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カイザリア(Caesarea)の遺跡にある入江で遊ぶ子供たち

出生率の高いイスラエル

2018.01.17

Updated by Hitoshi Arai on 1月 17, 2018, 12:00 pm JST

イスラエルは共働き世帯が多いにもかかわらず、安定して出生率が増加しており、女性1人あたり子供3人に達している(「ISRAEL'S FAST EVOLVING DEMOGRAPHY」)。日本の出生率は、2016年の統計値で1.44、この倍以上だ。超正統派ユダヤ人グループの存在が貢献してはいるものの、世俗派(宗教や律法にあまり縛られない人々)でも出生率は増加しているとのことだ。

超正統派ユダヤ人グループは、仕事はせず律法を厳密に実践する人たちのことであり、避妊は禁じられているので平均6人の子供を持つという統計もある(「Israel's Haredi Population: Progress and Challenges October 2015」)。

では、政府から手厚いサポートがあるかといえば、妊娠出産に関わる医療費、高齢出産の際の不妊治療が社会保険でカバーされている程度である。出産してからは、女性には産後3ヶ月間の有給の産休と、更に3ヶ月の無給産休を取得する権利が守られてはいる。しかし、生活費も高いので産後3ヶ月で戻らざるをえないケースも多い。

日本では保育園不足も大きな課題だが、その点はまだ恵まれている。保育士になるための資格が不要なので、選り好みしなければ託児施設は見つけられないことはまずない。しかし、その利用料金は、平均で1ヶ月9万円弱と高額だ(「Cost of Living in Israel」)。児童手当も、1人目の子供であれば月額150シェケル(5千円程度)と決して多いとは言えない(「HomePage, National Insurance Institute」)。ただし、子供が2人であれば338シェケル(1万1千円程度)、3人であれば526シェケル(1万7千円程度)と僅かだが増額される。いずれにせよ、祖父母の経済的、労力的支援なしにはやっていけない家庭が一般的だ。多くの若い夫婦は、その両親の家の近くに住むことが多い。

それでも出生率が増加する理由は、二つ考えられる。一つ目は、ユダヤ人は子孫繁栄してゆく家族を築くことをとても重視しており、家族が仕事よりずっと大切だと考える人が多いことである。安息日には家族で過ごすことが多いため、日本人とは比較にならないほど夫婦や家族で過ごす時間が長い。

二つ目は政治的な理由である。イスラエルは民主国家であり、現在二十数%のイスラエル・アラブ人口が過半数を超えればユダヤ人国家ではなくイスラム国家となってしまう(「イスラエル・パレスチナ問題Q&A」)。したがって、たとえ世俗派のイスラエル人であってもユダヤ人口増加率がアラブ人口増加率を上回らない限り、ユダヤ人国家は存続できないという恐怖観念を抱えているという。ホロコーストの経験から、ユダヤ人には「生き残らねばならない」という「collective memory(集団的記憶)」が埋め込まれている、と彼らは良く口にする。

経済的事情や仕事上のキャリアとは関係なく、男性も女性も親となることを当然と考えているようであり、また、周囲も子供を持つことをとても祝福し、応援する。何よりも、子供を持ち育てること、家庭を育むことが楽しいことである、という常識がありそうだ。結婚や出産が、仕事やその他の条件との二者択一になりがちな日本とは大きく異なる点である。

※写真提供:Yoko Yamaguchi氏(イスラエル在住)。

テルアビブ近郊のラアナナにある大きな公園。すごく大きい公園だが、子供が多いので週末はとても混んでいる。

テルアビブ近郊のラアナナにある大きな公園。すごく大きい公園だが、子供が多いので週末はとても混んでいる。

日差しの強いイスラエルでは皮膚がんの恐れも高いので、殆どの公園には日除けが設置されている。

日差しの強いイスラエルでは皮膚がんの恐れも高いので、殆どの公園には日除けが設置されている。

出生率の高いイスラエル

出生率の高いイスラエル

冒頭の写真
カイザリア(Caesarea)の遺跡にある入江で遊ぶ子供たち。カイザリアの名前はローマ皇帝カエサルにちなむ。十字軍により作られた要塞や円形劇場がある。今も遺跡の発掘・修復が行われている。

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新井 均(あらい・ひとし)

NTT武蔵野電気通信研究所にて液晶デバイス関連の研究開発業務に従事後、外資系メーカー、新規参入通信事業者のマネジメントを歴任し、2007年ネクシム・コミュニケーションズ株式会社代表取締役に就任。2014年にネクシムの株式譲渡後、海外(主にイスラエル)企業の日本市場進出を支援するコンサル業務を開始。MITスローンスクール卒業。日本イスラエル親善協会ビジネス交流委員。E-mail: hitoshi.arai@alum.mit.edu