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LINEとも連携、AIでユーザーの行動を予測――台湾AppierのAIソリューション【前編】

2018.04.17

Updated by Naohisa Iwamoto on April 17, 2018, 06:25 am JST

「AIをより簡単にしていきたい」

こう語るのは、台北に本社を構えるAppier(エイピア)の最高経営責任者(CEO)兼 共同創業者であるチハン・ユー氏である。Appierは、AI(人工知能)を活用して企業がマーケティングなどの経営課題を解決できるようにするソリューションを提供する企業。「Appier CrossX運用型広告プラットフォーム」「Aixon(アイソン)」といったプラットフォームを提供し、AIによる企業の価値創造を支援する。

▼AI市場の拡大を説明するAppier CEO 兼 共同創業者のチハン・ユー氏20180417_appier001

AIは社会や産業、生活の様々な側面で活用が始まっている。チハン・ユー氏はAI市場について、2017年から21年まで年率50%を超える平均成長があり、2025年には50兆ドルに達するという調査結果を示した。そうした中でAppierがターゲットとするのは「B2B、エンタープライズの領域」(チハン・ユー氏)だという。こうした市場環境に対応するため、R&D部隊は本拠地の台湾に加えて、シンガポールにも設けた。2017年には日本で東京に続いて大阪に2番目のオフィスを開設するなど、現時点までにアジアの12の市場に対して14のオフィスを設けるに至った。

AIは、グーグルの囲碁AIの「アルファGO」に代表されるように、人間を超える機能を提供し始めている。そうした中でチハン・ユー氏は「Appierのお客さまがAIの超人的な機能をいかに享受できるか、そこが私たちの興味だ」と語る。その根底にあるのは「お客さま」である企業のニーズだ。「ユーザー本位」の思考に、「拡張性」「インパクト」を加味した製品開発を心がけているという。

ユーザーの行動を把握し、予測するAI

こうした製品開発によって、AIはユーザー企業をサポートするソリューションを提供する存在になってきている。チハン・ユー氏によれば、「すでにマーケティングの分野でも、2つの商品を提示したときにどちらの購買率が高いかを予測した場合には、プロのマーケターでも6割程度の正解しか得られないのに対して、AIは8割程度の正答を得ることができる」。AIは、マーケティングの実際の可能性を高めるツールになりうるというのだ。

そうして開発、提供されているのが、パソコンやスマートフォン、タブレットといった複数のデバイスを利用するエンドユーザーをAIによって推定するマーケティングプラットフォームの「CrossX」であり、企業が持つビッグデータなどを活用してエンドユーザーの動向を推定するデータインテリジェンスプラットフォームの「Aixon」である。

▼Appierが提供する2つのプラットフォームである「CrossX」と「Aixon」20180417_appier002

最高データ責任者(CDS)のシュアン・テン・リン氏は、「データの爆発的な伸びがAI時代の基本」と前置きした上で、こう語る。「これまでのAIは、人間のように振る舞ったり、合理的に意思決定をしたりすることを目標にしてきた。しかし、AIの定義は変わってきている。ビッグデータは料理でいうところの材料に相当し、機械学習などのAIの技術は料理の技法に相当する。一方で最終的に人間が求めるのは美味しい料理であり、それがコンピューターとAIの成果になる。AIが人のために機能すること、すなわち使いやすいAIを提供することが、今後のAIの目標になるべきだ」。

Appierでは、CrossXやAixonといったプラットフォームを用意する。これらは、AIを使った成果をユーザー企業が使いやすくするために提供しているというわけだ。CrossXでは、クロススクリーン時代になりエンドユーザーが複数のデバイスを使うようになったときに、AIの力を借りて「どのデバイスを誰が使っているか」の洞察を提供する。スマートフォン、タブレット、パソコンとデバイスを使い分けている人を特定し、「デバイス単位」ではなく「人単位」のマーケティング施策を実行できるプラットフォームである。

Aixonでは、エンドユーザーのデータや企業が持つビッグデータ、各種のオープンデータなどを融合して、未来の予測をすることでベストアクションを提案する。アクションの最適化、指標の最適化をすることで、企業はより難しい課題に取り組めるようになる。

LINEとも連携、ユーザーの動きをパーソナライズ化して捉える

プロダクトマネジメント担当ヴァイスプレジデントのマジック・ツー氏は、Appierの現在のプロダクトが提供する機能を、大きく3つにわけて説明する。「1つ目は、CrossX techと呼ぶもので、複数のデバイスを1つのオーディエンスビューにまとめあげるサービス。2つ目はディープファネルの最適化で、広告やアプリを提供している場合に、インストールした後の挙動を推測し、価値の高いユーザーを見極める。アプリを頻繁に利用するか、アプリ内課金を利用するかといった振る舞いを予測するような機能を提供する。3つ目は不正検知。広告主から不正にお金などを奪おうとする行為を予測する」。こうした機能を提供することで、企業が顧客にどのようなアプローチをとったらいいかのレコメンデーションを行えるというのだ。

製品担当マネージャーのベン・チャン氏は、「Appierのソリューションを使うと、企業内にデータサイエンティストのチームを作らなくても、AIを使ってオーディエンスのペルソナを様々な側面から把握できる」という。今後7日以内にコンバージョンしそうなエンドユーザー、似たようなタイプのエンドユーザーなどを抽出し、すべてのエンドユーザーに一斉配信するのではなく、関心の高い人にだけ必要な情報を送るマーケティングが可能になるというのだ。

例としてベン・チャン氏は、Aixonを使って「日本への旅行を計画している顧客にEメールでマーケティングメッセージを送付する」デモを行った。オンライン上の閲覧傾向やユーザーの興味から、「Japan」「Travel」といったキーワードでセグメンテーションを実行し、対象となる顧客にだけメッセージを送ることでコンバージョンを高める方策だ。

▼LINEとAixonの連携を説明する製品担当マネージャーのベン・チャン氏20180417_appier003

Appierが2018年4月10日に新しい機能として発表した、AixonとLINEの連携もこうした機能提供の一環だ。LINEアカウントの各種機能をAPIで活用できる「LINEビジネスコネクト」と、Aixonを連携させることで、高いコンバージョンが期待できるユーザーに対して最適化したメッセージを簡単に送ることができる。「LINEはアジアで最もパワフルなメッセージングプラットフォームであり、AIで予測したセグメントに対して最適なメッセージを提供できる。購入が終わっていないユーザーにクーポンを送ったり、名前入りのメッセージを送ったりすることで、コンバージョンを高められる」(ベン・チャン氏)。

企業向けAI専任開発部長のチャールズ・エン氏は、こうしたコンバージョンの予測に、高い同社のAI技術が用いられているという。「Aixonは、複数のソースからデータを引用できる。ユーザーの興味、Webサイトの行動、ユーザーの閲覧、アプリの使用データ、プロダクトの属性などのログ、キャンペーンの振る舞いやパートナー企業が持つデータ、さらに社内のCRMのデータとも連携してモデルを改善することができる。ユーザーのどの振る舞いがコンバージョンに対してプラスで、どの振る舞いがマナスになるか。ディープラーニング(深層学習)によって特定の高度パターンを捉え、ユーザーを表現する」。

▼Aixonは多様なデータからコンバージョンを予測する20180417_appier004

こうした「ユーザーのセグメント」のAIによる実行には、ユーザーの振る舞いのデータを使い、電話番号やメールアドレス、名前といった個人情報は使わない。プライバシーは守りながら、企業がエンドユーザーにとって興味がある情報を無駄なくパーソナライズ化して届けることを支援する。AIをより簡単に、より使いやすくする。そうしたAppierの「AIファースト」の考え方が、AIの利用を企業にとってより身近にしていくことにつながっていく。

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【報道発表資料】
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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。