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有事のDXはエストニアに学べ

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2022.04.25

Updated by Mayumi Tanimoto on April 25, 2022, 07:00 am JST

日本の方々に意識していただきたいのは、日本という国は隣国の少なからずが独裁体制の国であり、かつほぼ毎日のように領海や領空の侵犯がある、ということです。

欧州の西側にそんな国は一つもありません。また、テストであってもミサイルを飛ばされる国はないのです。

有事対応にあたって、日本はDXを真剣に考えなければならないわけですが、その際に参考になるのが、 これまで隣国の脅威に晒されてきた小国です。その代表的な存在がエストニアです。

エストニアは、日本ではデジタル先進国として注目されてきましたが、エストニアがデジタル化しなければならなかった理由は、ソ連に苦しめられ、現在でもロシアの脅威に晒されているからです。

この件に関しては、以前から何回も書いていますが、ウクライナの実例を見てやっと意味が分かったという方も少なくないのではないでしょうか。

エストニアは非常に規模の小さな国で、日本の県レベルの大きさでありますが、アメリカに移住した人々が帰国してビジネスや行政事務を改革してきました。そしてかなり早いうちから、国の存亡をかけてデジタル化を進めてきたのです。

その構想の中心にあるのはエストニアが侵略されて、「国が物理的に破壊されても、デジタル空間の中で行政を再開できるようにする」ということです。

紙の書類は徹底的にデジタル化し、納税や会計、企業登録、投票などもデジタル化されています。単なる効率の話ではなく、これは本当に国の運命をかけた取り組みです。

そして起業を容易にし、法人税や所得税をお得にすることで、海外から様々な起業家や熟練労働者を呼び込み、エストニアで働いてもらうことで、 エストニアのファンになる人や支えになる人を増やしてきたのです。

外国の人に来てもらうのに、様々な作業をデジタル化し効率化することが大変な強みになります。他の国が依然として非効率に行っていることが効率的にできるようになっていれば、 時間や手間暇が欲しい人にとって大変魅力的な国となります。

実際に来て住んでもらえばどんな国か分かってもらえますし、 やはり情が移りますから、有事の際に何とか助けようという気になったり、情報を発信してくれる味方になります。

日本は地政学的に非常に厳しい場所にある国です。四方八方を西側先進国ではない国に囲まれていますが、アジアで唯一、西側の民主主義と法治を達成し、G8のメンバーになっている国でもあります。人口は、イギリスやフランスの2倍ほどで、実は欧州に比べたら国土もそれほど小さくはないのです。

しかし、存在している場所が場所だけに、その質というのはどちらかというとバルト三国やウクライナに近いものがあります。ですから、常日頃から脅威に晒されていると考え、有事の際に生き残る方法をエストニアのような国から大いに学ばなければなりません。

「本当のDX」を考えるウェブメディア『Modern Times』創刊「本当のDX」を考えるウェブメディア『Modern Times

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。