画像はイメージです original image: © michalpecek - Fotolia.com
欧州でチャレンジャーバンクが流行る理由と移民
Why challenger banks are popular in Europe
2018.07.25
Updated by Mayumi Tanimoto on July 25, 2018, 09:27 am JST
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Why challenger banks are popular in Europe
2018.07.25
Updated by Mayumi Tanimoto on July 25, 2018, 09:27 am JST
日本ではフィンテックの一部として報道されることが多い欧州のチャレンジャーバンクですが、日本ではその人気と空気感は伝わりにくいようですね。
代表的なのがドイツのN26、そして英国のRevolut、Monzoですが、これ以外にも次々とチャレンジャーバンクが生まれています。
チャレンジャーバンクのサービスの特徴というのはスマートフォン・ファーストで、ユーザーがスマートフォンでサービス申し込みから日々のサービスの使用までを実行すると想定しています。
その次の特徴というのは、日本ではなかなか報道されないのですが、国境を越えて移動する使用を想定していることです。
例えば最も代表的なのはRevolutで、この会社のサービスの最大の売りというのは、仮想通貨を含め、様々な通貨をスマホ上のアプリのタップだけでリアルタイムで、マーケットレートで両替できる点です。
マーケットレートですから、銀行が通常チャージする手数料が為替レートには上乗せされません。街中の両替所や郵便局スーパーの両替所銀行などで両替をするよりも、はるかに得なレートで両替が可能です。
それをまた同じアプリから、たった数タップで自分や他人の銀行口座に送金したり、同じアプリのユーザーに送金することが可能です。両替したお金は、同社のプリペイドカードから他の銀行のATMを使用して引き出すことも可能です。
各ユーザーには、英国式の当座預金の口座も作成されますので、国内外の銀行からお金を受け取ることも可能ですし、給料の支払いを受けたり、光熱費の支払いをすることも可能になっています。
既存の銀行と違う点は、住宅ローンを直接借りることができないことや(提携パートナーからは可能)、物理的な窓口がないこと、独自のATMがないことくらいなので、大きな金額のお金を借りる必要がない限りは、銀行と付き合わなくても、日々の生活で困ることはまったくありません。
発行カードはプリペイドカードで、厳密な意味ではクレジットカードでもデビットカードでもないので、不正利用があった場合に同等の保護が受けられないという仕組みになっています。
とはいえ、カードの利用はリアルタイムでスマホのアプリに反映されますし、不正に気が付いたらカードをすぐにロックすることができますから、口座をこまめに見ていれば問題はないでしょう。またプレミアムサービスを申し込めば1回限りで番号が消えるカード番号を入手することも可能です。
こういった数々のサービスを受けるにあたって日本の銀行と徹底的に違う点は、国境による縛りがほとんどないということです。
例えば、ユーザーが海外にいてプリペイドカードを紛失した場合、3日以内にカードを送付してもらえます。
外貨両替や海外送金をする際にも、 日本のようにマイナンバーを提示したりする必要はありません(そもそもマイナンバーが存在しないのですが)。海外でのお金の引き出しにも手続きをする必要がありません。
欧州は2000年以後、移動の自由化によってEU加盟国の国籍を持つ人であれば、他の加盟国に住むのも、仕事をするのも自由になりました。頻繁に移動する人の中には、金融やITに関わる専門職だけではなく、サービス業に関わる人や非熟練労働者なども含まれています。 つまり、「国境を移動する人々」というパイが大変大きいわけです。
言語的なバリアが低い場合もあるので、若い人が他の国に勉強に行くこともなんら珍しいことではありません。海外に別宅や別荘を持つ人も大勢います。
国境を越えるという感覚が、日本よりもはるかにライトです。
こういった背景があるために欧州のチャレンジャーバンクは、国境を越えて頻繁に移動する人向けのサービスが充実しています。
従来の銀行も海外での利用は可能ですし、利用者であった人が海外に居住しても口座を閉じる必要はありません。サービスの大枠はチャレンジャーバンクと変わりませんが、利便性ではかないません。
欧州では、大手銀行のリストラや支店閉鎖のニュースばかりが聞こえてくるのですが、チャレンジャーバンクのサービスがこれだけ充実してくると、リーテル市場はますます厳しくなるのが目に見えています。
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登録はこちらNTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。