イギリス トイレ イメージ

欧州でIoTが盛り上がる理由

Why IoT is popular in Europe

2017.03.29

Updated by Mayumi Tanimoto on 3月 29, 2017, 13:04 pm JST

先々週になりますが、ロンドンのSmart IOT Londonに取材に行ってきました。

IoTに特化したイベントは徐々に増えつつありますが、サービスマネジメント、データセンター、ビッグデータ系のイベントに比べた人気はかなりのもので、セミナーやワークショップは立ち見が出るほどの大盛況でした。

IoT関連のビジネスもイベントも、日本比べ、イギリスや欧州大陸の方が盛り上がっている気がするのですが、今回会場の起業家や政府関係者数名と話してみてその理由が何となく見えてきました。

まず理由の一つとして、需要側、つまり顧客側からの要望が熱いというのがあります。

イギリスの場合は、特に盛り上がっているのが「ビル管理」「ヘルス」「スマートシティ」の3つですが、そには欧州的な社会背景が深く絡んでいます。

イギリスだけではなく欧州大陸も人件費が安くありません。どこも基本的にはサービス残業はありませんし(つまり働く方に無料で延長労働しろといえない)、正社員の場合は企業負担の保険やら社会保障費が大きいんです。

イギリスは最低賃金が現在時給1050円ですが、10年前は772円。つまり10年で35%ほど上がっています。2020年までに1260円になる予定です。

今は1ポンドが140円ほどどポンド安なので日本と比べて高い感じはしないですが、1ポンド180円だと(私が感じる適正為替)、現在の最低賃金は1350円ほど、2020年には1620円です。

IT業界のような知識産業だけではなく、サービス業や建築、医療などの分野では外国人労働者の比率が低くはなく、様々な背景の人が混ざっているので訓練費用も高コストになります。

例えばイギリスの場合は清掃業における外国人の割合は35%で、工場の初歩的な機械オペレーターの場合は42%です。マニュアル作成、デバイス使用指導、ルールの告知など、文化背景も言葉も違うと大変です。

訓練にもコミュニケーショションにも手間暇かかりますし、コストも当然かかります。ですから重要ではない作業や可能なところは自動化して、できるかぎりコストをカットしたいわけです。日本だと暗黙知でなんとかなる部分も、文書化、ルール化、監査、トレーニングが必須になります

これはビル管理だけではなく、医療もそうですし、交通、教育などすべての分野で同じです。

例えばビル管理の場合、イギリスだとビル管理業務の市場規模は2012年から2017年までに17%上昇しているわけですが、テナントやオーナーは「より少ない予算でより多くのサービス」を求めるので、管理サービス会社の間で凄まじい価格競争が展開されています。

同じ予算でより多くのサービスを提供したいので、IOTソリューションを開発しているベンチャーに、ビルのオーナーや管理会社の方から「こういうのを作れないか」と提案が来るわけです。それだけコストカットのプレッシャーがあるということです。今回会場で話したベンチャー数社も「お客さんの方から色々と提案が来て驚いてる」といっていました。

例えば清掃業務にIOTを導入する例だと、SCAのEasyCubeというソリューションがあります。トイレの手洗い用石鹸やトイレットペーパーの減り具合をIOTのセンサでリアルタイムに監視し、データをクラウドに送信。清掃スタッフはスマートフォンやタブレットから確認し、足りなくなったら補充します。

これだと補充が必要な場合にだけスタッフが作業すれば済みますし、顧客から苦情が来る前に対応が可能なので、作業の効率化が可能です。

実際に、ストックホルムの遊園地であるGröna Lundの80箇所のトイレに実装されています。北欧は人件費がイギリスよりも高いので、なぜこれを入れたくなるのかが、ものすごくよくわかります。

SCAはイギリスの会社で、元々は業務用トイレ製品、生理用ナプキンや尿漏れパッド、などの会社なので、顧客側の悩みがよくわかっているわけですね。

欧州は日本のように人件費が安いわけではないので、人海戦術で作業していたらどんどんコストが上がってしまいますので、こういう効率化は運用費用削減に必須です。

スウェーデンやイギリスに限らず、欧州は清掃スタッフは外国人も多いので、コミュニケーションの簡略化も重要です。言葉がうまく通じない場合もあるので、ビジュアル化、単純化が必須です。イギリスの場合、EU国籍なら英語が全くわからなくても働きにこれたので、英語がワンツーのレベルで通じない人も大量にいます。

タブレットやスマートフォンで「これがこのぐらい減っている」というのがビジュアル化されていれば、「減ってるから変えてきて」と説得しやすくなります。「減ったと思ったらかえに行って」という阿吽の呼吸的な指示は通用しません。外国人と働く場合、「これがこうなったらこうやれ」という具体性が必要です。さらに「この状況で作業するはずなのにあなたはやってない」と監査記録を残すことも可能になります。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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