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筆者は一昨年までリサーチ会社に所属し「生活者研究」を業務としていた。今の生活者にどのような傾向があるのか、膨大な量のデータを解析し、時に実際に生活者に会いながら、企業がマーケティングをより効果的に行うためのノウハウを探求するのが仕事だ。生活者を見ていると、マーケティングという視点だけでなく、人事や経営者目線で企業にも個人にも有効なことがいろいろと見えてくる。そしてそれは共通点が非常に多い。生活者が働いているのだからある意味当然のことであるが、実はこれらをつなげて考えることは意外と少ない。この特集の中ではマーケティングと働くことの様々な共通点や相違点について書いていきたいと考えている。

「従業員は家族だ」という考え方は今も昔も変わりなく経営者がよく口にするセリフだ。しかし、その意味は大きく変わってきている。旧来、日本で夫婦とは一度結婚したら生涯添い遂げるものであると信じられており、離婚すること=我慢が足りない、とまで言われることもあった。ところが平成28年厚生労働省発表の人口動態統計によると年間の婚姻数は620,531件、離婚数は216,798件となっており、人口減少などにより婚姻数が低下していることもありながらも、単純計算で3組に1組以上の夫婦は離婚しているのである。

また、誰もが「友達親子」という言葉を聞いたことがあるだろう。「子供に対して、親として権威を持って対応するのではなく、若者という共通の土俵で友人のように接しようとする」ことで、1990年代半ばから顕著になった現象である。

夫婦は結婚してみたもののお互いに条件が合わなければ離別し、未婚や再婚の道を選択すればよい。父親は家長として絶対的な権力を持っていて妻や子どもは口答えできないのではなく、同じ目線で話し理解しあう必要がある。最近は反抗期がない子どもが増えたとも言われているが、仲良く輪を乱さない家族を保つために子どもが親と衝突することは百害あって一利ないのである。人間の脳の成長の中で起こる生理現象を環境が変えてしまったということだろう。

この現象を企業に置き換えて当てはめてみるとどうなるか。

年功序列、同じ会社で定年まで勤め上げることが当然であった時代は変わり、個人がスキルアップしながらキャリアアップのために転職するということはごくごく普通の時代になった(=夫婦が添い遂げることが絶対ではない)。

上司と部下の関係は上司に絶対服従ではなく、上司と部下が役職に関係なく自由に議論し、部下がよい発言をしたらそれを採用する。そのようなコミュニケーションの活発な企業は人気が高く、そして業績もよい(=友達親子)。

さらには、家族の形は多様化し、その形態は様々である。「結婚して子どもを設ける」、「結婚しているが子どもは設けない」、「入籍はせずにパートナーと暮らす」、「同性同士で結婚する」、「シェアハウスで仲間と暮らす」、「独身を貫く」など書ききれないほどたくさんの形がある。

企業は自社に最適な従業員との「組み方」を見つける必要があるし、個人は自分の志向にあった企業を見つける必要がある。企業も個人も「自分で選択する」幅は以前よりも広がっている。

「従業員=家族」と例えることは一見古く感じるが、中身を比べていくと類似点が多く、現代でも通用する理屈は少なからず存在する。ただし、世の中の変化に合わせその意味を柔軟に変えていかなければならない。

有名なダーウィンの名言「生き残る種とは、最も強いものではない。そして最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである」という言葉がある。この言葉に従えば、企業も個人もおのずと進むべき道が見えてくるのではないだろうか。

緒方直美(おがた・なおみ)

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特集:採用と活躍の技術

社員の行動データを収集・分析し、業務効率化・業績向上、人事に生かす手法として注目されているピーブルアナリティクス(People Analytics)に代表される人事関連技術(Human Resource Technology)は人工知能関連のアルゴリズムが導入され始めることで本当に効果があるのかどうかが試され始めた。一方で“働き方改革”による労働生産性向上は国を挙げての喫緊の課題として設定されている。この特集では全ての人たちに満足のいく労働環境はどのように実現できるか、そのために人事関連技術はどこまで貢献できるのかを考えていく。データサイエンティスト/ピープルアナリストの大成弘子(おおなり・ひろこ)とアナリストの緒方直美(おがた・なおみ)を主たる執筆者として展開。

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