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テクニオンの研究者、PECセルの正極・負極分離で燃料電池向けインフラ構築に役立つ「水素オンデマンド」を実現 

2017.08.25

Updated by WirelessWire News編集部 on August 25, 2017, 07:00 am JST

地球温暖化防止の観点から、自動車の電気自動車(EV)化が加速しているが、大きな問題となるのが走行距離と充電の問題だ。従来の内燃機関に比べるとEVは走行可能距離が短く、充電に時間がかかる。その点を解消できるのが燃料電池自動車だ。EVに比べると走行可能距離は長い。また電池が切れたら燃料となる水素を充填すれば良いので長い充電時間は必要ない。走行時に発生するのは水蒸気だけなので環境にもやさしい。

課題は水素の生成方法と輸送方法だった。天然ガスから取り出せば二酸化炭素が発生してしまい、環境にやさしくない。水の電気分解で取り出すことができれば反応そのものには温暖化ガスは発生しないし、化石エネルギーと違って輸出国の政治情勢による影響も受けにくい。だが反応に必要な電気を作るための発電に二酸化炭素を発生させてしまっては本末転倒だ。

そこで各国の研究者はPEC(光電気化学)セルの研究に取り組んでいる。光のエネルギーで水を酸素と水素に直接分離することができるが、大量の水素を獲得するにはPECセルを広いエリアに並べて太陽光を受ける大規模な設備が必要なのでどこでもできるわけではない。水素を気体のまま運ぶのは難しいので、圧縮するかマイナス235度まで冷やして液化し、使用する場所まで輸送しなくてはいけない。

テクニオンの研究者のアプローチは、酸素を発生させるセルと水素を発生させるセルを分離することだ。従来のPECは正極とと負極を同じセルに入れて浸透膜で仕切りOH-イオンを移動させていたが、提案されているシステムでは、浸透膜の代わりにニッケル系化合物の電極を使用して、負極側反応で生じたOH-イオンの電子を奪い、正極側でOH-イオンを生成することでOH-イオンが負極側から正極側に移動する状態を作り出す。

これにより、酸素を発生させるセルはPECセルを大量に並べた大規模プラントにして、電線でつないだ遠隔地に水素だけを発生する施設を作ることが可能になった。その場所に燃料電池自動車のための水素スタンドを設置して水素を供給するネットワークを構築することが可能となり、水素エネルギー利用に拍車がかかることになる。ちなみに、この方式を紹介するテクニオンのウェブサイトの記事のタイトルは、「水素オンデマンド」となっている。需要(デマンド)がある場所の近くで供給することが可能になる技術開発ということだろう。

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