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クラウドの競争はアプリケーションマーケットの競争に突入

2010.04.01

Updated by WirelessWire News編集部 on April 1, 2010, 12:00 pm JST

グーグルが3月9日(米国時間)に開設した企業向けのアプリケーションマーケットプレイス「Google Apps Marketplace」。クラウド間の競争の舞台は「クラウドでアプリケーションを開発するエンジニアにいかに支持されるか」というエンジニアを対象とした競争関係から、「エンドユーザーに、いかに魅力的なアプリケーションを提供できるか」という、エンドユーザーを対象とした競争関係へと移り始めています。

クラウド各社が提供するサービスはそれぞれ異なる

主なクラウドベンダーである、アマゾン、グーグル、セールスフォース・ドットコム、そしてマイクロソフトは、同じ「クラウド」というくくりで語られるサービスをそれぞれ展開していますが、それぞれのクラウドは技術的に見ればかなり異なるものでした。

例えば、アマゾンが提供する「Amazon Web Services」は平たくいえば巨大なレンタルサーバ屋さんです。違うのは、申し込めば希望のスペックのサーバ(インスタンスと呼ばれる仮想サーバ)が数分で利用開始でき、しかもそれを数百台、数千台、数万台の規模ですぐに利用可能なこと。このスピードとスケールが、クラウドたるゆえんです。しかし、そのインスタンスにOSを載せ、プログラミングを行い、分散処理などを実現するのはすべてそれを利用するエンジニアの仕事になっています。

一方、セールスフォース・ドットコムはあらかじめクラウドで稼働する顧客管理システム「Salesforce CRM」をサービスとして提供しているため、利用者はすぐにこのサービスをWebブラウザから使い始めることができます。と同時に同社は、アプリケーションの開発環境として「Force.com」というクラウド環境も提供。

「Force.com」にはJavaによく似たApexという言語が用意されており、エンジニアはそれでプログラミングを行えば、自動的にクラウド上でアプリケーションを開発できるようになっています。つまり、クラウド対応のプログラミングがすぐにできるような環境をセールスフォース・ドットコムでは用意しているのです。

グーグルのクラウド展開はセールスフォース・ドットコムに似ています。利用者がすぐに利用できるサービスとして、GmailやGoogle Docsなどをラインナップした「Google Apps」が用意されており、同時にJavaとPythonの言語でプログラミング可能なクラウドプラットフォームとして「Google App Engine」が提供されています。

マイクロソフトのクラウドは、プログラマ向けに提供されている点から「Force.com」や「Google App Engine」に似ていますが、プログラムをいくつの仮想サーバで実行するかといった指定をエンジニアが行うなど「Amazon Web Services」に近い部分もあり、またプログラミング言語は同社が提供する.NET対応のC#やVisual Basicなどがメインとなります。

開発者から利用者へ

このように主要なクラウド各社は、提供するサービスの内容やプログラミング言語などがそれぞれ異なる中で、いかに自社のクラウドをエンジニアに対して魅力的なものにするか、開発者向けのエコシステムを広げることにこれまで注力してきました。

その目的は1つで、よいエンジニアを集めることが自社のクラウド上によいアプリケーションが構築されることにつながり、それが多くのエンドユーザーを獲得することにつながるからです。

クラウドベンダのエンジニアに対するリクルーティング活動はまだまだ続いていますが、前述した「Google Apps Marketplace」の登場で、アプリケーションをエンドユーザーに対して提供するマーケットプレイスで競争する段階へと入りました。

企業向けアプリケーションのカギとなるマーケットプレイス

クラウドアプリケーションのマーケットプレイスを最初に構築したのはセールスフォース・ドットコムで、「App Exchange」と呼ばれています。App Exchangeを開設したのは2005年の頃で、現在ではすでに1000以上のクラウドアプリケーションが登録されています。

マイクロソフトも昨年11月に、同社のWindows Azure上で動作するクラウドアプリケーションのマーケットプレイス「Microsoft Pinpoint」を発表。そしてグーグルが今回「Google Apps Marketplace」を発表し、アマゾン以外のマーケットプレイスが揃ったことになります。

クラウドベンダにとって、クラウドプラットフォームを作り、エンジニアにアプリケーションを作ってもらったら、それをエンドユーザーへと届けるマーケットプレイスの構築は、全体のエコシステムを効率よく回していくために不可欠です。多くのエンドユーザーが集まるクラウドには、さらに多くのエンジニアが集まるからです。アマゾンも恐らくはマーケットプレイスの構築を画策しているところでしょう。

そしてアップルのiPhone/iPod向けのマーケットプレイス「AppStore」の成功が象徴しているように、今後のアプリケーションやサービスの販売ルートとしてネットを通じたマーケットプレイスは非常に大きな存在感を示すことになります。

いままでは(エンジニアの視点からすれば)異なる技術レイヤで競争していたクラウドベンダたちが、マーケットプレイスでは「どのマーケットプレイスが魅力的なサービスを提供できるか」という同じレイヤで真正面から競争することになります。これからがクラウドベンダ同士の本当の競合関係が始まる、といっていいのかもしれません。

文・新野淳一(ブログ「Publickey」 Blogger in Chief)

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