original image: © Shimon - Fotolia.com
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イスラエル・イノベーション庁(Israel Innovation Authority)(以下、IIA)が、2017年のアニュアルレポートで、今後10年で同国のハイテク業界で働く人の数を現在の27万人からほぼ2倍の50万人に増やす計画を発表した。
イスラエルのハイテク業界は、毎年600社という多数のスタートアップを続々と生み出し、インテル、グーグル、アップル、IBMといった多国籍企業が307ものR&Dセンターをイスラエルに置いているなど、目覚ましい成功を収めている。しかし「ハイテク労働者を劇的に増やさない限り、この成功は行き詰まり国際的な優位性が失われる」という危機感があるようだ。こういうことは、問題が顕在化してから対策を検討するのでは間に合わない。
ハイテク分野で働く人は労働者の8.3%に過ぎず、過去10年間に大きな変化はない。ハイテク以外の分野の平均給与(月額)が9,800イスラエルシュケル(約31万円)なのに対し、ハイテク産業は21,000イスラエルシュケル(67万円)と2倍以上、さらにハイテク業界の給与は2005年から2015年で38%上昇している。
それでも労働力の流入が起こらないのは、大学で情報科学やコンピュータ科学を専攻していた人でなければ業界で上手く行かないという認識が労働者側にも企業側にもあるためだ。イスラエルはアメリカに倣って、コーディング・ブートキャンプをIIA主導で行い、学生時代に他の分野を選んだ人々の取り込みを図っている。
ハイテク労働力倍増に向けては、さらに多国籍企業を呼び込むとともに、自国のスタートアップをベンチャーから本格的な企業へ成長させるよう支援し、研究開発以外のサービス面などでも技術者の雇用を増やそうとしている。
また、情報通信技術(ICT)への偏りを見直して、生命科学など他の成長分野を開拓。既存の製造業にも、トレーニングと資金の提供によってイノベーションを起こすよう誘導している。また、現状2割にとどまっている女性のハイテク労働者を増やし、人口の2割を占めるアラブ人や、超正統派ユダヤ教徒など、これまでハイテク業界に余り取り込めていない人々も誘導するという。
変化の早いハイテク産業の場合、習得した技術の陳腐化も大きな課題だ。イスラエル労働省はイスラエル工科大学(テクニオン)とともに、中高年のソフトウェア技術者を対象にした技術リフレッシュ課程の提供を行っているという。
【参照情報】
・ISRAEL INNOVATION AUTHORITY REPORT 2017
・Israel aiming to double its tech workforce in a decade
・Israel Innovation Authority aims to double high-tech workforce in 10 years
・Facing Potential 'Dead-End,' Israel Aims to Boost High-Tech
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