株式会社NTTデータは2018年2月、SNSやブログといったインターネット上の声をAI(人工知能)で解析し、市民が潜在的に地域・コミュニティに抱える意識や感情を理解するソリューションを開発すると発表した。
スペイン・バルセロナに本社を構えるベンチャー企業Social Coin(ソーシャルコイン)社との協業によるもので、自治体や地域ビジネスに取り組む企業向けとなっている。
このソリューションは、Social Coin社のAIを活用した独自クラスタリング技術、NTTデータが保有する全世界のTwiiterデータおよび言語解析技術を掛け合わせるものだ。解析したデータから、地域課題を解決するためのアイデアやヒントの参考とし、解決へとつなげていく。
また、都市間で多角的に比較することができ、対象となる地域・コミュニティにおいてどのような課題があるか、それはポジティブなものかネガティブなものかなど、広く一般市民の声を分析、抽出することが可能になるという。
例えば、とある地域で交通の便に関するネガティブな話題が多かったとする。しかし、SNS上での市民の要望や声からは、交通の便よりも「運転の荒さ」「乗車口のスロープ設置が遅れている」といった課題が抽出されたとしよう。この課題を企業や自治体などと共有し、課題解決に取り組むことで、より暮らしやすい環境が実現する。
なお、課題は利用者の知りたい軸でカテゴライズできるAIを開発している。例えば、「交通機関」「高齢化」といった広めのカテゴリから、「バス」「タクシー」「介護」といった細かい分類までカテゴライズ可能で、利用者のニーズに合わせて課題抽出できる。
▼地域理解ソリューションのイメージ 出典:NTTデータ
今回の発表は、国連が193ヵ国の合意のもと「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」が定められ、地球規模での社会課題・地域課題の解決が求められるようになったことが背景にあるという。社会課題や地域課題解決のためには地域に対する市民の声を網羅的を抽出することが求められるが、その抽出がこれまでは困難であった。
両社は、本ソリューションを活用した地域分析コンサルティングサービスを提供していくにあたり、2018年3月に両社が推進母体となる「地域課題発見ラボ」を立ち上げた。
日本やスペイン、世界の主要都市間のデータを比較分析し、地域課題の深堀やソリューションの導出に取り組むことで、SDGsに関連付けた地域課題に関する知見を深め、地方創生や地域活性の課題解決の材料を自治体や起業、団体へ提供していくという。
また、本ソリューションのファーストユーザーとしてNTTデータが大手町に立ち上げたイノベーション創発施設「BeSTA Fintech Lab」に提供する。BeSTA Fintech Labは地方銀行のオープンイノベーションの取り組みをサポートしている。さらに本ソリューションを活用することで、地域や地方銀行の課題を抽出し、活動の高度化につなげる。
今後の目標としては「地域課題発見ラボ」による地域分析の知見を提供していくとともに、2018年度中に両社で国内10クライアント、海外20クライアントでの分析コンサルティングの受注を目指す。2020年度を目標に、地域の課題解決に向けて市民を動機づけし、直接参画・解決することが可能な市民参画プラットフォームの開発も目指すとした。
(執筆:高木健太)
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