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産業向けIoTシステムをワンストップで提供、IIJとアドバンテックが協業で

2019.08.22

Updated by Naohisa Iwamoto on August 22, 2019, 06:25 am JST

産業向けIoT(IIoT)のシステムを手軽に構築できるプラットフォームサービスが、台湾のアドバンテックとインターネットイニシアティブ(IIJ)の協業で始まる。産業用コンピューターで世界トップシェアを持つアドバンテックと、クラウド、モバイルネットワークを提供するIIJが手を組んで、日本国内でIoTプラットフォームサービスを2020年1月に始める。

▼WISE-PaaSの構成。エッヂデバイスとPaaS&ソリューションのレイヤーはアドバンテックが、クラウドとネットワークのサービスのレイヤーはIIJが受け持つ

日本市場向けに提供を始めるのは、「WISE-PaaS JP(仮称)」。WISE-PaaSとは、アドバンテックが2016年から提供するIIoTに特化したプラットフォームで、設備やラインの状況の可視化を進めることでリモート監視や予兆保全などを容易にする。日本市場では、IIJとの協業で、クラウドやモバイルネットワークも含めたワンストップのIoTプラットフォームサービスとして提供する。

アドバンテックは、産業用コンピューターや多様なPLC(プログラマブルロジックコントローラ)に対応したエッジアプリケーションなどのエッジデバイスのレイヤーだけでなく、WISE-PaaSで個別の業務に対応したアプリケーションのレイヤーもカバーしている。一方で、工場などに設置されたデバイスからのデータを収集するためのネットワークおよびクラウドのレイヤーはアドバンテックの主戦場ではない。日本市場でWISE-PaaSを提供するにあたって、クラウドとモバイルネットワークのセキュアなソリューションを持つIIJに、協業の白羽の矢を立てた。

▼生産機器や各種センサーから得た情報は、産業用コンピューターをゲートウエイとしてIIJの閉域網で接続。WISE-PaaSによるデータ可視化や分析を容易にする

WISE-PaaS JPでは、主に3つの特徴で日本市場の産業向けのIoTシステム構築を支援する。1つは「ワンストップ提供」。ネットワーク、クラウド、デバイスアプリケーションなど、IIoTに求められる機能をアドバンテックが窓口になってすべて提供する。2つ目は「セキュアなIIoTネットワークの提供」。有線からモバイルまで、IIJが提供する閉域のネットワークを利用することで、セキュリティを担保したシステムが構築できる。3つ目は「オープンな技術とマルチな選択肢の提供」。WISE-PaaSはオープンソースをベースにしているため、固有の技術などを習得する必要性が低い。また多くのPLCへの対応、マルチクラウド、マルチキャリアの対応により適した選択肢を使い分けることができる。

国内では、WISE-PaaS JPの販売はアドバンテックの日本法人が担当する。ただし、アドバンテックからの直販もあるが、より専門的な価値を提供するパートナーとしてDFSI(Domain-Focused SI)を介した販売形態が中心的となる。DFSIとしては日本ラッドを擁するほか、DFSIと協業するDFSIパートナーも募集して、ユーザーへの支援体制を整える。

▼特定業界に向けたSIはDFSIが担い、専門的な価値提供やサポートを行う。DFSIは日本ラッドが引き受ける

WISE-PaaS JPが提供するIIoTの価値としては、2つの側面を想定している。1つはインテリジェントファクトリーで、自社の工場などの運用管理に役立てるもの。もう1つは、インテリジェントマシンを提供するベンダーに向けたもので、工場などに納入する製品にIIoT機能を搭載することで、メンテナンスや予兆保全を容易にする。いずれの場合も、WISE-PaaS JPの利用により、IIJのセキュアな閉域モバイル通信を使うことで工場の既存ネットワークを使うことなく、手軽に安全なIIoTのネットワークがモバイルで構築できる。その上で、クラウドへの情報収集、アドバンテックが提供する業種業態に適したアプリケーションによるデータ分析が可能になる。

▼発表会の登壇者は左から、アドバンテック日本法人 インダストリアルIoTグループ iFactory事業部 ディレクターの古澤隆秋氏、アドバンテック CTOのアラン・ヤン氏、IIJ常務執行役員の立久井正和氏、IIJ IoTビジネス事業部長の岡田晋介氏

【報道発表資料】
産業用コンピュータで世界トップシェアの台湾アドバンテック社とIIJ、産業IoT(IIoT)分野でビジネス協業を開始

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。