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ブロックチェーンが世界を変える・・・・かもしれない

BMR; Blockchain makes Revolution

2017.01.31

Updated by Ryo Shimizu on 1月 31, 2017, 09:46 am JST

「ブロックチェーンを侮るな」

筆者に近しい友人の言葉を信じて、ここ一ヶ月くらい、ブロックチェーンを勉強しています。

もとは「サトシ・ナカモト」という謎の人物が開発したビットコインから始まるブロックチェーン。うん、たしかに侮っていました。

原理的には、非常に高度な暗号を「採掘」することで、この暗号に価値がある、ということにして通貨を定義するビットコイン。そして、ビットコインを実現するためのブロックチェーンという技術が、どうやらものすごいことになっていそうです。

ブロックチェーンを実現する技術の根幹はハッシュです。
ハッシュ・・・つまりプログラムによって一意的に求まる不可逆な記号列。

トラップドア式暗号とか呼ばれることもあります。

たとえばUNIXのログイン時のパスワードはハッシュです。
ハッシュは、たとえハッシュそのものを知っていてももとのパスワードは類推できないというところがポイントです。

もちろん総当りすればわかりますが、総当りしない限りわからないし、仮に総当りで見つけたとしても本当のパスワードではない(セキュリティは破れるが)というところがミソです。

ブロックチェーンにおいては、全てのデータはプロックという単位で管理され、ブロック同士はハッシュでつながれます。
そのチェーンを成立させるハッシュの計算を十分複雑にして、ブロックチェーンを成立させるわけです。

ビットコインの場合、「採掘」にはいまや専用のハードウェアが必要です。
その投資額は数億という単位で、電気代と土地代の安い中国の奥地でせっせと生産されているので我々素人が参加して採掘するのは絶望的に難しいのですが、ビットコインに次ぐ人気のある「Ethereum(イーサリアム)」というプラットフォームではビットコインよりもさらに複雑な計算が必要なため専用ハードウェアを起こすことが難しく、GPUさえあれば誰でも採掘できます。

イーサリアムは、ビットコインに比べると幾つかの点で革新的です。

ひとつは、イーサリアムは単なる仮想通貨ではなく、P2Pをベースとしたブロックチェーン・ソフトウェア・プラットフォームとでも言うべきものです。

誰でも独自の仮想通貨をイーサリアム上で発行できますし、誰でもブロックチェーンを利用したアプリケーションを構築できます。

ブロックチェーンはもとより、そもそもP2Pのソフトウェア・プラットフォームが難しいのは初期ユーザ数(ピア数)の確保なのですが、イーサリアムはすでに存在しているため、この初動の心配がいりません。

そしてまた、イーサリアム上で仮想通貨(ネイティブ通貨とも呼ばれます)を採掘するピア(ノード)は、プログラムの実行や計算も行うことになります。その計算行為に対して仮想通貨が支払われるという仕組みなので、モチベーションのコントロールも出来ているということになります。

イーサリアム上で動くアプリケーションを、DApp(Decentrized Application)と呼びますが、これはまさしく中央集権的な管理のない、新しい時代のアプリケーションと言えます。

ブロックチェーンの最大のメリットは、分散していることです。
分散していることが前提のため、破壊が困難で世界中のあちこちで行われた小さい取引の全てが世界中で共有されています。

この取引台帳は多数決によって決まるため、ブロックチェーンを破壊するためには地球そのものを破壊する必要がある、とまで言われています。まあ実際には、存在しているノードの50%以上を支配すればブロックチェーンを改ざんできるのですが、その数が膨大なため、事実上不可能というわけです。

ブロックチェーンの出現は、筆者も当初は胡散臭いものとしてあまり真面目に見てきませんでした。

しかし、普段からサーバーを管理したり、先日の任天堂スイッチやPlayStationVRの予約のように、一瞬で在庫が売り切れてしまって、買いたくても変えない状況が続くと、「もしブロックチェーンなら、誰でも無宣言に予約できるのに」と思ってしまうのです。

ブロックチェーンの凄いところは、基本的に落ちないことです。
仮にどこかのノードが落ちても、バックアップとなるノードが山ほどあるわけです。

次に、完全にオープンソースで提供したとしても(実際、Ethereumはオープンソースです)、生み出される価値(たとえば仮想通貨)が毀損されないということです。

いま、ソフトウェアの世界は完全にオープンソース化が進行しています。
オープンソースでないソフトウェアは、いずれ生き残れなくなるでしょう。

これが何を意味するかというと、ソフトウェアを書いて対価を貰うという仕事が、なくなっていく危険性があるわけです。
実際、Chainerというオープンソースを提供する株式会社プリファードネットワークスは、Chainerによって一円も利益を生み出していません。筆者の所属する株式会社UEIも、enchant.jsを始め、いろいろなオープンソースソフトウェアを提供していますが、オープンソースソフトウェアそのもので利益を上げたことはありません。もちろん利益をあげなくては会社が成立しないのですが、実際にはオープンソースソフトウェアでデモンストレーションをして、お客様にあわせたカスタム開発で利益を上げるという構造になります。

ですが、筆者はこれも実は一過性のビジネスにすぎないのではないかという危惧がありました。

ソフトウェアの出来・不出来でいえば、やはりオープンソースの方が圧倒的に完成度が高まるのです。それは実際に使うユーザからソフトウェアのバグに関する修正(パッチ、またはプル・リクエストと呼ばれます)が送られてくるからです。オープンソースソフトウェアの開発者は、送られてきたプル・リクエストを検証し、問題なさそうならば本家に反映するというごく簡単な対応で、どんどんソフトウェアの品質が高まっていくことになります。

この状態になると、クローズドなソフトウェア、俗にプロプライエタリ・ソフトウェアと呼びますが、そういうものの優位性は相対的に下がっていくことになります。

品質が低く、しかも値段がついていて、その値段がだいたい高い、ということになれば、プロプライエタリ・ソフトウェアの終焉はもはや時間の問題と言えるでしょう。

AppleやGoogleは、オープンソースの恩恵をうまく受けながら、独自のプロプライエタリ・ソフトウェアを混ぜることでビジネスを発展させてきました。たとえばMacで動くmacOSも、iPhoneやiPadで動くiOSも、90%くらいはオープンソース・ソフトウェアでできています。Googleに至ってはAndroidやChromeの99%くらいはオープンソースにしています。

ところが最後の1〜10%のプロプライエタリ・ソフトウェアで、独自の価値を出しているわけです。AndroidでいえばOSの基本機能は全てオープンソースですが、高速なWebブラウザやGoogleMapやGMailなどのサーバーと連携するソフトウェアはプロプライエタリ・ソフトウェアです。

これを自社のスマートフォンに組み込みたければ、Googleと特別な契約を交わさなくてはなりません。そしてこの契約は、事実上、Googleの奴隷になるのと同じ契約になります。

一方、ブロックチェーンの場合は全てがオープンソースになったとしても、ハッシュの計算に膨大な計算資源を要するために、利益の生まれる場所がソフトウェア開発者ではなく、利用者になります。これが実に画期的なことです。

そして、そこで生まれた利益は、ネットワークの維持と発展に貢献したことそのものから得られるのです。

さらにイーサリアムでは、その上に独自のソフトウェアを実装できます。
これはたとえ100%オープンソースであったとしても、大きな価値を生み出す可能性があります。

ここまで話しても、まだ半信半疑という人も少なくないかもしれません。

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(↑クリックで拡大します)

試しに週末から2日ほど、イーサリアム上のネイティブ通貨であるEthを採掘してみました。
一日あたりパソコン一台で45円生み出すことが出来ます。

電気代を1kW15円で契約すると、毎日30円ずつ利益がでることになります。
電気代との差益で考えると、これは15円の投資が30円の利益を生み出すことになり、200%の利回りという驚異的なものになります。

もちろんビットコインと同じく、Ethの価値も変動するので一概に儲かるとは言えませんが、一年前のEthの価値はいまの1.5倍だったことを考えると、やはり驚異的です。

さらに面白いのは、ディープラーニングやバーチャルリアリティに使用するGPUをそのまま使うことが出来るということです。
GPUを使ったディープラーニングの悩みのタネは主に電気代ですから、ディープラーニングに使っていない間はEthを採掘するようにすると、電気代を回収でき、事実上無料で維持できることになります。これは面白いですね。

手元に遊んでいるGPUが6基あったので試しに採掘させてみたら、一ヶ月で一万5千円程度の価値を生み出すことがわかりました。このうち、電気代は5000円ですから、毎月1万円の差益が出ることになります。もちろん、六基もGPUを買う場合は何百万とかかりますから、実際にマシンを買ってまで採掘する意味はほとんどありません。回収に何年かかるかわからないからです。Ethの価値が高騰すればまた別ですが。

それでも、VRやAIの研究用に買ったGPUを使っていない時間は採掘にあてると、実際に利益を生み出してしまう、ということに非常に驚きました。

さらにいえば、ブロックチェーンの上に独紙のアプリケーションを実装できるという話にも大きな可能性を感じます。
しかし概念的に全く新しいものなので、どう捉えていいか、まだまだ勉強が必要だと思います。

イーサリアムの話でいえば、非常に興味深いのが、イーサリアム財団の設立資金そのものをイーサリアム上でクラウドファンディングしたことです。その結果、16億円という巨額がイーサリアム財団の設立資金になりました。今世界ではこんなことが起きているのです。

イーサリアムを使うと誰でも手数料がほとんどかからない状態で、資金調達をしたり、独自の仮想通貨を発行したり、ブロックチェーンを利用したP2Pソフトウェアを開発することができます。そこまでモチベーションがない人でも、手軽にハッシュの発掘を行うことで利益を生み出すことが出来ます。

ブロックチェーンは単なる仮想通貨のための技術にとどまらず、なにか新しいものが生まれ出る予兆のように、筆者には感じられるのです。

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清水 亮(しみず・りょう)

ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長CEO。1976年新潟県長岡市うまれ。6歳の頃からプログラミングを始め、16歳で3DCGライブラリを開発、以後、リアルタイム3DCG技術者としてのキャリアを歩むが、21歳より米MicrosoftにてDirectXの仕事に携わった後、99年、ドワンゴで携帯電話事業を立上げる。'03年より独立し、現職。'05年独立行政法人IPAより天才プログラマーとして認定される。

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