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手数料という「ショバ代」を払わせられ続ける世界
ここでいう覇権国家とは、経済のプラットフォームの提供国をいう。そして覇権国家は、特にイギリスで見られたように、「自動的」に手数料収入により利益を入手することができる。これが、イギリスを典型例とするコミッション・キャピタリズムの実態である。
この「自動的」ということが、覇権国家の重要な特徴である。覇権国家とは、世界経済をリードする国家である。世界のあらゆる国々は、少なくとも国際的な取引をしようとすれば、覇権国家が築いたシステムを使用しなければならない。そして世界の国々はそのシステムを利用し、ショバ代ともいえる手数料を支払うのである。
では、「一帯一路」によって中国はそのような国家になれるのであろうか。
中国の人民元は地域的な通貨としては通用しているものの、今のところ世界通貨としての役割を果たすことはできない状態である。それが今後変わることが、中国が覇権を握るためには不可欠である。
中国の関心事は技術革新よりも物流の転換
中国は中進国であり、経済学的には「中進国の罠」と呼ばれる、経済成長率が停滞する時期に入っている。そもそも中国は低賃金であるから世界の工場になったわけであったが、現在はその優位性が失われつつある。工場はASEANやインド、さらにはバングラデシュのようなより低賃金の国に移動していくだろう。中国は一帯一路によって、それを乗り越えようとしているように見える。
中国政府は現在、膨大な金を技術革新につぎ込んでいる。先進国化を目指そうとすれば、それは当然の選択である。従って本来、中国は一帯一路により技術革新を促進しなければならないはずだが、実際には技術革新ではなく物流の転換に関心がある。中国は、一帯一路に関係している国に対して特恵貿易協定(PTA)を結んでいる。
一帯一路により、中国は世界の物流の中心になり、それと技術革新をうまく結びつけ、所得水準を上げ、工業製品を自らの物流ネットワークを使って流通させるべきであろう。だが、はたしてそれが可能なのだろうか。
また中国は、エネルギー資源を大変に浪費している国であり、一帯一路により重要なエネルギー資源が浪費されてしまうのではないかという恐れがある。
※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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