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ウェイモ(グーグル)とホンダが提携協議 - 考えられる2つの理由

2016.12.22

Updated by Hayashi Sakawa on December 22, 2016, 17:28 pm JST

今日は、アルファベットの自動運転事業子会社ウェイモ(Waymo)とホンダが提携に向けた協議を進めているという話題が国内・国外の各媒体で大きく報じられていました(文末の記事リンクを参照)。正式な合意はまだこれからという段階のようですが、当事者側からの発表ということもあり、ほぼ本決まりという感じでしょうか。

さて、両社の協議内容についてはいずれの報道でも比較的詳しく報じられています。具体的には、グーグルが進める公道走行実験用にホンダが車両を提供する、この車両にはグーグルが開発するソフトウェアやデータを集めるセンサー類などが搭載されるといったもの。そのいっぽうで、これまで自前の自動運転技術開発を進めてきたホンダがどうしてウェイモと組むことにしたのか、あるいは分社化(の発表)だけが先行し、まだ具体的な事業の中味もはっきりしていないウェイモがホンダにどんなことを期待しているのか、といった疑問への答えは見当たりません。

そこで今回は、両社がなぜ提携を本格的に検討することになったのかという点について考えられる2つの理由を記してみます。

体力的な限界(主にホンダ側の事情)

このニュースを伝えたNHKの報道のなかには次の指摘があります。

ホンダを除く各社(=トヨタ、日産ほかの国内メーカー)は次世代の自動車のカギを握る自動運転や環境などばく大な費用がかかる先端技術の開発を1社単独で賄うのは容易ではないとして、提携の動きを加速させてきました。

このうち自動運転はこれまでの車作りにはなかった高性能のカメラやレーダーのほか人工知能やビッグデータなどの新しいIT技術が必要とされていて、ホンダは国内の2つのグループに比べて開発での遅れが指摘されていました。

このためホンダは単独路線の方針を転換し、自動運転の分野で早くから開発に参入したアメリカのIT企業「グーグル」と組むことで巻き返しを図る狙いがあるものとみられます。

ホンダ 完全自動運転で米グーグル開発会社と共同研究へ

WWNでも再三報じてきている通り、この分野ではとくにここ1年ほど開発競争に参加する各社間の「体力勝負」の様相が強まっています。ぱっと思いつくところでも、GMによるクルーズ・オートメーション(Cruise Automation)の買収(3月、買収金額は推定10億ドル)、ウーバー(Uber)によるオットー(Otto)の買収(7月、買収金額は推定7億ドル)など、動く金額の桁が「億ドル台」という話も見かけるようになっています。また「ベンチャー企業を買収する場合の相場は従業員一人あたり1000万ドル」というセバスティアン・スランの言葉も思い出されます(スランはいわゆる「グーグルカーの生みの親」のひとり)。

こうした負担増加の大きな理由の一つが人材の払底、とくに上記記事中にある「人工知能やビッグデータなどの新しいIT技術」を開発できる人材が極めて限られていることにあるのではないかというのが私の考えで、ホンダに限らず「キャッチアップを図るために有望そうなベンチャーを買収する」といったことが簡単にはできなくなっているとの可能性も考えられます。

余談になりますが、8月にグーグル退社を発表していたクリス・ウルムソン(Chris Urmson)が現在、新会社の設立に向けて準備を進めているそうです(Recode)。この新会社に「最初の資金調達時にどれくらいの評価額がつくか」というのは、この分野の人材に関する相場を知る上で貴重な手がかりになるかもしれません。

また人材以外に、自動運転技術の開発に不可欠とされる大量の走行データも「集めるのが難しそうなもの」のひとつでしょう。既報の通り、グーグル(のウェイモ)はすでに100台近い自動運転車を走らせて走行データを集めています。上記のNHK記事には「累計の)走行距離は(略)370万キロに達しています。」とあります。またこのところ(再び)何かとお騒がせなウーバーも8月にボルボに発注していた100台の車両の納品が始まっており、一部はすでにサンフランシスコの市街地を走っています。さらにテスラ(Tesla)が今年秋以降に出荷した同社の車両に、データをあつめるカメラやセンサー類を搭載しているのも既報の通り。いずれにせよ、今後はこれらのデータ収集を行う「大きな仕掛け」の必要性がさらに高まると予想され、そうしたなかでホンダとしてはこれから自前で準備するよりもウェイモに相乗りする方が得策と考えたのかもしれません。

ライドシェアリング関連を軸にした協力(主にウェイモ側の思惑)

ウェイモが具体的に何をするかはまだ明らかにはなっていませんが、昨年あたりから「ライドシェアリングもしくはカープール(乗客の相乗り)サービスを始めるのでは」といった観測が何度か流れています。また今月にはより具体的に「フィアット・クライスラー(FCA)と共同開発中の自動運転ミニバンをつかってライドシェアリング・サービスを始める計画」という話が報じられていました(Bloomberg)。このサービスに利用する車両の供給元として、FCA1社では心許ないとウェイモが考え、それでホンダに声をかけた、という可能性も考えられます。

分社化発表の際に「自動車メーカーになるつもりはない」としていたウェイモですが、大手メーカー各社との提携・協力はまだほとんど進んでいません。提携済みのフィアット・クライスラー(FCA)については、はなから「自動運転車技術の開発には手を出さない」と宣言していたので例外とみていいでしょう。また、ウェイモでは既存の自動車メーカーに加えて、ウーバーの動きなども意識しなければならず、以前のように自分たちのペースで開発を進め、技術の完成をじっくり待つというわけにもいかない状況になっています。さらに、アルファベットのグループ内では新しいCFOの加入ー持ち株会社制への以降以来、新規事業や実験的な取り組みに対する予算の締め付けなどが強まっているという話も最近よく目にするようになっています。

またホンダが「社内での技術開発も並行して進めていく」としているところも、両社の協力が(ライドシェアリングに関する)限定的なものと考えられる理由のひとつといえるかもしれません。

ウェイモが自動運転車の「武器商人」として複数のメーカーにソフトウェアや付帯するコンポーネント類を自動車メーカー各社に供給するという可能性も全くなくなったわけではありませんが、その場合に思い浮かぶのは「頭脳の部分にグーグルのものを採用してもいい」というメーカーがどれほどあるかといった点・・・残念ながら、これについてはいまのところ何かを推論できるだけの材料が見当たりませんので、今後の各社の動きを見守ることしか手がなさそうです。

【参照情報】
米国Waymo社と自動運転の共同研究に向けた検討を開始 - ホンダ
ホンダ 完全自動運転で米グーグル開発会社と共同研究へ - NHK
ホンダ、グーグル系と自動運転研究 米の公道実験に車両提供 - 日経新聞
Honda in Talks on Self-Drive Technology With Google’s Waymo - Bloomberg
Honda and Alphabet Talk Driverless-Car Partnership - WSJ
Honda, Alphabet's Waymo in talks over self-driving technology - Reuters

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坂和 敏

オンラインニュース編集者。慶應義塾大学文学部卒。大手流通企業で社会人生活をスタート、その後複数のネット系ベンチャーの創業などに関わった後、現在はオンラインニュース編集者。関心の対象は、日本の社会と産業、テクノロジーと経済・社会の変化、メディア(コンテンツ)ビジネス全般。