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中国編(1)中国の携帯電話市場

2010.10.21

Updated by on October 21, 2010, 19:30 pm JST

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(cc) Image by Jakob Montrasio

1. 8億を超えた中国の携帯電話市場

中国の携帯電話ユーザーは中華人民共和国工業和信息化部(中国情報産業部、以下簡名称:工信部)が7月に発表した"2010年上半期の中国通信業界動向"によると、ついに8億人を突破し8.05億人になった。

固定電話ユーザーが2010年1-6月の上半期でユーザー数が876.7万人減少し3.05億人になったのに対し、携帯電話ユーザーは同時期で5,797万人増加し先の8.05億人に達している。

▼中国通信市場推移
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※中国工信部発表「2010年上半期の中国通信業界動向」をもとに中尾が作成

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2. 中国地域別携帯電話普及状況

全国で8.05億人にものぼる中国の携帯電話ユーザー数も各地域ごとで普及率は様々である。

▼中国地域別携帯電話普及率
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※中国工信部発表「2010年上半期の中国通信業界動向」をもとに中尾が作成

携帯電話の普及率は上海、北京といった中国の2大都市をはじめ、1人当りGDP地域別トップ5の上海、北京、天津、浙江、広東がやはり高い数値を示している。

下記は地域別の携帯電話ユーザー数を示したものである。

▼中国地域別携帯電話ユーザー数(単位:万人)
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※中国工信部発表「2010年上半期の中国通信業界動向」をもとに中尾が作成

上海や北京は普及率自体は高いが他の省や直轄市、自治区と比較して人口がそれほど多く無いため、ユーザー数自体はそれほど高い数値を示していない。省の人口が1億にせまり、普及率も96.5%と高い数値を示している広東は別枠としても、人口4192.2万人で普及率が44.3%な河南や人口3833.8万人で普及率47.0%の四川などは今後の携帯電話市場として特に有望であることを示していると言える。

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3. 中国携帯電話市場の3大通信キャリア

8億人を抱える中国の携帯電話通信キャリアは大手3社に分かれ、"中国移動通信(チャイナモバイル、以下簡称:中国移動)"、"中国聯通(チャイナユニコム)"、"中国電信(チャイナテレコム)"で構成されている。2010年8月末時点のそれぞれの契約ユーザー数は5.64億人、1.5億人、0.79億人となっており、ユーザー数比率が7割を超える中国移動の独り勝ち状態となっている。

しかし、2009年1月に正式ライセンスが交付され、同年秋口からサービスが本格開始された3Gサービスに目を移すと違った結果が見えてくる。

▼3Gユーザー数(単位:万人)
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※2010年9月に3大キャリアから発表されたユーザー数をもとに中尾が作成
※中国電信は3G単体のユーザー数を公表していないため2009年12月に工信部から発表された数値をもとに推測。(詳細

圧倒的な強さを誇っていた中国移動も3Gの契約数においては中国聯通、中国電信に大きく水をあけることはできていない。これは中国3大キャリアがそれぞれに採用する通信方式の差異が大きく関係している。

中国市場の3Gは中国移動が中国独自の通信方式であるTD-SCDMA方式、中国聯通がW-CDMA方式、中国電信がCDMA2000方式をライセンス認定されている。

中国聯通のW-CDMAは欧米でも主流の通信規格であり海外の魅力的な端末が中国市場に参入しやすいという利点を持っている。また、CDMA2000方式もW-CDMAほどの普及度合いではないにせよ欧米で採用されている規格であり、いずれもTD-SCDMA方式に比べれば海外ベンダーの参入は容易であるからだと判断できる。

ただし、中国電信の場合は3G契約者の7割超がPCなどで使われるUSB型のデータ通信カードのユーザーとも言われており、必ずしも通信方式の恩恵だけが原因ではない。

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4. 伸び悩む3G端末の普及

しかしながら下記のデータを見て欲しい。

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3Gユーザー比率を見てもらえば一目瞭然なように3大キャリア各社の3G普及率はお世辞にも満足のいくものとは言えない。

これは決して各社が3G推進を蔑ろにしてきたということではない。 2010年3月に中国工信部から発表された3G設備投資の総額が1,673億元(約2.045兆円)にものぼること、各社ホームページや直営店での露出状況からも蔑ろにしてきたどころか、積極的に推進してきていることは窺える。

現時点ではユーザー側の3Gへの切り替え意欲が少ないことが大きな要因と言われているが、それには以下のような原因が考えられる。

  1. 2G ⇒ 3Gの切り替えにより電話番号の変更が強いられる。
  2. 3G対応端末の問題(高価である。魅力的な端末が少ない)
  3. 携帯電話利用の主たる用途が通話やSMSなどであり3Gの必要性が低い

もちろんここに上げた原因は3社ともに十分認識している。端末に関しては聯通が華為(Huawei)や中興(ZTE)などと連携し1,000元スマートフォンシリーズを推進したり、iPhone 4などの魅力ある端末を2010年9月から発売をしている。中国移動や中国電信もモトローラ、サムスン、LG、Nokiaなど海外人気メーカーと連携し、魅力的な製品の発売を積極的に行っている。

また、3Gの必要性についても、今後は急速に高まると推測される。中国でもモバイルインターネットは急成長しており、既に中国インターネットユーザー総数4.5億人の過半数を占める2.33億人が利用している。それに対応した各種モバイル端末向けインターネットサービスが様々な形で開始されることにより通信速度が肝となってくるからだ。そのため今後は3Gユーザーの比率も急速に伸びてくるのではないかと推測している。

また、中国社会科学出版社が発表している「中国情報化分析と予測」の2010年版によると、2007-2009年のインターネットユーザーの伸び率は都市部では34.6%だったのに対し、農村部では71.6%と倍以上の伸び率を示した。特に先に上げた携帯電話普及率が低い内陸部などではパソコンのインターネット網もADSL 1〜2MBというのが主流であり、3G通信の方が物理的な速度は早い。且つ3大キャリア各社が3G設備を積極的に設置している。今後は"モバイルインターネット"、"内陸"をキーワードに3Gの普及が加速していくと予測される。

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