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共創パートナーと新サービスの実用化を目指したプロジェクト成果続々と──ユニアデックス「IoTエコシステムラボ」共働PoC報告会開催(前編)

2017.03.29

Updated by WirelessWire News編集部 on March 29, 2017, 07:00 am JST Sponsored by ユニアデックス株式会社

「IoT分野でビジネス拡大を狙う企業をつなぐハブとなる」ことを目指し、2016年7月19日、東京サポートセンター(KDX豊洲グランスクエア)にグランドオープンしたユニアデックス「IoTエコシステムラボ」。デモやシナリオの紹介では約75社もの来訪実績を重ね、IoT事業への興味関心が深まっていることを感じさせる。更に共創パートナーとして、2017年2月27日現在42社もの企業が集っており、ビジネス化を見据えたプロジェクトを発足し、実証実験やデモを進めている。

2016年9月16日、IoTエコシステムラボ「第1回共創パートナーネットワーキング」が行われ、ここで『共働PoC』(Proof of concept)が発足した。新しいアイディアをデモや実証実験などを通じて実用化を目指す取り組みだ。この時、製造業やヘルスケア、ホームセキュリティなどの共働PoCテーマについての発表があった。そして約半年後の2017年2月28日、「第2回共創パートナーネットワーキング」と題し、豊洲文化センター レクホールにて、IoTエコシステムラボの共働PoCの成果報告会が行われた。

ユニアデックス「IoTエコシステムラボ」共働PoC報告会

冒頭、ユニアデックス株式会社エクセレントサービス創生本部プロダクト&サービス部IoTビジネス開発室長山平哲也氏から挨拶があり「今回の発表会を通して、自分が活動してきたPoCプロジェクトの中だけでなく、他のPoCプロジェクトに参加されているメンバーがとりくんでいることを理解して、プロジェクトを超えたつながりをひろげていただきたい」と、会を通じて横のネットワークを今後ますます広げていくことへの期待が語られ、開会となった。

共働PoC#1「クラウドPLCの実現に向けて」

ユニアデックス「IoTエコシステムラボ」共働PoC報告会

共働PoC活動報告として最初に登壇したのはユニアデックス淡島氏。京都府長岡京に位置するツバキE&Mの本社工場における実証実験計画を基に報告が行われた。日本企業が、収集したデータを活用しきれていない現状に問題点を見出し、「物作りに関わる全ての人がデータを活用できる環境の実現」をビジョンとして掲げている。現場を含め、経営層、事業部長、工場責任者など、役割ごとに適切な情報を届ける事をデータ活用の課題として挙げ、今回は同工場の生産技術部門を対象として実証実験を行う。

ツバキE&Mの本社工場では、減速機や差動機の主要部品である歯車を製造しており、歯車製作ラインにおけるシェービング加工のデータを生産技術部門に提供する。シェービング加工とは、歯車を材料から切り出し、歯切りをした後、更に研磨して精度を高める工程だ。実際に歯車の研磨を行うシェービング盤はPLC(プログラマブルロジックコントローラ)内のラダープログラムで制御されている。このラダープログラムの状態を数秒間隔で取得して加工することで「正常運転」「異常」「噛合不良」などのステータスや稼働率、生産状況(累積カウンタ等)を把握できる。今回の実証実験では、これらのステータスをウェブ上で表示するまでのしくみを構築した。

ユニアデックス「IoTエコシステムラボ」共働PoC報告会

この共働PoC参加企業は次の6社。NTTドコモの担当領域はモバイル回線及び閉域網の構成、たけびしはPLCデータ取得とクラウドへの送信、椿本チエインは実証環境提供、データ収集と表示画面作成、東京エレクトロンデバイスは外部センサーの調査及び検討、安川情報システムはシステム構成の基本設計やクラウド接続設定、そしてユニアデックスがAzure環境整備と活動全体の取りまとめを行っている。

昨年10月からテーマ検討を始め、11月に構成検討、12月にはAzure環境やルータ、閉域網などの構築や整備を行い、年が明けて可視化の為の表示画面の作り込みやゲートウェイ設定を進め、2月には事前テストを済ませた。この後3月7日には実際に実施導入を行い、2週間程度の検証期間に入るというスピード感でのプロジェクトとなっている。

報告会では、導入検証前の現時点での各社の気づきと課題が共有された。共創パートナーという、初めてのパートナーシップでの共働作業は、通常業務とは異なる部分が多い。特にお互いへの遠慮、作業領域や日程の配慮など気を使う部分が多く、リーダー社のイニシアチブが重要となる。その一方で、パートナーの保持している技術次第では、比較的容易にプロジェクトが進むなどのメリットも実感できたようだ。各社振り返りの中でも、業界や業種を超えての協業やビジネスの検討が、今後必須になっていくという認識がうかがえるコメントが続出した。

共働PoC#2「振動・音からの障害予兆検知」

ユニアデックス「IoTエコシステムラボ」共働PoC報告会

2つ目の共働PoC報告者として登壇したのは、ユニアデックス吉本氏だ。ベアリング等の回転機械を対象物とした故障予知に関する実証実験の模様が報告された。このPoCでは、製造・公共インフラなどの設備保全に着目。設備保全では劣化が始まる前の予防保全が重要であり、その効率的な実施には劣化箇所と劣化程度の見極めが重要になる。一般的な設備診断は大規模・ミッションクリティカルな設備を対象としており、高価なセンサーや専用の計測器を用いて専門家がデータ収集・分析を行なっている。このような故障予知を、IoTと機械学習を組み合わせることで、より手軽に安価に利用できるようになれば、小規模な設備に診断対象を広げることができる。本PoCでは設備診断の中でも基本的な「異常検知」の機械学習から実装に着手し、故障予知の実現可能性を探った。

本共働PoCの参加企業はアルプス電気、シスコシステムズ、コンテック、澪標アナリティクス、マイクロソフト、NTTコミュニケーションズとユニアデックスの7社。アルプス電気、コンテックは振動や音による異常検知のためのセンサー、ゲートウェイなど、データ収集に関わる課題を中心に担当した。澪標アナリティクス、NTTコミュニケーションズの2社は分析アルゴリズムの調査から実装、解析までを担当。シスコシステムズは振動データのフォグ処理の設計を担った。ユニアデックスは環境構築、分析アルゴリズム実装・解析、進捗管理まで全ての過程に関わった。

ユニアデックス「IoTエコシステムラボ」共働PoC報告会

ベアリング外輪の傷やアライメント異常が再現できる評価装置を準備。振動センサーからの情報をAzureML上に実装した故障予兆検知ソフトウェアで分析するという環境を整えた。

様々な検討を要したのが、傷の有無をプログラムに判別させるための異常検知アルゴリズムだ。ベアリング評価装置から振動センサーで取得した波形データを、人の目で見れば異常が明らかなものの、コンピュータにこれを識別させるのが難しい。波形データに特殊な処理を施した上で、機械学習による分析が出来ることを証明した。今後はユニアデックスが主体となり、今夏のビジネス化を目指して実証実験を進めており、デモ環境の構築も行なっている。

報告会では、パートナー企業である澪標アナリティクスも来場しており「普段はデータを持ち込まれてからの分析をしているので、その前準備、実際のデータの収集から関われたのが面白かった。今後『何ヶ月後に壊れる可能性が高くなります』というところまでの分析ができるようなメニューを加えようとしている」とコメント。共創パートナーとして普段とは違う取り組みを行うことへの新鮮さと難しさ、そして製品化への意欲が示されたのが印象的であった。

後編へ続きます)

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