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GPSの電波を疑似的に生成するインドア・ナビゲーション

2017.12.18

Updated by WirelessWire News編集部 on December 18, 2017, 07:00 am JST

長いトンネルを走っていてもカーナビは自分がトンネルを示すライン上を走っていることを示し続けてくれるが、GPSの衛星からの信号は受信できていない。昔から船や飛行機で使われているジャイロ、つまりは独楽(こま)のように回転する物にかかるコリオリの力で生じる角速度の変化を使って、どちらに向かっているかを判定し、これに自動車のスピードと、さらには地図上では道路の上を走っている「はず」という情報を組み合わせて、衛星からの信号なしでも場所を推定して表示してくれている。

GPSは3機以上の衛星からの信号から3次元の位置情報を計算するので、トンネルや大型商業施設、倉庫、炭鉱、その他、屋根などで電波が遮られてしまう場所では使えない。スマートフォンにはジャイロセンサー搭載モデルも一般化してきて、「ポケモンGO」などでは必要条件になっているが、IoT時代には専用のハードウェアは歓迎されない。

そこでスマートフォン側やIoT装置側には特別なハードウェアを要求しない様々なインドア・ナビゲーションの仕組みが工夫されてきた。Wi-Fiのアクセスポイントや、専用のビーコンなど電波を出すハードウェアをいくつも配置して、そこからの方向や距離をベースに計算する方法が一般的だ。ただしこれらは、スマホに専用ハードは不要なのだが、専用アプリが必要になる場合が多い。

イスラエルのスタートアップ「Galileo Satellite Navigation社のインドア・ナビゲーション」は、GPS対応の機器ならばスマホでもIoT装置でもそのまま使えるという特許技術で構成されている。

同社は、「屋根に仮想的な穴を開けて、GPSの電波を受信する技術」と表現しているが、受信側には特別なハードもソフトも必要ない。天井に4基のアンテナを配置して、そこから天空のGPSが発する信号と同じになるはずの信号を発する。衛星との間に屋根や地面がなければ、GPSの電波信号はこのように届くはず、というのを計算して信号を放射する。GPSの電波を受信して中継するということではなく、アンテナはGPS受信機とは無関係に配置できる。

GPSの信号は基本的には電波を発した精密な時刻の情報で、これと受信時間の差に電波の伝播速度を掛けて距離を割り出しているだけなので、疑似的に信号を発することが可能ということのようだ。ジャイロセンサーなどと組み合わせることができるスマートフォンでは精密な位置情報の特定が可能になるし、ハードウェアやソフトウェアをコンパクトにまとめたいIoT機器でも既存技術で対応できてしまう。

ちなみに、ガリレオで衛星と言えば、EU(欧州連合)が構築中の航法衛星システム「ガリレオ」と混同しやすいが、イスラエルのGalileoは米国のGPSを使うようだ。現在、エルサレムの旧市街の観光客向けにエルサレム開発局とともにシステムを構築中だという。

【参照情報】
Israeli startup aims for flexibility with GNSS software receiver
Israeli startup facilitates intra-building navigation

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