画像はイメージです original image: motortion / stock.adobe.com
スキルのある労働者不足に悩む欧州
Lack of skilled workers in Europe
2019.12.16
Updated by Mayumi Tanimoto on December 16, 2019, 14:10 pm JST
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Lack of skilled workers in Europe
2019.12.16
Updated by Mayumi Tanimoto on December 16, 2019, 14:10 pm JST
現在欧州で比較的景気の良い国が直面している最大の問題には、共通点があります。製造業はじめ、ソフトウェアなどの理系業界は予想以上の好景気で、実は大幅な人不足なのです。失業率が高いというイメージがある欧州ですが、実は仕事はかなりあります。
それが一番顕著なのはドイツです。
ドイツがシリアから大量の難民を受け入れたのは、シリアには元々教育レベルが比較的高い人が多く、難民としてドイツにやってきてもすぐに有効な労働力として働ける人が少なくないからです。
ドイツは、2019年の終わりまでに15歳から64歳の難民の約40万人が労働市場に参入の見込みで、すでに40%近くが働いています。
働いている人のうち50%以上が熟練労働以上の職についており、2015年以後ドイツにやってきた難民の少なからずは、教育レベルが高く熟練労働者以上のスキルがあります。
最近の難民は、バルカン半島危機の際にやってきたボスニアやセルビア難民よりも就労スピードが早く 、ドイツ社会への溶け込みも早いことで驚かれています。旧ユーゴスラビアは、社会主義国ではありましたが経済や教育レベルは中程度で、基礎教育のレベルはそれほど悪くありませんでした。シリアはそれ以上ということです。
それでも、難民のすべてが需要があるスキルを持っていたり、ドイツ語に堪能なわけではなく、40万人が労働市場に新たに参加しても約120万人の労働力が不足しています。製造業だけではなく、頭が痛いのがテック業界位おける人材不足です。不足労働者のうち34万人がITを含むSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)業界で、労働者不足は1年で4万件近く増えています。
ドイツ政府はR&Dにも熱心で、現在GPDの約3%を占めるR&D支援費を2025年までに3.5%する予定ですが、問題は人材の不足です。
ドイツ政府は、アカデミック職や研究職に関しては高度人材をショートカットで雇用できる「ブルーカード」という仕組みがありますが、採用をさらに簡素化しスピードアップするために、移民法を大幅に改正することを検討しています。
なんだかどこかで聞いた話ですが、日本との大きな違いは、高度人材に特化して単純労働者を導入するわけではないこと、さらにスピード感があるということです。また、高度人材をR&D躍進のために入れるという明確な目標がある点も日本と違いますね。
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