合まつりの地で高校時代を過ごした身からすると、なんだか他人事のようには思えない。クラウドファンディングに微力ながら参加し、奇祭を楽しませていただくことにした。

祭りであるからして、重要なのはお神輿。今回はこのお神輿にブロックチェーン技術を応用して、ビットコインを賽銭として奉納できる「仮想通貨サーバー神輿」。拝金主義というか、この時代に神はいないのだ、いや、ビットコインという実態のありそうでなさそうな共同体そのものが神ということか。シュールである。

神輿の掛け声も「セイヤ」ではなく「ペイヤ」
まさにキャッシュレス!

そして舞台となった川島商店街には、お祭りにはつきものの出店が並ぶが、これも一筋縄ではいかない。

座・シトラス」の方々が扮しているのはkorotoroさんの作品「貨幣通貨神」

仮想通貨の奉納というカウンターカルチャーに対して、貨幣通貨で対抗するというアート。

そしてこれがブロックチェーン杖

パンクである。

手回し発電機による仮想通貨の手動マイニングマシン。
MONAを採掘するのだが、ラズパイを起動するまでにだいぶかかり、へとへとになったあたりでやっと起動するかと思ったら少し気を抜いて力が弱まるとまた最初からやり直しという地獄。

せめて自転車なら・・・

プロジェクションマッピングを使った射的。早稲田大学の学生さんの作品。
子どもたちに大人気だった。

市原さんの原点といっていい大根型インターフェイス。
ちなみに出てくる声は男性、女性といろいろあり、大根によってセリフが違う。

 

天狗ロボット。
なんか一人でブツブツ言ってる。

どうも聞き覚えがあるなあと思ったら、藤井直敬先生の声とのこと。

ハンバーグ作ったり天狗になったり、八面六臂である。

こちらもメディアアーティストの水落大さんの作品でやはり射的。
ただし水鉄砲による射的で、防水タブレットに直接水鉄砲を撃つという過激な実装。

奉納されるお酒は、精米率90%の特別なもの。「バイオ奉納」というのがいまいちよくわからないが、これも一つのノリだろう。

最初はいろんな展示を笑ってみていたのだが、なにか既視感があるなあと思ったら、これって10年くらい前のアルスエレクトロニカのノリと同じなのである。

道端にゲリラ展示される出し物の数々、誰も彼もが酒を飲みながら思い思いの作品を展示して地域との交流を楽しんだりもする。

日本にアルスエレクトロニカのようなイベントをもってこれないか考えていたのだが、きっとそれは市原さんも同じはずで、正直「この手があったか」と膝を打つ思いだった。

なんせアルスエレクトロニカには日本人参加者が非常に多いし、出す方も見る方も日本人が多いんだから日本でも似たようなイベントがあればいいのにとずっと思っていた。

ただ、アートイベントは権威付けやキュレーションが難しく、参加のハードルも高く感じてしまう。
しかし「奉納祭」なんだと言い切ってしまうことで、参加のハードルを一気に下げることに成功した。その結果、学生や社会人などが気軽に参加できるようになったことは素晴らしいアイデアだ。

地域振興にもなるし、弥生商店街は今回相当、得をしたのではないだろうか。

やはり子供の頃になにがしかの作品に触れるというのはすごく大事だし、なにより子供の頃に作り手と触れ合うことが、その子の将来にとってすごく大事だと思う。

子供は、自分の見聞きしたものしか想像できないし、実際に出会ったことのある身近な人しかロールモデルにできないので、漠然と「ゲームクリエイターになりたい」とか「Youtuberになりたい」と考えるよりも、目の前で実際になにがしかの作品を作ってる人たちと触れ合って、「僕もこんなお兄さん/お姉さんになりたい」と考える子供がでてくることが、実際には日本の国力を支えていってくれるはずである。

そういう意味では、調整も含めて「作る過程で四苦八苦しているところ」を子供が間近に見れるという環境も実に素晴らしいと感じた。

仮想通貨奉納祭、ぜひ継続して日本にメディア・アートの文化を根付かせていって欲しい。

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。プログラマーとして世界を放浪した末、 '17年にソニーCSLとWiL LLC.とともにギリア株式会社を設立し、「ヒトとAIの共生環境」の構築に情熱を捧げる。 '17年より東京大学先端科学技術研究センター客員研究員を兼務。著書として「教養としてのプログラミング入門(中央公論社)」「よくわかる人工知能 (KADOKAWA)」「プログラミングバカ一代(晶文社)」など。

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