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村上 陽一郎 youichirou_murakami

1936年東京生まれ。専攻は科学史・科学哲学・科学社会学。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。東京大学先端科学技術研究センター長、東洋英和女学院大学学長などを経て、現在、東京大学名誉教授、国際基督教大学名誉教授、豊田工業大学次世代文明センター長、一般財団法人日本アスペン研究所副理事長。2015年に瑞宝中綬章受章。膨大な数の著書・訳書・編著を誇るが、代表的なものに『科学者とは何か』『文明のなかの科学』『あらためて教養とは』『安全学』、シャルガフ『ヘラクレイトスの火』、ファイヤアーベント『知についての三つの対話』、フラー『知識人として生きる』『伊東俊太郎著作集』『大森荘蔵著作集』などがある。幼少より能楽の訓練を受ける一方、チェロのアマチュア演奏家としても活動中。

「音楽 その光と塩」 4. オーケストラ

これを書いている二〇二〇年六月は、年初に始まったヴィルス禍の真っ最中です。「三密」を避けるという原則からすれば、オーケストラ活動は、まさしくそれに抵触する最たるものともいえます。ほとんどのオーケストラが、定期演奏会や予定されていたスケジュールがキャンセルされて、経営上も、また団員の音楽への構えの上でも、大きな危機にある状況です。

2020.07.16

「音楽 その光と塩」 3. 明日には!

ジョン・ヘンリー・マッケイ(John Henry Mackay, 一八六四~一九三三)という人がいます。あまり日本では知られていないと思いますので、少し詳しく紹介してみましょう。名前からすれば、誰もがイギリス人だと思うのではないでしょうか。

2020.07.09

「音楽 その光と塩」 2. 違いの判らない男

昔、ネスカフェ ゴールドブレンドの名CMに「違いのわかる男」というシリーズがありました。それぞれの分野で道を究めたような有名人をフィーチャーしたもので、人々の憧れを誘ったものでした。今回は、情けないことに「違いの判らない男」としての私の話です。

2020.06.30

「音楽 その光と塩」 1. 楽器の話

「光と塩」というのは、新約聖書の中の私の一番好きな言葉です。イエスが「自分に従う人は、世の光でもあり、塩でもある」と述べたことに由来します。「光」は、人の目にも鮮やかに輝くし、「塩」は料理に入ってはいても目には見えず、それでも、それがなければ料理にならないばかりか、人間の命にも関わるものです。

2020.06.25

スーパー書評「漱石で、できている」6
トーマス・マン『選ばれし人』 文化の複数性、人類の普遍性

マンの作品を取り上げるのであれば、誰もが『魔の山』や彼にノーベル文学賞をもたらしたとされる大作『ブッデンブローク家の人々』、あるいは『トニオ・クレーゲル』などから始めるのが順当だろう。それらの作品に対する敬意や共感は、誰にも劣らないつもりだ。

2020.06.13

スーパー書評「漱石で、できている」5
夏目漱石『こころ』ではなく『行人』 漱石における「性」の問題

漱石というと、国語の教科書などに取り上げられるのは、ほとんどの場合『こころ』のようです。実は、私にとって、漱石の小説のなかで、生涯繰り返し読むことに消極的な唯一のものが『こころ』なのです。

2020.06.05

エリートと教養5 文系と理系

高等教育を文系と理系に分ける、という制度上の仕組みは、日本ではすでに戦前からありました。旧制高等学校は、本来は大学予備門の役割を果たす組織として発足しました。つまり、今の高等学校と違って「高等教育に準じるもの」という位置づけであったことになります。

2020.05.26

スーパー書評「漱石で、できている」4
トクヴィル『アメリカの民主政治』 「デモクラシー」の負を克服する責務

かつて第二次世界大戦中のイギリスの首相ウィンストン・チャーチルは、「デモクラシーは最悪の政治形態である、ただし、過去折々に試されたすべての政治形態を除けば」という見事な警句を残しました。

2020.05.15

エリートと教養 4 知識は「教養」か

教養のあるなし、ということのなかに、知識のあるなしが、少なくともある程度含まれていることは、間違いありません。他書からの受け売りですが、ある翻訳書のなかに、「それはあたかも雪の中で聖ベルナルドゥスに出会った想いであった」という一文があったそうです。

2020.04.27

「わからないままに」 COVID-19の非常時を考える

相手の正体が一向に判らないままに、日本は戦後初めて「非常時」を迎えている。すべての国民が、明日の自分の命を慮らなければならない事態である。

2020.04.23

スーパー書評「漱石で、できている」3
松尾芭蕉『おくのほそ道』 文芸の粋、江戸知識人の教養

これほど数多くの評伝・書評が重ねられてきた作品も少ないでしょう。ここでは、余り既成の研究を気にせずに、自分なりの読み方を披露することに徹したいと思います。

2019.10.28

スーパー書評「漱石で、できている」2
夏目漱石『三四郎』 小川三四郎の青春、今や遥かなり?

比較的最近、ある大学の学生一五〇人ほどを相手にした臨時の授業で訊ねたところ、『三四郎』を読んだ人が一人もいなかったのには、名状しがたいショックを受けました。

2019.08.22