なぜ欧州や北米のIT企業は従業員を丁重に扱うのか?
Be nice to employees to improve productivity
2019.04.29
Updated by Mayumi Tanimoto on April 29, 2019, 10:00 am JST
Be nice to employees to improve productivity
2019.04.29
Updated by Mayumi Tanimoto on April 29, 2019, 10:00 am JST
日本のテック業界では、相変わらずデスマーチや35歳引退説が当たり前のことのように語られており、 働く人の労働環境は悪化する一方です。
報酬が低いだけではなく、Twitter などを見ておりますと管理職や顧客による叱責やパワハラのようなことも常態化しているようです。
例えば、インシデントが発生するとクールに対応するのではなく、担当者や技術者を怒鳴りつけたり、問題解決に注力するのではなく従業員を罰するようなことを行う企業も珍しくありません。
ところが北米や欧州のテック業界では、あまりこういった光景を見かけることはありません。
もちろんひどい会社もありますし、スタートアップ企業の中にはセクハラで訴えられるような会社もあるわけですが、しかし全体的にはそういったひどい状況というのは一般的ではありません。
これは、どちらも訴訟社会なので、従業員にあまりにも酷い扱いをすると、会社や上司個人に対して訴訟を起こされてしまうという背景もあるわけですが、実はもっと合理的な理由があります。
まずその一つというのは、近年テック業界の仕事というのは専門性が高くなっており、特に需要の高い技術分野では新しい人を雇うのがかなり難しいので、従業員の離職率を低くするためになるべく待遇を良くするということです。
在宅勤務を認めたり、オフィスのインテリアに気を遣ったり、社員食堂で健康的で美味しい食事を出す、 服装自由にするといったことも含まれますが、 インシデントが起きた場合に問題解決に注力してもらい叱責はしないといったことも含まれます。
二つ目に重要なのが、従業員に対して丁寧な方が組織全体の創造性が上がり効率が良くなるということです。
同僚や部下に無礼な人がいると、周囲で見ている人も、無礼な振る舞いをされた人も生産性や創造性が下がり、結果的にビジネスに対してマイナスになってしまう、という研究結果がでています。
つまり、従業員は丁寧に扱い、周囲には礼儀正しく振る舞うのが合理的ということです。横暴な管理職や従業員は、職場の雰囲気を悪化させ、生産性を下げるのでビジネスの敵です。
日本企業から創造的なソリューションや製品が登場しない理由というのは、職場の雰囲気が大きく関係あるかもしれません。
確かに、仕事の合間にサーフィンに出かけたり昼寝ができるような職場であれば、何か面白いことを考えてやろう、という気にもなるものです。
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登録はこちらNTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。