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テレワークは福利厚生ではなく「経営戦略」だ──第3回スキルアップセミナー。

テレワークは福利厚生ではなく「経営戦略」だ──第3回スキルアップセミナー

2018.12.21

Updated by WirelessWire News編集部 on December 21, 2018, 10:30 am UTC

「テレワークを導入することは、福利厚生の充実などというレベルではない。企業の重要な経営戦略と捉えるべきだ」。セキュアIoTプラットフォーム協議会(SIOTP協議会)が会員に向けて実施した第3回スキルアップセミナーで、キャリアシフト代表取締役で同協議会監事でもある森本登志男氏は訴えた。今回のスキルアップセミナーは、IoTのセキュリティでもITのセキュリティから少し離れて、企業が直面する人材流出などによる経営リスクを見直すことを趣旨とした講演となった。

森本氏は、佐賀県CIOの職にあったときに佐賀県庁にテレワークを導入した実績を持ち、現在は総務省のテレワークマネージャーとして自治体だけでなく企業にもテレワークのコンサルティングを行っている。その実績と経験を活かして「企業がなぜテレワークに取り組むべきか」が解説された。

人材流出が増え、採用が困難になる企業とは

2019年4月からは大企業で、2020年4月には中小企業でも「働き方改革関連法」が施行される。政府が外国人受け入れ政策を「大転換」したことからもわかるように、働き方改革は国の政策の1丁目1番地と位置づけられている。そしてこの働き方改革法には罰則規定がある。違反した雇用主に対しては懲役、罰金、さらに企業には入札停止処分が課せられるなど影響が大きい。

ただし、「罰則の多寡よりも大きなリスクを企業は抱えることになると認識する必要がある」と森本氏は警鐘を鳴らす。それが社員の流出と採用難である。

「社員には、親の介護や子育てのようなライフイベントがある。企業は今までこうしたライブイベントへの社員の対応を見て見ぬ振りができたのだが、これからは違う。社員はインターネットやテレビのニュースなどで働き方改革を実施している企業の情報を得て、自身の職場と比較している。自分が働く会社が働き方改革に取り組んでいないと知ると人材の流出が始まる。今までは、昇給などの報酬でつなぎとめて解決が図れたであろうが、今後はそういうわけにはいかない」(森本氏)。

さらに、働き方改革を無視するような企業に人材は集まりにくくなり、今までのように社員が辞めたから新たに採用して補うということが簡単ではなくなりつつある。これは中途採用だけでなく新卒採用でも同じだというのだ。

テレワークは福利厚生ではなく「経営戦略」だ──第3回スキルアップセミナー。

そして、人材が流出するような企業は、事業縮小を余儀なくされる。今までは、失注や競合の影響などによる事業縮小が多かった。しかし、最近は人員不足により事業拡大を断念するだけでなく、中には廃業となるケースも増えている。企業は働き方改革の取り組みを「経営戦略として真剣に考えるべきだ」と森本氏は厳しい言葉で指摘する。

企業にとって働き方改革の切り札は何か。

働き方改革関連法案では、一部の職種を除き、時間外労働の上限が月45時間、年360時間となっている。これを実現するためには、業務の棚卸しを行い、ワークフローを見直すことが必要である。そこで、取り組みの一つとして「まず社員をオフィスに集めることをやめてみてはどうであろう」と森本氏は提案する。

会議、打ち合わせのために、社員は資料の準備だけでなく、無理な時間調整を強いられることがある。客先の訪問を切り上げたり、わざわざ時間かけてオフィスまで戻って会議終了後にまた出かけたりするなど、多くの時間を浪費しているのである。「浪費の要因になっている会議や打ち合わせをWeb会議にするだけで、無駄に費やしていた時間が有効化される」(森本氏)。今回のセミナーの本題である「テレワーク」の実現である。テレワーク導入は、企業中心の考え方を人間中心の考え方に変え、業務効率をアップさせる手法となりうる。人材確保にもプラス面が大きく、講演では実際にテレワークを採用したことにより、求職倍率が一気に伸びた会社の紹介もあった。

テレワークは福利厚生ではなく「経営戦略」だ──第3回スキルアップセミナー。

実はテレワークは新しい概念ではなく、1980年代から言葉としては使われていた。その後2011年の東日本大震災を機に導入する企業が増え、さらには2017年には企業の採用難による導入増加もあった。現在もテレワークによる新しい働き方を採用する企業は増えつつあるが、それでも「テレワークは不要」という企業の方が多い。

森本氏は、「企業にアンケート調査を行うと、テレワークが不要と回答する企業では、『テレワークをやりたくない』『現行の就業規則を変えたくない』など、テレワークができない理由ではなく、やらない言い訳を回答にすることが多い」とその特徴を指摘する。昨今では、労働集約型産業の製造業であってもテレワークを導入するケースが増えている。現時点でテレワークをネガティブに考える企業は、いずれ人材に苦しむようになると認識すべきだというのが森本氏の見立てである。

テレワークに積極的な地方自治体の現状

佐賀県庁での経験を踏まえ全国の自治体にも提案を行う森本氏。講演では地方自治体の現状も説明した。「地方自治体では、県庁レベルではテレワークの導入や検討に入っているが、市区町村の対応は進んでいない。市区町村は窓口業務の比率が高いためにテレワークでの対応が難しいからだ」。

一方で、市区町村は別の意味でテレワークの取り組みに積極的である。それは、企業誘致、移住者誘致につながるとの考えからである。

2015年から総務省が「ふるさとテレワーク推進事業」を実施するなど、国も積極的にテレワークによる事業や移住者の誘致に取り組んでいる。通信回線などを整備し、地方に企業を誘致しようという考えであり、多くの地方自治体が同様の取り組を進めている。成功例としては徳島県神山町の事例は有名だ。

そして、「今後は都市近郊のサテライトオフィスも伸びてくると考えている」(森本氏)。例えば会社まで1~2時間程度の距離の社員に向けた取り組みである。今までは都心の職場に毎日通勤していたが、日によっては自宅最寄り駅のサテライトオフィス、コワーキングスペースなどで仕事をするというような働き方が実現できる。往復2~4時間といった通勤時間が労働時間に変われば、これは企業にとっても従業員にとってもメリットは大きい。

テレワーク推進に山積する課題

テレワークにはメリットは大きいが、導入までが「実は重労働」だと森本氏は語る。

テレワークは福利厚生ではなく「経営戦略」だ──第3回スキルアップセミナー。

まずは、経営者、経営陣の説得が一つの大きな山場になる。テレワーク導入のメリットを理解してもらえないと、当然ながら導入は進まない。また、業務やワークフローの洗い直しも求められる。テレワークに向かない業務は当然存在し、テレワークへの対応を考える必要がある。さらには、就労規定、労務規定を変更する作業も忘れてはならない。ただし、「それでも導入のメリット、非導入のデメリットの方が大きいはず」と森本氏は説明した。

そして、導入後の運用にも課題がある。テレワークは社員が自主的に利用できるようにしなければ進まない。利用しやすい環境を整備することが求められる。さらには、「自宅での勤務に慣れられず、しかしテレワークを実践するためには会社にも行けない」といった、いわゆる働き方難民が出てくる可能性がある。導入後のリスクを整理し、従業員へのフォロー体制は準備しておくべきだというのが森本氏の提案である。

森本氏が監事を務めるセキュアIoTプラットフォーム協議会では、11月27日に一般社団法人日本テレワーク協会とテレワークにおけるセキュリティガイドライン作成の協定を結んだ。今後、テレワークの推進とともに、テレワークにおけるセキュリティ対策についても共同で取り組んでいく。

セキュアIoTプラットフォーム協議会では、IoTのセキュリティに関するスキルアップセミナーを定期的に開催している。第4回は2019年1月下旬の開催を予定している。

詳細は、セキュアIoTプラットフォーム協議会Webページにあるイベント情報ページで確認して欲しい。

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