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アメリカハイテク業界で日本企業が嫌われてしまう理由
Why Japanese companies are not welcomed by US tech companies
2017.11.29
Updated by Mayumi Tanimoto on November 29, 2017, 11:15 am JST
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Why Japanese companies are not welcomed by US tech companies
2017.11.29
Updated by Mayumi Tanimoto on November 29, 2017, 11:15 am JST
先週末からネットでシリコンバレーで日本人が嫌われているという新聞記事が話題になっています。
日本人が嫌われる理由は
・意味不明な「ご挨拶」にやってくる
・意思決定権がないのに面会を希望する
・情報を一方的に取るばかりで与えない
・対面であっても何の成果もない
といったものです。
これは今に始まった話ではなく、海外、特に英語圏や北部欧州で日本と現地の間で仕事をしている人であれば40年以上前から知っていることです。
私はアメリカ、イギリス、イタリアで仕事してきましたが、日本人は実際嫌われています。日本人というよりも正確にいうと「日本企業」ですね。特にIT業界ではかなり迷惑がられています。
なぜ嫌がられるかは前述の記事の概要のとおりですが、なぜ日本企業は相手の時間を奪うような行動をとってしまうのか?
その理由は、人間関係の作り方の違いと、コスト管理の杜撰さです。
日本はムラ社会なので、ビジネスをするにあたっては、まずは相手と関係を作ることを重視します。相手が自分のムラにあうか、害がないか、気が合うかどうか、信用に値するかどうかを、対面での対話、飲み会、行事等を通して知り、時間を掛けて確認作業をするわけです。
しかし一旦気心が知れれば、契約書なしで仕事をしたり、阿吽の呼吸で進めますし、長い目で付き合うことが多いですね。ですから、一旦信用されれば日本式は実は楽といえは楽です。
北米や欧州でも、日本企業と付き合いが長い現地の人はこれを知っていますので、日本人の「表敬訪問」や「情報交換」の意味を理解しています。日本企業の中で働く北米や北部欧州の人も同じで、一旦雇われれば、ペイは少なくても契約は長期になりがちで、よっぽどのことがなければ関係を終わりにしない、ということを知っています。
一方、北米や欧州北部のテック系スタートアップや、ITのサプライヤーサイドで多忙なところは、面談は「何か成果があること」が前提で、お茶のみやご機嫌伺いという文化がありません。相手の関係性は契約書によるものであり、メリットがないとなれば容赦なく終了です。
移民が多く、歴史も複雑なので、社会を構成する人が多様です。したがって、相手とは共通することが少ないという「ローコンテクスト文化」なので、契約重視のドライな関係になってしまいます。しがらみとか馴れ合いとは遠いですね。前述した日本と付き合いの長い企業と言うのは、例外で、こういうドライな方が主流です。
もう一つ重要な点は、コスト管理の部分です。日本よりも労働時間の管理が厳密です。インプットに対するアウトプットの評価がシビアだということです。
働く人の雇用形態も多様で、日本と異なり、個人事業主やコンサルタントも入っています。彼らは短期雇用前提なので、一時間あたりの単価が高額です。例えば人によっては日給15万円、時給が2万円なんて人は珍しくありません。職場によっては社員は2割以下で、こういうコンサルタントが8割ということもあります。このあたりは日本と事情が違います。
つまり、例えば日本企業のご挨拶に時給2万円の人間3人が対応したとなると、全部で2時間かかったら人件費だけで12万円、さらに間接費として会議室代もかかりますから、総コストは恐らく15万円ぐらいです。ロンドンのような都市だと会議室代も高額です。
面会対応にOKを出した人間は、15万円の経費をかけて成果は何だったかを問われることになります。細かいマネージャーや経営者ですと、なぜそんな成果のない面談に単金の高いコンサルタントや技術者を出席させたのか、と厳しく追求することもあります。
外部コンサルタントは文句を言うでしょう。出席している間自分の仕事ができないからです。
スタッフも、出席をアサインされた際に、出席の意義は何なのか、自分のターゲットに対してどんな貢献があるかと聞いてきます。マネージャーに対してアサインメントに関する質問をするのは当たり前のことです。
在宅勤務の人も多いですから、対面での面談となると自宅でのあれこれを調整して出勤してこなくてはならない人もいます。家が遠方や海外にある人もいますので、大変な手間暇です。
情報を提供する場合もっとシビアで、情報を数十万円、下手したら数百万円で商品として売っているので、成果ないのは大問題になります。その知識を獲得すのに本人も会社も多大なコストを払っているわけですから。
しかし日本企業の人は、コンサルティングであれば1日30万円チャージする人を呼び出して話を聞かせて欲しいといったり、ただで話を聞くために夜遅くまでの飲み会への出席を要請したりします。これでは相手が怒って当たり前です。レストランで散々食べて、正当な対価を払わない食い逃げのお客さんと変わりません。
日本では働き方改革云々が話題ですが、残業がない、転職が容易だという話の前提には、こういうドライな人間関係や、厳しいコスト管理という背景があることはよく理解しておくべきだと思います。
つまり改革云々とお題目を唱える以前に正当な対価を払えということです。
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登録はこちらNTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。