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なぜ日本からは画期期なFintechが登場しないのか?

画像はイメージです original image: © skyNext - Fotolia.com

なぜ日本からは画期期なFintechが登場しないのか?

Why innovative Fintech would not come from Japan? 

Updated by 谷本 真由美 on August 19, 2019, 08:59 am JST

谷本 真由美 mayumi_tanimoto

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

イギリスを始めとして欧州では、ここ数年フィンテックのサービスが大盛況でありますが、それには欧州特有の理由もあります。

イギリスはまだマシなのですが、欧州大陸の方は銀行のサービスがかなり雑です。

私が住んでいたイタリアの場合、口座からお金が消えたり送金したはずのお金がどこかに行ってしまうということが時々あります。

こんな事が起きても「システムが悪い」「なぜかわからない」と堂々巡りで誰も謝罪してくれませんし、解決に数ヶ月かかります。

ですから、口座を常に確認して残高やお金の動きを常に見ておくことは重要です。銀行すら信用できません。

また、街中のATMにカードをスキャンする機器を取り付けたり、歩行中や駅でやられてしまう強烈なスキミングも多いので、口座から不正にお金が引き出されてしまったりすることもあります。

さらに、店や銀行のATMからお金を下ろそうとしても、残高からはしっかりお金が引かれているのに現金が出てこない、ということもあります。

ATMが壊れていることもありますし、中に十分な現金がなかったりします。

人手が少なくなる夏季や夜間、夕方はこういうことが起こりやすいので、ATMを使うなら大手銀行の営業時間内に店舗内で、が安心です(しかし、それでもATMが故障していたり現金が出てこないのですが)。

ちなみに私も、何回か被害にあっています。

こんな状況なので、銀行に対しては安心ができません。問題が起きれば、苦情申し立てのために電話に張り付き状態になったり、紙の手紙で何度もやりとしします。

その紙の手紙が郵便局の怠慢でなくなったりすることも多いので、書留やクーリエで送らなければなりません。しかし、クーリエでさえも配送が適当なことがあります。本当に重要な書類は手渡しで持っていくこともあります。

この他にファイナンシャル・オンブズマンへの申し立てという作業も入ります。

ネットには、苦情申し立て用のテンプレートがアップされています。

場合によっては訴訟を起こさなければいけないので、既存の銀行のサービスにうんざりしている人々が多いのです。

そこで、サービスがもっとシンプルで、スマホから即時残高を確認できたり(既存の銀行は即時反映されないことがあります)、送金や支払いの際にはスマホから承認ができる、フィンテック企業が提供する銀行アプリやプリペイドカードが人気になります。特にミレニアム世代には大人気です。

日本だと、最近はQRコードを使ったペイメントサービスに人気が出てきています。ユーザーは多くの場合、ポイントやキャッシュバックが目的で申し込むようですが、欧州のような死活問題に関わるインセンティブがないというのは、実に幸せなことです。

その一方で日本では、フィンテックが提供するスマホ向けのデジタルバンクや多国籍対応のペイメントサービス、通貨両替サービスなどは出てきません。困っていないので必要ないわけです。

日本から画期的なサービスが登場しないのは、既存のサービスの品質が良いため、イノベーションの必要がないという理由がありますね。