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長期利用が必要なIoT機器の信頼性確保を支援、サイバートラストが新サービス「EM+PLS」

2019.07.10

Updated by Naohisa Iwamoto on July 10, 2019, 06:25 am JST

製造したIoT機器の信頼性を、機器のライフサイクルに合わせて長期間にわたって担保することが、様々な分野で機器がIoT化する中で製造業の課題になっている。そうした製造業の課題解決を支援する新サービス「EM+PLS」の提供を、サイバートラストが発表した。

▼発表会に登壇したサイバートラスト 副社長 執行役員の伊東達雄氏(左)と、パートナー企業の東芝デバイス&ストレージ システムデバイス事業部 事業部長の松井俊也氏

EM+PLSはイーエムプラスと読み、EMbedded+Product Lifecycle Serviceの意味を込めている。具体的には、(1)長期利用できるIoT用Linuxの提供、(2)“本物性”を担保するトラストサービス、(3)コンプライアンスツールの拡充--の3つのソリューションからなる。製造業では、製造したIoT機器が10年、15年、20年といった長期にわたって利用される際のライフサイクルを担保することに加えて、信頼性のあるデータ流通基盤の確保、サプライチェーン全体のICTリスクの低減が求められる。EM+PLSでは、3つのソリューションによって、IoT機器に求められる多方面の信頼性の確保を支援する。

▼サイバートラストが提供する「EM+PLS」の3つのソリューション

(1)の長期利用できるIoT用Linuxの提供では、10年といった長期間利用に耐えるLinuxを提供する。ものづくりをする上で、すべて自社開発することは現実的でなくなり、多くをオープンソースソフトウェア(OSS)の利用に頼るようになっている。そうした中で、安心して使えるOSS環境として、10年間のパッチ提供をコミットする組み込み向けLinuxを提供する。(2)の“本物性”を担保するトラストサービスとしては、サイバートラストが提供してきた個体を識別してデバイス管理を実施するトラストサービス「セキュアIoTプラットフォーム」をEM+PLSのソリューションとして提供する。(3)のコンプライアンスツールの拡充では、製造段階から廃棄まで、開発段階から保守運用までの製品のライフサイクルに応じたコンプライアンスチェックツールを、サイバートラストだけでなくパートナーとともに提供していく。

▼トラストサービスとIoT機器に搭載する東芝デバイス&ストレージのマイコンを連携することで信頼性を担保

発表会では、EM+PLSが提供するトラストサービスのデモとして、セキュアIoTプラットフォームを利用した機器の真贋判定、廃棄処理のデモが行われた。デモで利用したIoT機器は、バッテリーパックと充電ステーション。正規品のバッテリーのマイコンには、信頼の拠点となる「トラストアンカー(固有鍵)」と「ルートオブトラスト」を搭載する。真贋判定のデモでは、バッテリーをトラストアンカーを備えていない模造品に交換すると、トラストサービス側ですぐに不正を検知して表示が「緑」から「赤」に変わった。また、廃棄のデモでは、トラストアンカーを備えた正規品の状態をトラストサービスから「廃棄」に切り替えることで、使用期限が過ぎたIoT機器を不正として検知できることを示した。トラストアンカーとルートオブトラストを搭載したマイコンは、パートナー企業である東芝デバイス&ストレージが開発に乗り出し、早ければ2020年後半にも同社製マイコンの標準仕様として機能の搭載を始める計画である。

▼正規品(緑色の帯)のバッテリーを模造品(赤色の帯)のバッテリーに差し替えると、充電ステーションの表示が赤地で「Fake」に変わることを示すデモ

EM+PLSのサービス提供へのロードマップとしては、まず「EMLinux」の試用版の提供を2019年7月9日に開始。次いで2019年秋に「EM+PLS」そのものの提供を開始する予定だ。さらに2020年以降、コンプライアンスチェックツールの拡充や、多様なサービスやパートナーとの連携、グローバル展開を進めていくという。

▼EM+PLSのサービス提供のロードマップ

EM+PLSの提供によって、車載機器や産業機器、民生機器などのIoT機器の製造から廃棄までのライフサイクルにおける機器やデータの信頼性を高め、さらにデータ流通の信頼性、サプライチェーンの安全性の確保につなげたい考えだ。

【報道発表資料】
サイバートラスト、製造業向けIoT用Linuxと製品の長期利用支援サービス「EM+PLS」を2019年秋より提供

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。