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CEOの勤務評価はどうつけるべきか?

2019.12.19

Updated by Ryo Shimizu on December 19, 2019, 12:31 pm JST

今年から人事部長の立ち会いのもと、三役(CEO,CFO,COO)の相互評価面談をすることになった。

わりと長い経営者人生だと思っていたが、よく考えたら今年は業務執行責任者(COO)を別の人にして、僕は初めて純粋なCEOになった。

CxOの勤務評価は社内に前例がないため、初回だった今回は全員が自分の評価軸と評価を自分で考えて自己評価したものを発表して、相互にツッコミを受ける、という形式でスタートした。

CFOとCOOはそもそも役割が明確なので評価軸も評価基準もそれほど不自然なものには感じられなかったのだが、僕自身、つまりCEOの評価軸をどうすればいいのか悩んだ。

とりあえずやったことを列挙してそれぞれに点数をつけると、人事部長からは「行動が書いてあるだけで目的が書いてないので評価のしようがない」と言われた。
確かに、「なんのために」やるのか明確でなければ、尺度を持てない。軸がないからだ。

僕にとって今年の最大のテーマは「社長とはなにか?CEOとはなにか?」をひたすら自分に問うことだった。
これまでの僕は、肩書は社長やCEOであっても、あくまでもプレイングマネージャーのようなものだった。

自分で考え、自分で行動し、自分で結果を出す。
会社がピンチになったときも自分一人が行動すれば切り抜けられる。

こうした状態では、社員が何人いようとあまり関係がない。
いや、むしろ社員が多すぎないほうがいい。

人間一人のファインプレーで挽回できる金額には限界がある。
だから社員が多すぎると維持するのが難しくなる。

結局、僕はこれまで、社員数そのものは100人を超えることはあっても、直接の部下は常に20人が限界だった。
それは80人の会社を20人の会社が支配しているようなもので、うまくいくわけがなかった。

今年に入ってから、関連会社の部長級の経験者がたくさん合流してきて、まずは彼らとどう接すればいいのか戸惑った。彼らは超一流企業の部長級の能力を持つべく長い時間をかけて育成された人間たちであり、全員が僕より一回り近く年上だった。そもそも彼らはなぜ、わざわざ僕のところに来てくれるのか、そこから理解しなければならなかった。

しかし彼らが来てくれたことによって、組織は飛躍的に整理され、僕は完全に現場の仕事をしなくなった。いや、正確にいうとできなくなった。権限移譲をしていった結果、こうなった。

すると次に襲ってきたのは、「僕は実はなにもしてないのでは?」という恐怖感だった。
よく、役員は「お飾り」などと言われるが、実際に飾りになってしまうと混乱した。

では僕はいったいどうすればいいのだろうか。
僕よりふたまわりくらい年長の人事部長に何度も聞いた。僕はどう振る舞うことを期待されているのか。

そんなときに出会ったのがOODAループという概念である。
OODAループでは最初のO(Observe)と次のO(Orient)が最も大事だ。そしてOODAループは再帰的である。つまり、個人レベルのOODAループと、部レベルのOODAループと、経営レベルのOODAループがある。

観察(Observe)して方向性(Orient)を決定し、全体をゆるくコントロールすることで、全員が高速にループを回すことで全体が高速化される。

ループの最適化は職業プログラマ、特に僕のようなコンピュータグラフィックスを専門とするプログラマの得意分野だ。だからOODAループという概念は受け入れやすいと思った。

一度受け入れてしまうと、全てがOODAループに見えてきた。そしてOODAループでないものは美しくないと思えてきた。

だとすると、CEOとしての役割はO-O-D(Decision)まで。しかも決定(Decision)は一瞬のことなので、そのための観察と方針の見極めにもっぱら時間を割くことになる。会社において実際の行動(Action)を起こすのはCOOやCFOなので、僕はとにかく、前半を頑張ることに集中しようと考えた。

OODAループを組織に定着させる手法として、まず行動規範を作った。ベースにしたのはソニーの行動規範だ。

この行動規範の最も重要なことは、この行動規範に違反した場合、解雇を含む懲罰処分がくだされると明文化されているところである。

さらに、通報窓口が外部に用意され、通報者のプライバシーは保護される。しかも、通報者は社員に限定されていない。すなわち、ソニーグループの人間は行動規範に反する行為、たとえば人種差別やハラスメント行為を行った場合、外部通報によって内部調査され、事実認定のもとに処罰されるのである。

逆に言えば、行動規範は社員個人を守る盾にもなり得る。
たとえば、賄賂を持ちかけられても、「当社が公開している行動規範に反するので、それは受け取ることはできない」と固辞することができる。誇示しなければクビになるので、そこまでして賄賂を渡す人もいないだろう。

なるほど、と思い、自分でも行動規範をつくることにした。
単なる「べからず集」ではなく、OODAループを自分なりに解釈して個々人の行動に落とし込めるように工夫した。

OODAループを運用する上で最も重要なのは、企業文化への浸透だからだ。
この浸透させていく行為というのが非常に難しい。

行動規範はその手がかりのひとつである。

CEOとしての自分を明確に定義するのは難しい。仕事柄、CEOや社長の知人・友人は少なくないが、彼らのやり方をそのままコピーすれば良いCEOというわけではない。ロールモデルを見つけるのではなく、自らロールモデルになるくらいの気持ちがないと、CEOとしては適切ではないだろう。

そう思ったときに、ふと感じたのが、CEOにどうあって欲しいか、実際に働く人達の願いに耳を傾けるべきだということ。

とくに三役には「僕にどんなCEOになってほしいかを箇条書きで書いてください」とまずはお願いすることにした。
なぜならば、彼らは自分の人生の貴重な時間を僕という人間に賭けている当事者だからだ。常勤役員の持つ責任は大きく、従って彼らが僕に何を期待しているのかを知ることがまずいちばん大切なことだと思ったからだ。

次に部長や一般社員、契約社員、インターン、アルバイトに至るまで、どういうCEOであって欲しいか聞いてみることにした。
CEOとは会社の象徴であり、すべての価値判断の基準である。

しかし象徴であるからには、そこで働く全ての人たちにとって「あってほしい姿」を知ることは大切なことだと思う。もちろん全ての要望を満たせるとは思えないが、「CEOとしてこうあってほしい」という声に耳を傾け、象徴として相応しい振る舞いを身につけるべきだ。

そこを起点として、自分のあるべき姿を考え、それを評価軸として来年は自分の評価としたい。

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。プログラマーとして世界を放浪した末、 '17年にソニーCSLとWiL LLC.とともにギリア株式会社を設立し、「ヒトとAIの共生環境」の構築に情熱を捧げる。 '17年より東京大学先端科学技術研究センター客員研究員を兼務。著書として「教養としてのプログラミング入門(中央公論社)」「よくわかる人工知能 (KADOKAWA)」「プログラミングバカ一代(晶文社)」など。

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